コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第7回 プロジェクトマネジメント

 こんにちは、船井総合研究所の菊地広記です。

 今回は、プロジェクトマネジメントについて考えてみます。

 プロジェクトマネジメントというと、PMPなどの認証が普及したこともあり、コストリスク・工程遅延リスクなどに対する、定量的・科学的アプローチ・コントロールを主体にイメージされる方が多いと思います。

 確かに、プロジェクトがコンサルティングでもクライアントサイドでも業務遂行の手段として行われる以上、利益を直接的に侵害するコストリスクや工程遅延に伴う各種リスクは定量的・科学的に、的確に把握され、当然、最大限抑制されることが求められます。

 そのために、精緻な遂行プラン、それでも内包されるリスクに適切に対応するためのリスクヘッジプラン・コンティンジェンシープランの立案はプロジェクトマネジメントにおいて非常に重要なテクニックといえます。

 しかし、プロジェクトマネジメントにおいて、いくら定量的・科学的なプランニングやコントロールの精度を上げても、それとは異質な課題が必ず存在します。

 それは参画メンバーのモチベーション変動です。

 プロジェクトは、言うまでもなく参画メンバー全員によって遂行されます。プロジェクトマネジメントはどのようなツールを使ったとしても、最後はメンバーという人の行動によって制約・助長され、人の行動は各個のモチベーションによって大きく変動します。

 参画メンバーは個々に役割を与えられ、そのモチベーションが一定水準以上に担保されなければ、科学的に計算された各種プランも一気に瓦解します。

 つまり、プロジェクトマネジメントにおける定量的・科学的アプローチは、あくまでそれとは異質なメンバーモチベーションの前提の上で成立するということです。

 逆説的に、メンバーのモチベーション変動への考慮が不足した科学的アプローチのプロジェクトマネジメントは、精度が高いように見えて、非常に脆い前提の上に乗っているということになります。

 では、プロジェクトマネジメントの前提と前記した、メンバーモチベーション変動のコントロールは、どのように行えばいいのでしょうか。

 コーチングやカウンセリングなど、様々な方法論が世に出てはいます。それらは確かに各々一理あり、ある程度考慮すべきものではありますが、人の思考・志向は千差万別です。

 精神的なフォローをいちいち全ての特性に合わせて多様化したテクニックで対症療法的に対応しようとすれば、マネジメント側が破綻しかねません。

 少なくとも、科学的なプロジェクトコントロールを完璧に行い、かつ、豊富なモチベーション対応テクニックを多様に使い分けてメンバーをコントロールできるようなスーパーマネージャーはそうはいないでしょう。

 そこで私は、対応が拡散してしまう個々人の特性はとりあえず脇に置いて、メンバーのモチベーションコントロールのポイントは以下2つだと考えています。

1.常に不動のスタンスで動く自分(マネージャー)の姿を見せること
2.メンバーにワーカーではなくプロジェクトメンバーという意識を持たせること


 1.私を例にとると、常に、中途半端な前提に捉われずゼロベースで考えること、クライアントにおいて実質的な実行がもたらされることをプロジェクト成果と捉えること、をスタンスとして動いています。

 プロジェクトマネージャーが常に同じスタンスで動くことで、メンバーは混乱せずマネージャーの意向を察知して能動的に動くことができます。

 2.メンバーがマネージャーの不動のスタンスを理解し、その上で彼ら自身が能動的に行動するようにマネージャーがサポートできれば、切り売りの作業を受け持つワーカーではなく、マネージャーを能動的にサポートするメンバーとしてモチベートしてくれると思います。

 以上、プロジェクトマネジメントの一番のポイントは、瑣末なテクニック論ではなくマネージャー自身の”親父の背中を見せる”的な行動ではないかと考えています。