コンサルティング情報

第20回 香港の株式市場

 今回は、「日本の中小企業を元気にするためには、会計事務所・税理士事務所が元気にならなければならない」という信念のもと、日々のコンサルティングを行なっている、竹内実門が担当させていただきます。

 現場に近いコンサルティング情報や、いくつかの業種に特化した情報をお届けするこの「現場コンサルタントの生の声」ですが、今回は10月の上旬にある企業の社員研修旅行に同行し香港に行ってきましたので、そこで感じたことを書きたいと思います。

 まず、都市として香港を見たときに最初に感じたのは、「スピード感」です。エスカレーターは日本の1.3倍、エレベーターも同様、つまり「人間が速く移動する」のです。 日本の大都市圏(東京や大阪)も人の移動速度は決して遅くはないと思いますが、それよりもスピード感があります。人が速く移動するということは、ビジネスも経済も速く動いているということが言えるでしょう。この事実から分かることは、グローバルな視点で日本はもはやリーダーシップが取れなくなりつつあるのでは?・・・というのが実感です。

 それでは株式市場という観点から香港を考えてみましょう。

 このところ香港市場が急速に拡大しています。一日の株式売買金額で東京市場を上回る事態がこの10月に起こりました。香港市場を賑わせている最大の要因は中国本土企業の上場です。面白いのは、この主力となっている中国企業の株価が、中国本土(上海市場)と比べて安く買えるということです。

 詳しい理由は省きますが、このような要因で、世界中の投資家が香港市場にお金を投入するようになっているのです。また、ここ最近では中国本土からの個人投資家が香港の銀行に口座を開設し、直接株式の売買を始めるケースが増えているそうです。中国本土でビジネスに成功し資産家となった方々です。

 このように、世界中の資産家やこのところ成長著しい中国の資産家がこぞって香港にお金を投入し始めているのです。日本人も香港に直接投資を行う人が増加しています。日本の銀行にお金を預けても低金利政策によってお金は増えません。香港には平気で10%、15%といった利回りの商品が存在しています。このような現象は、香港自体の制度にも要因があると考えられます。

 例えば、法人税や所得税の税率が著しく低いこと(法人税は最高で17.5%、給与所得税は16%)、キャピタルゲインなどが非課税であるなど、日本では考えられないような制度を有しています。消費税もありません。そのかわり社会保障制度はまったくなく、小さな政府でシンプルな仕組みで国家運営がなされています。

 それが言いか悪いかは別として「世界の金融センター」を目指し、「なるべく運営コストが掛からない仕組み」で、国家を経営するという戦略が明確になっているという点は、企業経営を行う上でも学ばなければいけません。

 80階以上のビルが立ち並び、ビジネスも人もスピード感を持って進んでいる香港は、私のようなビジネスマンにとっては非常に刺激的な街でした。皆様も一度観光のついでに、こういった視点で香港に行ってみるといいかもしれません。