コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第39回 コンビニは何が凄いのか?

■コンビニは何が凄いのか?

 日本全国にお店があり、日本人の生活に密着しているコンビニエンスストア(コンビニ)は約30年間をかけて大きく成長しました。最新の商業統計(平成19年度版)だと、コンビニの市場規模(年間売上高)は、約6兆9千億円にもなります。店舗数も約4万3千店あります。デパートの市場規模が約7兆6千億円ですので、コンビニ市場規模の大きさが良く分かります。

 30年前に日本にコンビニというビジネスモデルが上陸した後、いつの間にやら、本家のアメリカのビジネスモデルからドンドン進化をしていきました。小商圏(半径約800メートル)の需要を満たすお店作りを行うため、最初は生鮮品を扱わないミニスーパーとしての位置づけでした。ところが、「おにぎり」を取り扱ってみたり「お弁当」を取り扱ってみたりとイロイロな試行錯誤を繰り返しながら業態は進化を続けていきました。コンビニの進化の歴史は「お客さまニーズへの対応:変化対応」の歴史でもあるのです。

 コンビニの凄さは変化対応をし続けてきている点にあります。お店の近隣住民の変化、ニーズの変化に対応し続けてきたために、ここまで大きくなった業態なのです。

 今回は、コンビニビジネスの基本とも言える、業態特徴を3点にまとめてみましょう。

 1.固定客が80%
 2.店内での平均滞在時間は5分以内が80%
 3.脅威の坪当たり売上高(生産性)



■固定客が80%

 固定客とは週に1回以上コンビニに行くお客さまのことをカウントしています。コンビニの1店舗あたりの平均客数や約900人です。このお客さまの約80%は週1回以上コンビニに行っていることになるのです。

 コンビニは小商圏で成り立つ業態です。ここでの小商圏とは徒歩で10分圏内と考えられる、徒歩1分=80メートルなので店舗を中心に半径約800メートルの円内の住民がコンビニの対象客となります。徒歩10分以内で行ける場所にコンビニがあるので、近隣住民はチョコチョコとコンビニに行くことになるのです。

 また、コンビニで取り扱っている商品構成も影響しています。変化対応を続けてきたコンビニでの売上の中心は過去は「酒」「たばこ」「雑誌」「加工食品」でしたが、近年は「おにぎり」「弁当」「冷たい麺」といった食品(中食)となってきました。

 これから示すデータは公開情報ではなく、私が過去・現在個人的にお手伝いをしているコンビニの数値ですが、中食の売上構成比平均は、約50.3%でした。コンビニ1店舗あたり平均年商が約1億6千万円であるため、実に約8000万円が1店舗あたりの中食年間売上となっている計算になります。

 中食とは、家の中で食べる食品なので、購入頻度も高くなるものです。独身男性であればほぼ毎日コンビニで夕食を購入している人もいるではないでしょうか。

 このように、コンビニは「家の近くにあり、購入頻度が高い食べ物を買う場所」となっているため、固定客が多いのです。


■店内での平均滞在時間は5分以内が80%

 コンビニに入り、商品を選びレジに行き商品精算をする。この一連の買い物行動の平均時間が5分以内である人がなんと80%もいます。コンビニに入る前から買う商品を決めており、一直線に欲しい商品がある場所まで行き商品を手に取ってレジに並びお金を払って出て行ってしまうのですね。

 一般的なスーパーでの滞在時間が約20分であることを考えると、いかに短いかがご理解いただけるのでないでしょうか。

 この滞在時間というもの、時間によって変化します。一番早いのが朝。出勤前にコンビニに寄る場合は、急いでいるため滞在時間が益々早まります。正確なデータはありませんが、私の肌感覚では約3分ぐらいではないでしょうか。

 コンビニに入ったお客さまが店内で「何を買おうかな?」と悩んでいる様子はほとんど見たことがありません。次に短いのが昼。サラリーマン、OLには昼休み時間が決まっています。45分間の昼休みを最大限活用しようと考えると、ランチを選ぶために時間をかけていられない。「弁当とお茶」といった動きをするお客さまが大半です。

 最長の滞在時間は夜。仕事帰りのサラリーマン、OLは雑誌を立ち読みしたり、ビールを選び、趣味のフィギュア商品を眺め、お菓子を選び、夕食、デザートなどを購入していく行動をしていきます。私の実体験として、店内をブラブラしていたある男性客の店内滞在時間は約1時間であったことを記憶しています。丁寧に雑誌を立ち読みし、フィギュア商品を真剣に選らび出しているお客さまでした。

 余談ですが、店内滞在時間の違いは客単価にも反映されています。滞在時間が長くなればなるほど、客単価は向上していくものです。


■脅威の坪当たり売上高(生産性)

 小売業の生産性を測る指標として「一坪あたり売上高」があります。商業統計(平成19年)から抜粋してみると、下記の通りです。

業  態 坪あたり売上
コンビニエンスストア 4,715,818
百貨店 3,984,264
専門店 3,871,680
小売業計 2,923,402
食料品スーパー 2,910,850
ドラッグストア 2,079,224
GWS(総合スーパー) 1,548,928
ホームセンター 940,053


 小売業として、最高値の一坪あたり売上高を誇っています。一般的に店舗面積が大きくなれば、「家賃」「光熱費」「建設費」等の経費がかかってくるものです。小さな店舗で高い売上(高生産性)であることがコンビニ業態の凄さなのです。

 冒頭に示したように、コンビニの歴史はお客さまニーズへの変化対応の歴史です。「コンビニの近くに住んでいるお客さまにとって便利な店になろう」と努力を続けてきた結果が、このようなビジネスモデルとなり成長を続けてきたのでしょう。