コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第11回 問題の捉え方

 こんにちは、船井総合研究所の清水 準です。

 今回は「問題の捉え方」というテーマでお話させていただきます。業務を進める上で、問題というのは大小様々ながら必ず発生します。重要なのはいかにして問題を捉え、解決するかということです。

 その際、まず最初の段階での「問題の捉え方」によって解決の方向性は大きく変わってきます。今回がそのヒントになれば幸いです。

 先日、某老舗和菓子メーカーで製造年月日偽装の事件があったのは記憶に新しいことと思います。売れ残った商品を回収し、再利用した商品に再度製造年月日を印字し販売していた事件ですが、事件の経緯についての記者からの質問に当の社長はこのように答えていました。

 「組織的関与はなかったと認識している」

 一方、最近の防衛省の一連の不祥事で、防衛省のトップである大臣は報道陣の質問に対して次のように答えています。

 「(今回の事件を)組織的、構造的な問題として捉えている」

 さて、この両者の問題の捉え方の違いを考えてみましょう。弊社には仕事柄、多くの経営相談が寄せられますが、その相談の多くは初期段階では現象面からの相談です。例えば、売上の逓減、コストの増加、社員のモチベーションの低下、などが相談の発端となります。これらの相談を受けて、依頼先企業の社員の方々へヒアリングさせていただくと様々な問題が明らかになってきます。

 そしてヒアリングを進めていくと多くの場合、その問題の原因は「個人」もしくは「特定の部署」が作り出しているという話が出てきます。例えば、社員のモチベーション低下の原因は○○課長のマネジメント能力が足りないからだ、などです。

 では、解決に向けて、実際にその特定の個人や部署を入れ替えてしまえば問題は解決するでしょうか? 残念ながらほとんどの場合、本質的な解決にはつながりません。短期的には問題はおさまりますが、同じ問題がカタチを変えて再発することになります。なぜでしょうか?

 これは問題をいかに捉えるかが非常に重要な要素となります。ある問題が発生したときに、その原因を「個人の問題」として捉えた場合の要因としては次のような事象が挙げられます。

 ・個人としてのマネジメント能力の不足
 ・個人としてのスキルや人間的な能力の不足

 これらの原因に対しての解決策の一つは、その個人を”交換”することが考えられます。

 一方、原因を「組織的な問題」として捉えた場合の要因としては次のような事象が挙げられます。

 ・組織としてマネジメント能力を明確に定義していなかった
 ・組織として社員の能力を向上させる仕組みを作っていなかった
 ・組織として職能別の役割や使命を明確にしていなかった

 これらの原因に対しての解決策は”組織としての仕組み作り”です。”交換”という考え方とは全く異なることに注意してください。

 先の例で挙げた、老舗和菓子と防衛省の不祥事にからむ問題の捉え方ですが、両者は性質の異なる組織体ではありますが、もし全く同じ土俵で勝負している企業だったとすれば、どのような結果になるでしょうか。

 一方は問題を一部の人間によるもととして捉え、もう一方は組織全体の問題として捉えています。長期的な視点で見れば、後者の方が問題を根本から解決できる可能性が高くなることは想像に難くないでしょう。問題をいかに捉えるかによって、結果として大きな差となって現れてきます。

 今回のテーマをきっかけとして、日常の業務の中で生じる問題の捉え方について今一度考えてみてはいかがでしょうか。