金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例4「代表者親族の支援の評価方法」


 金融検査マニュアル別冊の「事例4」に関しては、債務者単体での支払いには懸念があるが、代表者の親族(長男)が延滞分の元金の返済を行い、且つ業況が低迷した場合には引き続き支援する旨の意思を示しており、長男の収入状況からみて返済に懸念が無いため「要注意先」と判断している事例です。

 本来、会社経営に直接関係のある関係者や保証人等からの返済支援に関しては、事業との関連性からも把握しやすいのですが、代表者親族等会社経営に直接関係のない関係者からの支援の有無、更には支援の可能性を判断する為には、当該内容について正確な情報を入手し検証しなければなりません。

 現在の貸出先の借入残高や返済条件等から返済に必要な額と支援者の資力や現在の収入等を総合的に判断することとなりますが、収入状況を確認する為に必要となる情報に関しては次のような資料の提出を求めることも考えられます。


 以上の内容を、支援者本人から書類等の提供を受け確認することが前提となりますが、金融機関と直接的な取引が無い場合、提出を求めても応じてもらえない場合もありますので、当該支援者との面談等により確認した内容を業務日誌等に記載し、確認する等の対応策を講ずることもあります。

 今後の資金収支を検証する上では資金繰り計画書の提出を求め、企業として資金不足する額を確かめ、支援者の支援が可能か否か、金融機関、債務者、経営者、支援者が共に理解することが必要となります。

 場合によっては支援者に保証人となっていだく方法も考えられますが、民法の改正により第三者保証の申し受けに関しては制限が設けられていることや金融機関側が優越的な地位を利用して強要することは認められていないことから、借主である会社の代表者の意向や支援する関係者(家族等)の意向を十分に確認する等対応には十分留意しています。金融機関側も融資担当者単独での交渉は後日トラブルとなる危険性を含んでいることから、本件事例のような場合の交渉は、役席者等上司と共に交渉するのが一般的です。

 会社経営とは直接関係の無い親族や、関係者から支援を受けることを前提に、金融機関と交渉する場合は、当人の意思を正しく確認すると同時に、金融機関へ説明してもらう等の協力も併せてお願いすることがポイントとなるでしょう。