コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第20回 米国販売戦略の留意点

 今回は中野好純が担当をさせていただきます。よろしくお願いします。

 今、抱えているプロジェクトで、日本の上場企業が米国で販売戦略を強化する案件があるのですが、この件で2ヶ月に1回くらいは商談などで現地に出張しております。戦略コンサルタントとして、戦略を組む段階で現地の事情に精通していなければならない必要性を感じております。

 多くの会社は、戦略を策定する段階で国内の販売戦略の延長上で海外販売戦略を考えておられるかも知れません。実際は戦略を展開する段階で多くの難しさがあるということをお伝えしたいと思います。

 まず留意すべき点は、販売拠点のあり方です。特に米国では営業活動を行うようなアクティブビジネスの場合、駐在員事務所スタイルではなく現地法人スタイルを取る必要があります。

 この法人化のポイントは、(1)従業員や顧客、取引先などの訴訟から日本の本社を守る目的 (2)雇用や労務管理を現地に即して行う などがあげられます。

 実際にプロフィットをたたき出すようなビジネスが成立している場合では、駐在員事務所スタイルでは不当な税金逃れなど、現地の州政府から厳しくチェックされる可能性があることを念頭に置かなければなりません。当初から現地法人化して、先行投資をしながらビジネスを立ち上げるだけの確実な戦略を固めておくことが理想ですね。

 次のポイントは営業のやり方です。米国で何度か営業、商談の場に同行しているのですが、日本と全く環境が違うのは、単なる関係づくりの挨拶的営業を根本的に受け付けない文化があると思っていただければと思います。

 日本以上に時間生産性を問われるのが米国の営業のあり方です。バイヤーも商談の時間を割くからには、目に見える付加価値を与えなければなりません。面識や顔みせなどには全く付加価値を感じてもらえないと考えたほうがいいでしょう。

 「何を売りたいのか」「いくらで売りたいのか」「バイヤー(企業)にどんなベネフィットをもたらすのか」の3点は初めての訪問時にしっかりと固めておくべきです。日本企業が考えがちな「まず会って顧客のニーズを聞いてから・・・」的発想では営業は通用しないと思います。

 最後のポイントは地域性です。同じ米国のビジネスでも、ニューヨークとロサンゼルス、南部の田舎では営業のやり方が全く違います。時間の使い方に対する文化も違います。ビジネスを取り巻く法制度も基本的に州によって異なります。

 実際に営業をスタートするためには、その地域の特性を熟知した外部ブレインやセールスレップを効果的に活用したほうが成功する可能性は高いはずです。