コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第141回 『組織の目標を“自分ごと”として捉える』
〜2012年、良い年にしよう!

 誰もが、「2012年を良い年にしたい」そう思っていることだろう。

 しかしながら、日本を取り巻く環境を考えると、依然として続くドル安、ユーロ安に伴う円高傾向、震災からの復興という機運の盛り上がりにブレーキをかけたいとしか思えない政府民主党の政策論議(増税、TPP)等々、なかなか好材料を見出しづらいのも事実だ。

 このような状況、つまり環境の変化に対応しながら結果を出さなければならないのが、我々ビジネスに携わっている人々に課せられた課題でもある。

 前提条件としてしっかり認識しておくべきことは、すでに何度も書いたことでもあるが、決して今が“異常”な時期という訳ではないということだ。過去のさまざまな状況を踏まえて現在がある。我々はこの現在を踏まえて新しい未来を創るという大きな責任を担っている。

 つまり、「失われた20年」などない。高度経済成長やバブルは単に過ぎ去った歴史であることを思い知るために20年を費やしてしまった、位に考えるべきだろう。

 だからこそ、過去の(その状況だったから成功していた)成功体験にしがみつくことなく、常識に捉われることなく、現在をしっかりと見据えたビジネスモデルを創らなければならない。

 その為には、個々人が“自分ごと”として組織の目標を考える、“自分ごと”として日本の未来を考える、そういった変革を自らに課さなければならない。

 正月の箱根駅伝。これまでの記録を8分も更新するという前代未聞の記録で優勝した東洋大学。過去の優勝は、“山の神”と称されるエース柏原が、例え3分〜4分の大差をつけられていても5区で大逆転して逃げ切るパターン、つまり“柏原頼み”だったわけだが、今年は違った。

 5区の柏原にトップで襷を渡して、柏原がさらに差を広げた。復路の6区以降も5区間中4つの区間賞で大差をつけてみせた。

 「エース柏原頼みで優勝を狙う」チームから、「優勝するためにはどんな役割を果たすべきかを、個々人が考え努力する」チームへと、大きな意識変革が起こり、まさに個々人の成果を積み重ねた上での優勝を成し遂げたわけだが、その背景には次のようなことがある。

 覚えている方も多いと思うが、昨年は優勝した早稲田大学から21秒、あと90mという僅かな差で2位に甘んじてしまったのがこの東洋大学だ。

 エース柏原はこんな風に思ったそうだ。「自分がベストの記録で走っていれば21秒位の差は逆になっていた」

 不調でブレーキを起こした選手も、「体調が悪いながらも、もう少し自分が踏ん張ることができれば優勝できた」

 他の選手たちもこんな風に考えたそうだ。「1区間あたり、それぞれがあと2秒踏ん張って記録を出していれば優勝できた」

 つまり、21秒という僅かな差の敗北は、個々人が秒単位の数字を強烈に意識するきっかけになったというわけだ。

 「優勝するためには、自分が僅か1秒でも詰めなければならない」と。

 ビジネスにおいても、個々人単位で考えると数字責任はごく僅かでしかない。しかし、組織の数字はそれを積み重ねたものだ。だからこそ、組織の目標を“自分ごと”として捉える社員が増えれば増えるほどその組織は強くなる。

 「強い組織づくり」是非チャレンジしてもらいたい。