2.知的資産経営レポートのまとめ方と事業価値の評価方法

 知的資産経営レポートを作成する真の目的は、自社=己を知ること、自社の特色=良さを知らしめることです。

 つまり、会社が事業を継続し持続的に成長する要因を正しく評価する=「会社の実力」を見極めるには、会社が持っている全ての経営資源(人・モノ・技術・ノウハウ・ブランド・取引関係者等)の実情を客観的に評価することです。また、「会社の強み(競争力の源泉)に着目し、それらの強みを認識、磨き、有効活用しながら経営活動を行い」会社としての将来のあるべき姿を具体的に示すことです。

 では、どのように「自社の実情」を体系化し、表現すればよいのでしょうか。

 まず、第一に考えるべきポイントは、会社の持つ経営資源を各種要因別に分解し、其々の要因別に、何が優れているのか、何が劣っているのかを具体的に体系化することです。では、要因とは何か、具体的に示すと以下のような関係になります。

 

 一般的に言われる会社の実態を評価する数字=売上額や利益額等の財務関連数値は、事業を行なっている結果として表現されるものです。重要なのは、売上や利益という数字を作り出す過程=事業活動をどのように行っているかがポイントなのです。

 会社の魅力=強みとなる要素、経営者としての素地=力量、働く職員の資質=競争力という観点から体系化するとともに、事業の中核となる取引企業との関係、更には、商品やサービスを利用していただいているお客さまの状態を正しく見極めることです。

 会社の実情を示す「売上」や「利益」という数字を作り出すそれぞれの事業活動の各過程で、全ての要因の関係を正しく捉え、その要因が変化することで、数字がどのように変るのか見極めることです。つまり、要因が明確になれば、会社の実情を身内、更には関係者=想定されるステークホルダーに正しく伝えることが可能となるのです。

 また、知的資産経営レポートは現在の実情を表すと同時に、今後の事業戦略を立案する時にも必要な概念です。「今後、どのように事業を再構築していくのか」といった事業計画を立案する場面では、「外部環境に適応するために、自社にどのような知的資産があり、その資産をどのように活用すれば良いのか」という観点から体系化してまとめることで、会社としての「正しいい事業価値」を第三者に対して数字的に示すことも可能となります。

 一般的な事業計画の策定の流れをまとめると以下のとおりとなります。

 

 計画を実行し、成果を上げるためには、想定される過程において留意すべきポイントを「財務数値」「業務活動」「商品サービス」「お客様」とうい視点から導き出し活動することが重要となりますが、その際に「知的資産経営レポート」で体系化された要因がどのように係るのか関連を整理することで効果が表れるのです。

 事業計画は、最終的には数値目標が基本であり、売上や経費、利益が期間中にどのような値になるのか告知するものですが、その計画が実現の可能性があるのか否か判断する上でも「経営資源である知的資産」の活用方法を明確にしめしておけば信憑性も高まり、その会社の事業価値として認めてもらうことができるのです。

 また、会社の経営状態の把握、いわゆる「健康診断」を行う道具として、会社の経営者等や金融機関・支援機関等が、会社の状態を把握し、双方が同じ目線で対話を行うための基本的な枠組みであり、事業性評価の「入口」として活用されることが期待される考え方として、 ローカルベンチマークが公表されています。

経済産業省が主体となり、財務数値に表れない会社の実情を正しく捉えるためのツールとして広く普及されることが見込まれるものです。

http://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/sangyokinyu/locaben/

 知的資産経営レポートの考え方にも相通じるものがありますので、会社経営者の方には、是非参考にしていただきたいものです。