コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第133回 「リーダーに不可欠な、“相対”よりも“絶対”視点!」
〜なでしこジャパン佐々木則夫監督のリーダーシップ

 中国戦に勝利して、無敗でロンドン五輪出場を決めた“なでしこジャパン”。

 あのワールドカップ優勝から、わずか1ヶ月後に試合が始まることもそうだが、11日間で5試合を消化しなければならない過密日程を乗り切った精神力は素晴らしいと思う。

 このアジア最終予選を全戦観ることができたのだが、あらためて感じたのは男子サッカーと女子サッカーの違いだ。フィジカル面において男子と女子は違うというのは、ちょうど同じ時期に開催されていた世界陸上で男子の方が数字的には優れた記録を出していることからも明らかなように、当然といえば当然のことで、何をいまさらという話かも知れない。

 しかし、例えばバレーボールであれば男子と女子ではネットの高さが違うし、ゴルフであればコースの長さが違う。こういったことがサッカーにはない。男子と同じ広さのグラウンドで戦うし、男子と同じ90分間を戦わなければならない。そういったなかで、当然、スピードやパワーといった男子に劣るところを感じてしまうということだ。

 ここで伝えたいのは、佐々木則夫監督のリーダーシップについて。

 男子サッカーの世界にいた佐々木監督は、おそらく多くの人が思うように「同じサッカーなんだから、指導するのに男子も女子も変わらない」という感覚を持っていたのではないかと思う。だから、当初はプレーのひとつひとつに対して、「そこは本来こうだろう?」、「なぜ、あそこでパスを出す?」といった「男子であればできる動き」に考え方が捉われながらのスタートだったはずだ。

 どうしても、リーダーは過去の経験を踏まえながら、“相対”的な視点で判断や評価をしてしまう傾向にある。それはそれで必要な視点ではあるが、一方で持たなければならないのが“絶対”的な視点だ。

 佐々木監督に見習うべきポイントは、自分自身が持っている「あるべきサッカースタイル」はあくまでも男子サッカーの世界の話で、「女子サッカーは違う」というスタンスの必要性を早い段階で気づいたことにある。

 だからこそ、「女子サッカー」の世界レベルを知るうえで、把握しなければならない事実を正しく把握し、日本の女子サッカーを世界レベルにもっていくためには、それらの事実をどう解釈するべきかを考え抜いて、選手たちにも「それができれば勝てる」イメージを持てる戦略をつくることができたのだと思う。

 女子チームをワールドカップ優勝に導いた佐々木監督から学ぶべき点として、「選手とのカベを感じさせない関係づくり」などが取り上げられているが、その本質は“相対”ではなく“絶対”という視点で女子サッカーを捉えたそのスタンスにあることは間違いない。

 そして、“相対”ではなく“絶対”のスタンスは、選手個々人の指導にも大いに活かされたはずだ。

 複数の部下を持っているリーダーの皆さんにも是非考えてみて欲しい。

 “相対”視点でみると、100点満点の部下はそうそういないとしても、Aさん(80点の部下)、Bさん(50点の部下)、Cさん(20点の部下)、といった評価をしている部下の方々がいると思う。

 例えば、Cさんが21点になったときに褒めることができているだろうか?

 “絶対”視点とはそういうことだ。20点が21点になったときに、「そのことに気づき」、「お互いに共有し」、「褒める」ことができる。

 ビジネスにおけるリーダーの役割とは、「部下を育てる」こと。「部下を育てる」とは「部下に変化を起こす」こと、すなわち“絶対”視点を持って、「部下の小さな変化に気づくこと」が大切だ。