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「ウチの業界は特別なんですよ。」 「一般的な話としてはわかるんですが、ウチの業界には当てはまらないですね。」 「あ、それ私も言ったことあるかも」と思われている方が多いのでは、と予想するくらい、我々のような仕事に携わっているとかなり頻繁に聞かされるコメントである。 よってつい最近まではこんな風に考えていた。こういったコメントはいわば挨拶のようなもので、本気でそう思っている人は殆どいないのではないか、と。ビジネス上のコミュニケーションで、たいした世話になっていなくても「大変お世話になっております。」と言ったりするのと同じ類のものだということだ。 しかし、遂に先日、とある食品卸業界での講演で“あること”に気づいてしまった。講演の後の懇親会の場で、参加していた経営者の方々より感想をいただいた時のことだ。 業績好調企業の経営者の声をまとめると、 「大変参考になりました。特に○○の話に関しては、早速我が社でも取り入れたいと思っています。本当にありがとう。」 といった感じになるだろうか。 やはり、良いと思ったことをどんどん取り入れて実行に移せるから業績が良いわけで、恐らく「何かひとつでも良いからアイディアを貰って帰ろう。」というスタンスで聞いてもらっているのだと思う。非常に前向きかつ謙虚な態度で講演を聞く場に臨まれているのではないだろうか。 一方、業績の芳しくない企業の経営者からは、 「他の業界の事例とか面白い話なんだけど、我々の業界だとあそこまでうまくいきませんよね。次の機会があったら、ウチの業界でもできそうな事例があると良いと思いますよ。」 といった内容のコメントをもらった。何かひとつでも取り入れようというよりも、講演そのものの面白さを評価するようなスタンスといっても言い過ぎではないかも知れない。 気づいた“あること”とは、「ウチの業界は特別だから…」という話のウラには、「だからなかなかうまくいかない。」というコメントが隠れているということだ。決して「ウチの業界は特別だから、儲かってますよ。」といった組み立ての話は聞いたことがない。 よって、「なかなかうまくいかない」経営者は、総じて「答教えて」症候群になってしまっている。 「ウチのような業界でも参考にできるような他業界の話を聞かせて欲しい。」 それを準備して話をしたとしても、 「ウチのような業界の企業にやらせるには、同じ業界の成功事例を聞かせて欲しい。」 それを準備して話をしたとしても、 「あの事例の企業は九州でしょ。エリア特性が全く違うからウチには参考にならないんだよ。」 ついには、同じエリアの企業の事例を準備したとしても、 「あそこは親会社に資金力があるから、結構自由にチャレンジできるんだよ。」 ちなみに、この「答教えて」症候群の企業は、注力すべきターゲット市場、注力すべき商品、具体的な売り方、まで聞いたとしても結局できないケースが多い。「ウチの業界は特別」に代表されるように、常に言い訳先行のクセがついてしまっているからだ。 『賢者は愚者に学び、愚者は賢者に学ばず』 「何かひとつでも良いからアイディアを持って帰ろう」と思ってる経営者はこのスタンスを持っている。 『賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ』 このスタンスを持つ経営者は、直接的に自社と関係ない事例だろうが、あるいは「一般的」と言われるレベルまで言い尽くされている事例だろうが、それを聞くタイミングによっては大きな“学び”を得られる可能性があることを知っている。 ちなみに、船井総研の成功の3条件『素直、プラス発想、勉強好き』の“素直”は、最初から否定することなく“素直”に受け入れる、という正に賢者の視点が入っている。 |