コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第51回 アジア市場への新規ビジネス

 日本で衰退してきたビジネスの新たな商機について考えたいと思います。

 市場が拡大しているときは、市場の拡大とともにビジネスを拡大させ、さらにシェアを拡大し、売上を増やしていくことができます。しかし市場が無限に拡大するということはなく、必ず頭打ちになる時期が来ます。シュリンクする市場というパイの中では、一番企業でない限り、シェアを拡大させることは容易ではありません。このようなときにどのような判断を下すのかということがマーケティングでは非常に重要となります。

 どのような戦略オプションを取ることが考えられるでしょうか。

 市場の縮小に伴い、ビジネスの縮小、または撤退を選択する方法もありますが、これまでフォーカス外であった市場への拡大の可能性を検討することも考えられます。

 市場の幅を拡大する方法の一つとして、海外に進出し、新たなターゲットを取り込むことが考えられます。海外では、「ジャパンクール」と言われ、日本文化を生活の中に取り入れる人が増えており、日本ブームを追い風にビジネスを展開させ、成功している事例をよく目にします。中でもアジア圏の新興国での日本人気は目を見張るものがあります。

 例えば、ここ3〜4年、韓国では日本酒ブームだそうです。日本では、縮小する一方の日本酒市場ですが、富裕層や若者を中心に毎年150%のペースで輸出量が増大しています。

 これはひとり韓国に限ったことではなく、中国、米国、欧州を中心に世界各国で日本酒輸出量は9年連続で増加しており、過去最高水準まで達しているそうです。輸出量は現在、国内消費量の1%強にすぎませんが、逆にいえばこれからの伸びしろは大きいと見るべきかもしれません。

 日本酒だけではありません。アジア圏では、富裕層を中心にコシヒカリやキャンディーなど食品とユニクロをはじめとした衣料品、雑誌、ドラマ、音楽などエンターテイメントの市場が拡大しています。

 これらの中には、すでに日本国内ではブームがひと段落したものやもともとニッチな市場のものもあり、アジア圏に持ち込むと受け入れられる場合があります。

 しかし一方では、せっかくアジア市場進出に成功したにも関わらず、大きなビジネスチャンスを逸してしまっている場合も少なくありません。

 例えば、中国ではファッション誌の3分の2は日本の雑誌がシェアを占めていますが、そのファッション誌に掲載されている日本アパレル企業の洋服の輸出は少ないため、読者は雑誌に掲載されていた日本製の洋服が欲しくても類似した中国製、韓国製を購入せざるを得なくなっています。ファッション誌のみ先行して海外進出したものの、波及効果のアパレルという受け皿の海外進出が伴っていないようです。

 海外で受け入れられる可能性が見えたら、波及効果があるビジネスを巻き込んだビジネスモデルを検討した上で進出することにより、さらに大きなビジネスを展開できると考えます。

 このように海外でのビジネス展開に期待を寄せる一方、日本以外の国でビジネスを展開しようとする場合には注意が必要です。当然、商習慣や国民性は国によって異なってきますので、関税や商法、あるいはビジネス手法の違いが大きな参入障壁になってきます。

 例えばアパレル店舗を出店する際、銀座店と原宿店では明らかに店頭の品揃えを変える必要があることについて、読者の皆さんの中で異論を唱える方はいらっしゃらないと思います。両エリアに出店しているH&Mの事例を見るまでもないでしょう。けれども、上海と北京での違いについてはいかがでしょうか?商慣習の違いや好まれる洋服のデザインについて即答できる方は少ないのではないでしょうか?

 また、現地に詳しくコネが効く人脈を持つことも成功の必須条件といえそうです。例えば中国では強固な人脈を持たなければビジネスの成功はおぼつかないとさえ言われるように、要人との人脈が大切です。したがって、現地のビジネスやマーケティングに詳しい現地法人など、志を同じくする現地の強力なパートナーとの協業が成否を分けるポイントと言えそうです。

 そして日本企業のアジア進出は、自社の成長を促すだけではなく、各国の経済成長をサポートすることができる可能性があります。欧米諸国に比べ、金融危機の影響の少ない日本企業にとって、アジアの新興国で攻めの経営をすることが、今後の日本企業に課された役割ともいえるのではないでしょうか。

 この機会にぜひ自社のビジネスの海外での商機を検討されてみてはいかがでしょうか。