前回のセッションでは、会社として進むべき方向性=事業価値の捉え方について解説しましたが、実現するために「何をしなければいけないのか具体的な方法」=「行動すべき方法」を事業計画として確立する必要があります。
会社経営における最終目的は、お客様に喜んでいただくことで、働く職員が幸せになると同時に、社会に貢献できることですが、その源泉となる「利益」を計上することができるか否か、会社が持っている経営資源をフル活用して事業活動を行い、結果として最終的に利益を計上できる経営を実現することがポイントとなります。
今回は、最終的に目指すべき経営目標=利益を出すことを実現するための経営計画立案の方法論=知的資産経営計画の策定方法について解説します。
経済産業省が示す「事業価値を高める経営レポート(知的資産経営報告書)作成マニュアル」の中で記載事項として取り上げている報告書の構成は以下の通りですが、これは、現時点の会社の実情、今後の目指すべき方向性を対外的に分かり易く説明するための纏め方であり、具体的な事業計画にはなりません。
つまり、本質的な経営計画は「現状把握→課題・問題の洗出し→改革テーマの選定→事業計画の立案→資金損益を予測」のステップを実践することであって、会社として目指すべき方向性に沿ったアクションプランとして、活動すべきテーマを最終的に実現すべき数値目標となる「利益」を如何にして計上できるか纏めることです。
「利益」をテーマとして捉える際に考えるべきポイントは、現在の経営資源(人・モノ・関係者)を維持し、会社として成長するために必要な「最終利益」は幾ら必要なのか、現在の資源で営業を続けるために必要な費用を最低限賄うために必要な「粗利益」は幾ら必要なのか、その為にはどれだけの売上を計上し、どの位の原価を負担すればよいのか、損益計算書の計算過程である(1)〜(10)の項目の内、(9)、(7)、(5)、(3)の順に要因を考えながら利益計画を立案することです。
つまり、利益が出る「儲かる」会社にするために検討すべき「販売実績の検証(=販売力の強化)」「仕入実績の検証(=商品調達力の見極め)」「営業経費の検証=(効率化の実現)」の3要素を利益計算の過程から考え、最終的な「税引前当期利益」をプラスにする計画を立てることです。
そのためには、第1回目のセッションでも説明しましたが、会社が持っている全ての経営資源(人・モノ・技術・ノウハウ・ブランド・取引関係者等)の実情である知的資産を客観的に評価するとことで、会社が事業を継続できる根拠となる「定性的要因=知的資産」を総合的な事業能力として評価し、効果的に活用して実現できる事業活動計画の立案が重要となります。
計画立案の際に重要な要素は、業種毎に異なる点もありますが、ベースとなる3要素は「販売力」「調達力」「事業活動の効率」で、販売力と調達力に関しては、自社のおかれている状況=外部環境と自社の持っている特徴=内部環境も考慮した上で、売上と粗利益を維持・引上げることができるのか否か「5W2H」というキーワードから考えることです。
■販売力とは…
「誰に(=Who)、何を(=What)、何時(=When)、何処で(=Where)、どのような目的で(=Why)、どのような方法で(=How)、幾らで(=How much)」という観点から販売計画を立案します。
■調達力とは…
「誰から(=Who)、何を(=What)、何時(=When)、何処で(=Where)、どのような目的で(=Why)、どのような方法で(=How)、幾らで(=How much )」という観点から調達計画を立案します。
■事業活動の効率性とは…
経営を維持する上で必要不可欠な経費は適切な費用として捉えなければなりませんし、費用の内訳がどのようになっているのかが重要です。つまり、費用は目的に応じた「最適な支出」は「何」で「どの位」なのか考えることがポイントなのです。その為には、費用を抑制する3つのキーワードを前提に会社の特性を考慮して計画を立てることです。
以上は、事業活動の生産性を高めることに他ならないのですが、経営者のみならず社員の方も含め全社が共通の認識で活動きるようにしなければなりません。
利益至上主義を説いているのではないのですが、会社が存続する意義(=社会における役割)、会社を持続・成長させるための方法論(=売上を伸ばし、利益の出る会社の体質に改善するために必要な要素)を、社長自身、更には社員全てと共有することができる「自分の会社の経営計画」として、(1)経営ビジョン・経営指針、(2)販売方針、(3)仕入方針、(4)経費方針、(5)利益方針という5つの観点から体系化したものが「知的資産経営計画」といえるのです。