コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第2回 拡張機型マネージャー VS 翻訳機マネージャー

 今回から新たに連載に参加させていただきます、船井総合研究所の山下貴宏です。

 日頃のコンサルティングでは、事業戦略から営業戦略への落とし込みとその実行に向けた営業展開支援および営業組織機能の強化を主に行っています。いわゆる営業改革のテーマが多いわけですが、その中で解決しなければならない課題の一つが「組織をリードする営業マネージャーをいかに強化するか」というテーマです。

 これから数回かけてこのテーマを考えていきます。今回は、「拡張機型マネージャー VS 翻訳機マネージャー」ということについてお話させていただきたいと思います。

 営業改革のプロジェクトを進めていく中で、多くの企業に共通する課題は、トップと現場の溝が大きく開いており、それが当たり前のこととして営業組織に定着してしまっている、そしてそこを埋めるべき中間層(マネージャー層)が機能不全に陥っているということです。中間マネジメントクラスの機能不全の特徴は以下の通りです。

●マネージャーから会社の方針が伝わってこない
●そもそもゴール達成イメージが持てる営業戦略がない
●攻略すべきターゲットとその攻略法を指導しきれていない
●指示が漠然的かつ場当たり的で戦略性が無い
●マネージャーとしての役割認識が曖昧

 特徴的なのは、トップのビジョンや戦略を現場の状況に合わせて噛み砕けていないということです。トップの言葉を伝言ゲームしているだけの場合も多く、船井総研ではこのようなマネージャーを「拡張機型マネージャー」とよく呼びます。

 拡張機とは、音声マイクの拡張機です。話がよく聞こえない状況で声を大きくするときに使いますが、「拡張機型マネージャー」はトップの言っていることを単に声を大きくして現場に伝えているだけで、現場のアクションには全く響きません。現場は目標ゴールを「どのように」達成するのかを知りたいのに、トップが言っていることと同じことを言っても現場は動かないわけです。

 この「拡張機型マネージャー」の反対が、「翻訳機型マネージャー」です。「翻訳機型マネージャー」の特徴は以下の通りです。

●会社の方針を自分の言葉で伝えることができる
●会社の事業戦略と現場を理解した営業プランができている
●営業戦略が明確でチームレベルまでアクションが想定されている
●自らの役割が具体的で、現場におけるマネージャーの使い方が示されている
●常に改善のためのコミュニケーションを現場ととっている

 「翻訳機型マネージャー」は、一旦自分の頭でトップの戦略やビジョンを解釈し、それを現場がわかる言葉に翻訳して、具体的なアクションまで導くことができる人のことを指します。ポイントは、“具体的なアクションまで導くことができる”というところです。

 結果をコミットする立場にあるマネージャーは部下に数値目標を与えて終わり、ということだけではダメで、ゴール達成シナリオを複数持っておく必要があります。

 そのためにはマネージャー自信が“当事者”として具体的なアクションまで想定したプランニングをしておく必要があります。この“深堀感”が「拡張機型マネージャー」の大きな違いになります。この「翻訳機型マネージャー」にはいくつかのスキルが求められますが、その中でも重要なスキルが以下の3つです。

1.ターゲットとしている事業特性の理解
2.経営者視点の理解
3.部下営業パーソン特性の理解

 1がなければ、戦うフィールドで勝つための作戦を考えることができません。2がなければ、トップが言っていることを理解することができません。3がなければ、部下を効果的に動かしてゴールを達成することが出来ません。「翻訳機型マネージャー」にこの3つが必要なのです。

 実は、営業改革のレバレッジは、翻訳機型マネージャーを何人育成できるかにかかっています。綺麗な営業戦略の絵を描いても、営業プロセスをしても、効果的なKPI指標を設定して営業活動の管理を行っても、それを戦略ゴールに照らし合わせて経営者視点に立って現場を具体的に指導できなければ求める成果に到達することができないのです。

 次回は、「翻訳機型マネージャー」になるためのステップと上記3つのスキル習得について考えていきたいと思います。