コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第21回 モチベーションアップの仕組み

 こんにちは、船井総合研究所の中野靖識です。

 最近は、販売会社統廃合、ホールディングカンパニー化など、事業を様々な形で再編成していく動きが活発になっています。法的な問題は当然それらを実践してくい中で整理されていきますが、落とし穴になりやすいのは、モチベーションに関する問題かと思います。

 改善を推進していくためには、可能な限りモチベーションの高い状態になるようマネジメントしていかなければなりませんが、組織変革の際には、評価システムの変更や処遇変更に伴う「痛み」がついて回るものです。人事・労務関連をご担当される方々は、組合対応を含め、非常に神経を使っておられる領域の一つでしょう。

 かつては、動機付けに関してはモチベーションの過程理論として研究されてきました。「人の行動はその行動が報酬に繋がる期待と報酬の魅力度によって規定される」として期待理論や「達成意欲の強い人は適度な困難のある課題を好み、それを達成することそのものに動機付けられる」という達成動機理論などが有名ですね。

 モチベーションアップに向けたアプローチの考え方としては「モチベーション向上要因の拡大」と「モチベーション減退要因の軽減」の両輪をカバーすることがポイントとなると言われていますが、組織変更初期には減退要因の軽減を優先される企業も多いものです。

 「モチベーション向上要因」の代表的なものは、以下の項目があげられます。

 ・報酬の変化に対する期待
 ・組織貢献に対する評価への期待
 ・人間関係の変化に対する期待
 ・組織運営の変化に対する期待

 これらは、「個人に対する期待値のマネジメント」が中心になるため、認識すべき要素は、以下のようにさらに細かくすることができます。

 ・努力が業績、報酬に繋がるという期待
 ・報酬の魅力度
 ・課題達成時の充実感に対する期待
 ・社内的認知及び評価を得られるという期待
 ・自分の能力が高まることに対する期待
 ・周囲との人間関係が改善されることに対する期待
 ・昇進、昇格に対する期待

 まず、期待値のマネジメントは、努力の成果と成長の実感に分けて考えてみましょう。

 努力の成果は、「努力が業績、報酬に繋がるという期待」「報酬の魅力度」という企業内における業績考課の仕組みとの関連が強いことがわかります。よって、この場合に配慮すべき点は、努力を報酬に変換する仕組みの整備という、賃金に関する評価制度を確認し、公平な対応になっているかどうかを考え、場合によっては再整備を検討する可能性を考慮することになります。

 成長の実感は、「課題達成時の充実感に対する期待」「社内的認知及び評価を得られるという期待」「自分の能力が高まることに対する期待」という、業務に対する充実感と社内評価に対する期待感、自分の能力と精神的成長に対する期待感のように、業務を通じてどれだけ自分が成長できるのかを理解させることで、高めることができるようになります。

 よって、この場合に配慮すべきことはスキル向上が測定できるKPIを設定し、高頻度なフィードバックをしていくことを、仕組みとして検討することになります

 「モチベーション減退要因」の代表的なものは、以下の項目があげられます。

 ・職場の人間関係のストレス
 ・職場環境の変化に対するストレス
 ・仕事の質・量のストレス

 これらは、「職場に対するストレスマネジメント」が中心になりますが、一般的に認識すべきストレス要素としては、以下のように整理することができます。

 ・職場のコミュニケーションに対する不安
 ・自分の処理能力に対する不安感
 ・周囲の成長と自分の成長のギャップ感覚
 ・うまく行かなかった場合のペナルティに対する不安
 ・周囲から受ける妬みに対する不安感

 現場レベルでは職場ストレス診断などの確認ツールなどもよく利用されていますが、状態を理解しても改善努力をしなければ変化しないものです。これらを改善していく上では、職場の業務上のコミュニケーション機会を多くしていくことでカバーしようとする動きが多いものです。

 古典的な対処方法ですが、職場のQCサークルといった「チームビルディング方式」で改善していくやり方は、近年でも有効な手段であることは間違いありません。個人を孤立させない、もしくは組織に所属している実感を持たせることで、存在意義を感じさせる環境整備を進めることが、改善の第一歩になっているケースが目立ちます。

 改善を支えるマネジメントは、企業それぞれの風土を活かしながら、組織構成員のモチベーションを高くすることが第一歩と言えるでしょう。アプローチは無限大にあります。

 皆さんそれぞれのモチベーションアップの仕組みをご検討下さい。