金融検査マニュアル別冊「中小企業融資編」解説集

事例3「代表者資力の一体的評価方法」


 金融検査マニュアル別冊の「事例3」に関しては、提出された決算資料だけではなく、代表者の個人資産等も勘案して総合的な見地から検証した結果、企業が抱える債務を超える個人資産を保有しており、且つ当該資産を債務者である企業へ提供する意思を確認していること、個人資産から返済に充当していることから今後の返済に懸念はないため「正常先」と判断している事例です。

 事例2でも説明しましたが、金融機関が中小・小規模の企業を評価する場合、会社が保有する資産の他に代表者等個人が保有する資産についても検証します。特に、個人の資産を高めることに注力している経営者に関しては、会社資産以上の個人資産を家族名義も含め保有しているケースが多々ありますので、注意をしています。

 会社の借入金に対する個人保証を申し受けている場合は、保証人資力を確認する意味からも個人の保有する資産や、年間所得等は確認する必要がありますので、正確な情報を得る為に日頃から情報収集に努め、場合によっては確定申告書や不動産登記簿謄本等の提出を求めるケースもあります。

 金融機関は、赤字体質の企業業績であっても、個人に資産が流出することが要因での赤字であれば、個人等の資産やキャッシュフローを総合的に判断することで安全性を確認することを指導されていますが、業績そのものが根本的に悪化傾向にあるか否かを見極める上でも情報の真偽の確認は行ないます。

 特に、業績低迷が明白であり経営改善計画を策定しなければならないケースでは、財務リストラ等抜本的な改革が必要な場合は個人資産の適用も考える必要がありますので、情報の確認と、経営が悪化した場合の経営者の協力の可否に関して日々の営業活動の中で確認することが求められています。表面上、個人資産を多額に保有しているように見えても、他金融機関からの負債がある場合や、他の会社を経営していて経営者個人の資金で賄っている場合等、保有資産を超える負債を抱えているケースもありますので、慎重な対応を行ないます。

 金融機関は、借入企業単体による評価だけではなく、経営者個人の資産や負債状況、更には関連する企業や取引先との関係等も加味して総合的に判断しますので、その際には経営者個人の意思や関連企業、取引先の意思についても確認するよう心掛けています。

 業績が低迷し、金融機関からの支援が必要な状況になる以前から、企業実態のみならず関連する企業の状況などの情報も開示することが、評価を高めるポイントになるでしょう。