コンサルティング情報

第19回 中国へのアウトソーシング

 今回は、「日本の中小企業を元気にするためには、会計事務所・税理士事務所が元気にならなければならない」という信念のもと、日々のコンサルティングを行なっている、竹内 実門が担当させていただきます。

 現場に近いコンサルティング情報や、いくつかの業種に特化した情報をお届けするこの「現場コンサルタントの生の声」ですが、今回は最近注目されている「中国へのアウトソーシング」についてお話させていただきます。

 先日NHKスペシャルで「人事も経理も中国へ」が放送されました。ご覧になったかたもいらっしゃると思いますが、簡単に内容をお伝えします。

 京都にある日本でも有数の通販会社は、取扱商品の多く(特に衣料品)は中国で生産しています。製造部門を中国で行いコストダウンを図るというビジネスモデルはすでに一般常識になっています。この通販会社では、製造だけでなく顧客から毎日20,000通以上届く注文書の処理を中国で行っておりました。それに加えて会社本体の経理業務や人事業務、さらには総務業務を中国の大連で行うまでのプロセスが放送されていました。

 このように企業経営の業務の一部を外部委託することを「アウトソーシング」と言います。あらゆる日本企業が成熟期に入り、価格競争が激化するにしたがって直接利益を生まない業務(経理・人事・総務)のコスト削減が求められています。製造業で実証されたように中国と日本の人件費格差を利用して、低いコストで事務業務を行っています。会社によっては30%以上のコストダウンが成功した例もあります。特に大企業においてこの傾向は進んでいます。

 この放送の中にもありましたが、多くの日本人は「衣料品製造などの定型的で比較的単純作業は中国人でもできるが、経理(会計)や人事業務などのホワイトカラーが行う高度な業務は、中国人にはできない!」と考えている方が大多数です。しかし、私も中国で同じようなビジネスに関わっていますが、その考えはまったく誤りであることを痛感させられました。

 例えば、中国の若者で日本語を勉強し日本の仕事につこうとしている方の意識は、日本の若者よりはるかに高いということが挙げられます。彼らにとって日本の仕事をするということは自分のスキルアップと共に、アメリカンドリームならぬチャイナドリームを果たすための一番の近道です。ですからよく勉強します。人の話を一言も漏らさずに聴こうとします。さらに忘れないようにしっかりメモを取ります。最近の日本の若者には見られない傾向です。

 とにかくよく勉強するのです。考えて見ればあたり前のことですが、日本語検定1級レベルの中国人ですと、日常会話はほとんど支障がありませんし、読み書きであればかなり高い精度でこなします。しかも彼らは日本に来たこともなく、大学の4年間でそれをマスターするのです。

 どうでしょうか、日本人で、大学4年間の勉強のみで外国の言語をほぼ自由に操れるレベルといったら、相当なものでしょう。そのようなレベルの高い若者が、データ入力や、会計処理を行うのです。しつこいようですが、日本人より高いモチベーションで・・・。

 もちろん、中国の政情や人民元の切上げなど問題がないわけではなりません。特にこれから人民元が上がっていく傾向は強いを考えられるので、今までのようなコストメリットは出しにくいかもしれません。しかし、私が見てきた中国の若者の「意識」や「能力」を考えると、コストメリットより「品質メリット」が得られるのはそう遠くないような気がしてなりません。

 今まで、日本語は特殊という事情で、間接部門を海外で行うという発想はもみ消されてきました。しかし、漢字文化圏の中国で実績ができてくると、大企業だけでなく中小企業を対象としたアウトソーシングが定着してくる可能性は低くないでしょう。もしかしたら少子高齢化社会になり、日本の労働力が急速に減少していく中、それを解決する切り札になるかもしれませんね。