コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第79回 総合不動産会社における利益の見方

 企業の最も大きな目的の一つとして「事業の継続」が挙げられます。近年では、企業の評価指標として、株価や格付けなどが用いられていますが、これらは近視眼的な見方になりがちであり、本当に強い企業は長期的に永続している企業だと私は考えています。

 その企業が「永続」するために、BCP(事業継続計画)などリスク面からの考え方がありますが、言うまでもないことですが、本質的には企業においてどのように利益を積み上げていくかです。その「利益」、御社ではどのような捉え方をしているでしょうか。

 今回は総合不動産会社を例に、利益の見方について考えてみたいと思います。

 どのような会社でもよくありがちなのですが、「○○部門は好調だ」とか「△△部門は今期はだめだなぁ」というような評価をされています。これを総合不動産会社に置き換えてみると、「売買仲介部門の利益は前年にも達していない」「分譲マンション管理部門の利益は着実に成長しているなぁ」などと言われているのではないでしょうか。

 さて、各部門での「売上」評価であるならば部門ごとで達成度合いを見るのもいいでしょう。しかし、利益となると本当に各部門のみで見ていいのでしょうか。極端に述べると、最近サブリース事業の採算に関して、家賃保証の費用と比較し、家賃を回収できない状況であり、単事業で捉えたときに不採算な部門となっているケースが多々あります。

 この場合、不採算事業として切り捨てを視野に入れてもいいのでしょうか。

 答えは「Noo」です。

 ここで、総合不動産会社の事業内容をピックアップしてみましょう。

 不動産開発事業、建築事業、リフォーム/大規模修繕事業、売買仲介/賃貸仲介事業、不動産ファンド事業、分譲マンション管理事業、賃貸マンション管理事業、サブリース事業、建物管理事業…。

 一般的な総合不動産企業において抱えている事業はこの程度だと思います。

 ここで重要なことは、各事業において物件をシェアしているということです。例えば、自社で過去に建てた(不動産開発事業)マンションの入居者を募集し(売買仲介事業)、出納業務や組合事務も請負い(分譲マンション管理事業)、破損部分があれば修理も行う(リフォーム事業)。このように、同物件からどの程度収益を挙げられるかが最重要な焦点になってくるのです。

 したがって、先ほど例の挙げた「サブリース事業」単体で見れば利益を挙げていないかもしれませんが、サブリースを行うことによって自社の管理物件を獲得し、他のリフォーム事業や建物管理事業、仲介事業などで利益を挙げていれば「サブリース事業」はフロントエンド商品としてとても意味のある商品ということになります。

 このような利益の見方を実践するためには、一戸一戸の物件において、自社の事業がどのように収益を挙げ、どのように費用を掛けているかという現状を整理することが第一歩となります。その現状を整理して始めて、どの物件がどのエリア、どの事業で収益を挙げているのか、全体を見てうまく行っていないエリアや店舗、事業は何なのかが明らかとなるのです。

 このような考え方を実践されている企業は業界をリードしている企業だと自信を持っていただいて結構です。まだ、事業間における戸当り収益を見られていない企業に関しては、ご参考になれば幸いかと思います。