コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第98回 注意すべきは10月!?
再び現れた「二番底」懸念にどう立ち向かうか

 今年は、昨年以上に厳しい年となりそうです。3ヶ月先の状況判断も分からない方も多いと思います。こうした中で、時流予測を実施するのは難しいのですが、分かる範囲で実施させていただきます。


■3ヶ月先も読めない景況感。厳しい状況は変わらない?

 まず、日本国内の景気に関しては、2009年度以上に悪いということを前提に経営を組み立てる必要があります。日本は、9〜10年のスパンで景気変動を繰り返しており、2012年までは景気回復は難しいと予測しております。

図1:景気循環図

 中期スパンでは、基本的に、円高基調が予測されますし、株価・地価はダウントレンドにあるようです。逆に石油などの原材料や穀物、金(ゴールド)などは上がるようです。また、アメリカ・中国などを中心とした金融出動により市場は“お金余り”の状態であり、最悪2011年前後には、世界的に悪性のインフレが来るとの予測もあります。

 これに対して、アメリカの経済は順調に復活しており、「世界的な経済危機は脱した」との予測もあり、予測も真っ二つに割れている状況です。

 予測は割れていますが、中期予測になるとこの数年は、相変わらず世界的に厳しい状況が続くのではないでしょうか。


■秋以降、二番底の懸念あり。最悪の場合を想定した経営を

 さて、このような難しい状況の中で、2010年度、船井総合研究所としては、時流を以下のように予測しております。

[1]株  価… 3月までは株価は安定、逆に上がる傾向にある。東証は1万円から上限は1万3千円位まで推移しそう。しかし、4月以降は「下げ」に転じることも懸念される。

[2]金  利… 金利は上昇傾向にある。

[3]為  替… 3月までは為替も株価同様、安定しそう。しかし、基本は円高ドル安基調であり、後半に向けて円高にシフトしていきそう。

[4]不 動 産… 不動産価格は下げ基調。

[5]商品相場… 原油・金・穀物などの商品市場は上がる。特に金はまだ上がる可能性が強い。

[6]国内景気… 基本的には2011年に向けて悪化傾向にあり、良くならない。

[7]注 意 月… 2010年の4月と10月(秋口)は特に注意が必要。4月以降は、株価・為替などが大きく動き出す可能性がある。そして、特に10月。ここから急速に世界経済が悪くなる、俗に言われている「二番底」が来る可能性も想定しておく必要あり。

 今年、2010年は、前半、特に3月までは安定するようです。為替も安定するため、日本の各メーカーを始め、決算状況は、昨年に比べると良い発表となるでしょう。

 しかし、国内消費は、相変わらず「デフレ圧力」が高く、今年前半は、デフレがまだ続きそうです。問題は後半で、消費者からのデフレ圧力は続く中、原材料は徐々に上がってくることが予想されます。そのため、メーカーは原材料高、価格下げ圧力のねじれ構造に苦しみそうです。ただし、メーカーは、業種にもよりますが、好景気の7〜8割位まで生産が回復しているため、生産現場は苦しいながらも活気が戻ってきそうです。

 景気も3月決算発表が、ある程度昨年に比べると良い発表がなされるでしょうが、一般消費に転化されるのは、その数ヶ月後、正確に言うと夏の賞与額がある程度明確になる6月頃になるでしょう。このように、夏に向けては安定しそうですが、前述したように問題は秋口からです。ここからどのように世界経済が動くか予測がつかない状況であり、最悪の場合は二番底が来ることも予想される一方、逆に秋を基点に世界経済の復調が鮮明になる可能性もあります。

 しかしながら経営は、「悪いことを常に予想しながら」動いた方がよいでしょう。そのため、今年は、夏までの安定時期に営業努力を存分にしておき、後半に備えた貯金をしておく必要があります。さらにいえば、今年の夏までに、いかに売上を上げておくことができるか、顧客をつかむことができるかが、ポイントとなります。我々の支援先にも、前半は少し無理をしてでも従業員に号令をかけて、全社一丸となって売上アップの努力、小さな金額のお客様まで確実に取り込む努力を、1人1人が真剣に実施していくことをトップ層にお伝えしております。

 このように、時流の読みは今年特に難しく、我々もご支援先には3ヵ月スパンで景気の先行き感をお伝えしながら、経営の方向性の相談にのっていくことになりそうです。


■不況期にこそ求められる経営戦略とは

 どちらにしても、現在は不況期に入ったばかりであり、不況期に対応した経営の舵取りをする必要があります。その参考となるものが、図2の景気対応経営原則です。

図2:景気対応経営基本原則
  好景気時対応 不景気時対応
価格戦略 客単価アップを目指す。
高額商品帯の販売も強化。
客数アップ・客単価ダウンをめざす。そのため質を落とさず好景気時の60〜80%の価格設定が必要。
商品戦略 商品・サービスの付加価値アップを実施する。既存商品の高機能化にチャレンジ。 上記価格戦略を実施するためには、既存商品(サービス)の基本機能を再構築すること。また、その場合、企業理念(姿勢)、自社の強みを核とすること。
営業戦略 既存顧客のインシェアアップを中心にしながら、新規顧客を開拓することにチャレンジする。 上記の商品力を持てれば、一気に新規開拓、シェアアップすることも可能。既存戦力(もしくはそれ以下)で、より効率的効果的に新規顧客を開拓する仕組みづくり。
販促戦略 固定客化を徹底。販促の早期的しかけの検討。 固定客化の強化。顧客セグメントによるピンポイントの販促戦略。
事業戦略 既存事業の拡大。
次の新規事業の種を構築。
新規事業への取り組み。
財務戦略 好景気こそローコスト運営の徹底。
状況を見ながらの確実な拡大戦略のための資金確保。
徹底したキャッシュフロー重視、負債は短期借入金から長期安定資金化の努力。
人材戦略 理念の定着と人材教育の徹底。 一体化の重要性と有能人材の確保。
その他
トップの心構え
時流の見極めを徹底すること。好景気が続くことはなく、必ず好・不景気が繰り返される。 トップは、プラス発想、ポジティブ発想で事に望む。そのためには納得できるまで勉強すること。

 重要となる項目は、価格戦略・商品戦略・営業戦略・販促戦略・事業戦略・財務戦略・人材戦略・トップの心構えといった8つです。図2は、その要素を簡単にまとめたものですが、今後、この連載の中で、それぞれのポイントをより詳しく解説させていただきたいと思っております。