コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第30回 成長がイメージできる独自の経営戦略立案

 今回は、船井総合研究所 吉崎誠二が担当します。

 私は、ハウスメーカー・不動産ディベロッパー企業を中心に、経営戦略・マーケティング戦略の構築業務を行ってきました。

 これまでは、集客や販売など、マーケティングに関する業務のご依頼が多かったのですが、最近、大手企業様からは、今後の部門戦略立案や経営戦略の見直しなどのご依頼が多くなりました。これらの、先進的な企業では今、経営全般にわたる3〜5ヵ年戦略を外部ブレーンである我々を交えながら、真剣に討議しています。

 今のままの戦略では数年後の経営の見通しが危うい、という思いが強いようです。

 ハウスメーカーの主戦場である注文住宅は、ここ数ヵ年で大きく販売戸数を落としました。数値でみると、着工戸数は20%近く減少しました。これには、いくつかの要因があります。ランダムに挙げてみますと、

 1.一部地域を除いて、全国的に人口減少の傾向

 2. ハウスメーカーは政府主導の下、高耐久住宅商品を投入(100年住宅や200年住宅)→建替えサイクルの長期化

 3.建て替えるより、リフォームして長く使う、というECO的風潮

 4. STEP UP型(賃貸 → 分譲マンション → 一戸建て住宅)を選ぶ人の減少
→日本では1960年代後半から、団地や分譲マンションが増えた。その頃に生まれた世代が今のメインターゲット。この世代は生まれた時からずっと集合住宅住まいのため、一戸建て住宅を希望しない傾向にある。

 5.家庭の変化(共働き=都心にすまいを持ちたい。単身世帯の増加、晩婚化など)

 人にとって、欠かせない衣・食・住の1つである住宅(住まい)は、社会的な影響を強く受けます。

 社会が変化すれば、それに伴い住まいに対する欲求も変化していきます。

 ハウスメーカーは1960年代後半〜1970年代初頭に創業している企業が多くみられますが、そのころから日本は大きく変化しました。

 高度成長のさなか、労働人口不足の日本の都市部は、農村地域にその労働力を求めました。農村社会が崩れ、都市部への人口流入が増えました。その人々が都市部で家庭を築き、初めは社宅などに住んでいた人々が、都市の郊外に夢の一戸建て住宅を購入したのです。

 このころ、住宅メーカーは一気に成長しました。多くの企業が参入しました。郊外に住宅展示場を建てて、そこを訪れる人を待って、営業攻勢をかける。この営業スタイルが成立していました。今では、土・日曜日でも閑散としている住宅展示場が多く見られます。なんとか、集客をしようと、子供に受けそうなイベントを開催して、一応の集客効果は得られているようですが、しかし、「ただ、イベントに来ただけ。」というお客様が多く、営業担当者の見込み客リストは増えていないようです。

 政府も、新築住宅建設促進策を長年推進してきましたが、2000年以降から、中古住宅の流通促進策や、住宅リフォーム促進へ舵を切りました。金利の優遇策などが具体策として行われてきました。大きな金額の買い物ですから、金利政策は住宅産業にとって大きな影響をもたらします。

 このように社会も、政府の方向性も大きな変化があったのです。

 それを受けてハウスメーカーやマンションディベロッパーも変化しなければなりません。

 現在、これら企業の経営幹部の年齢は55〜65歳。これらの人々が、大学を卒業し入社したのは1965年〜1975年。先に私が述べた、住宅産業勃興期に入社し、若き営業マン時代は、飛ぶように住宅が売れた時代で、まさに、この年代の方々のビジネスマン人生は住宅産業の成長の歴史でもあったのです。

 そして今、これら経営幹部の方々の柔軟性が求められています。営業マンへの研修や集客手段の見直しをいくら繰り返しても、大きな成果は期待できません。

 私は10年後の住宅産業の勢力図は大きく変わっていると、予測しています。業績順位も大きく入れ替わることでしょう。またそのころには、現在の日本の自動車メーカーのように、海外市場が主戦場となっているハウスメーカーも多いことでしょう。大手ハウスメーカーは、どこも総合不動産(業務内容はもちろん、金額の小さなもの〜大きなものを含めて)のようになってきています。この中で、どのように他社との差別化を図るのか。

 自社の独自の強さを再発見し、市場や業界をまたいで広い範囲での競合を分析し、5年後の成長がイメージできる独自の経営戦略立案が求められています。