コンサルティング情報

第13回 会計事務所の増客

 今回は、「日本の中小企業を元気にするためには、会計事務所・税理士事務所が元気にならなければならない」という信念のもと、日々のコンサルティングを行なっている、竹内実門が担当させていただきます。

 今回は会計事務所の増客について物語風にお話しいたします。


 ある税理士の胸のうち...

 めまぐるしく変わる税法や商法を勉強し、顧問先の会計業務を行なう。まじめな職員も先生に引っ張られるように一生懸命勉強する。そして、顧問先が損をしないようにぎりぎりまで節税対策を施し、税務調査にも万全の準備をして望む。顧問先が少しでも楽になればいいと思って経理指導をし、自計化しようと提案する。

 こんなにもお客様のためにがんばっているのに、ふと足元を見ると、顧問料は下がるし、顧問先も減っている。新規の顧問先を増やそうと考えて、職員に「顧問先に行って紹介をお願いしなさい!」と、新規拡大キャンペーンを実施しても成果はあがらない。ダイレクトメールを送ったけどほとんど反応はない。

 このままだと5年後には売上が20%〜30%は落ち込んでしまいそうだ…と考えていたところに、「業績を伸ばしている事務所のマーケティング戦略公開セミナー」の案内が届いたので、3万円出して行ってみた。「うんうん、やっぱりマーケティングって大事だよね! いい気づきがあったね、明日から早速実践してみよう!」とやる気が出る。ついでにセミナーで紹介された新規顧客開拓のツールを購入し、ためになりそうなビデオも2,3セット購入して、「よし! がんばるぞ」。

 事務所に帰れば、日常業務に忙殺されてセミナーで聞いたことは何もできず、買ったツールはパソコンにインストールしてみただけ。ビデオに至っては所長室のライブラリーに綺麗に並べて封もあけていない。気づけば年末も近づき年調〜確定申告〜3月決算、と繁忙期に突入していく。

 そこでふとしたときにセミナーで聞いたことを思い出す。「ホームページ作らなきゃ、セミナーやって新しいお客さんを開拓しなきゃ! 営業活動を職員にやらせなきゃ!」

 「あ〜、やらなきゃいけないことはいっぱいあるのに、何から手をつければいいんだっけ…。でも良く考えてみればマーケティングだの、セミナーだの、営業活動だの、こういうことが苦手だからうちの職員は会計事務所で働いているんだよなぁ〜」。結局どうすればいいか答が出ないまま、何も変わらない毎日が続いていく…。


 このような想いをされている税理士は少なくありません。

 今まで150人以上の先生方にお会いして強く感じていることがあります。それは「優れた税理士は良い経営者になれないのではないか?」という仮説です。優れた税理士は、本当にまじめに業務に取り組んでいます。一生懸命勉強もしています。そしてなによりもお客様のためにと思ってがんばっています。

 でも、そういう先生方はサービス精神が旺盛です。お客様に頼まれれば「嫌」とは言えません。損得考えず奉仕してしまいます。同様に「仲間」を大切にします。「仲間」のお客さんを横取りするようなことはできません。だから、積極的にプロモーションを仕掛けることを嫌います。勉強することが多すぎて「営業活動」している時間もありません。「営業」というイメージから何か人を騙しているようでそもそも好きではありません。

 本当にいい人です。だから嫌われたくありません。お金をいただいているお客様からも、お金を納める税務署からも…そう、優れた税理士はいい人が多いのです。いい人すぎて経営に集中できないのです。

 しかし、税理士は経営をサポートする立場です。「経営者の発想」を身につけなくてはなりません。お客様と同じ立場の「経営者」になってはじめて、本当に親身なってサポートができるようになるのです。さらに、一生懸命働いている職員もいます。その家族もいます。その人たちを幸せにする義務があります。

 「経営」にとって最も大切なことは「つぶさないこと」。そのことに全力投球しなくてはなりません。

 そのために最も重要なことは、「売上をつくること」です。売上がなければ何も始まりません。資金繰りもマネジメントも関係ありません。税理士を取り巻く環境が厳しい中、「継続的に売上をつくる」ことができなければジリ貧です。継続的に売上をつくるためには、新しいお客様を獲得していかなければなりません。会計事務所にとって今、最も必要なことは「継続的に新しいお客様を獲得すること」なのです。

 「常に勉強し続けなければならない」「日常業務が忙しい」「営業活動が苦手」「いい人である」「人から嫌われたくない」…etc。この状況下で、どうしたら「継続的に新しいお客様を獲得」できるのでしょうか?

 答は、「営業活動しないで顧問先が増える仕組」をつくることです。

 営業活動は、してはいけません。もともと得意でないことですから、しないほうがいいのです。不得手なことをしてうまくいくケースはほとんどありません。だから、「仕組」をつくらないといけないのです。

 「営業活動しないで顧問先が増える仕組」・・・

 ついにこの仕組(ビジネスモデル)を完成させることができました。この仕組は、会計事務所の経営に最も適したビジネスモデルと言えるでしょう。

 それはなぜか?!

 これから理由を説明します。


 理由其の一: 多くの税理士・職員は営業活動が苦手であるから

 理由其のニ: 「顧問報酬+決算料」という従来の収入形態のように、安定的かつ継続的に増客を図れる仕組であるから

 理由其の三: 時代の変化により、お客様が税理士(会計事務所)を比較するようになったから

 理由其の四: 大きな投資を必要としないから(新たに人を採用する必要もありません)

 理由其の五: 会計事務所の長所を最大限生かしているビジネスモデルだから


 このビジネスモデルは、一度流れを作ってしまうと自動的に顧問先が増え続けます。さらに、会計事務所からの押し付けではなく、お客様が納得して選ぶことによって成り立ちますのでクレームになることはほとんどありません。つまり顧問先の離脱や、単価ダウンなどの要求もありません。

 どのようなビジネスモデルかというと...

 他人→見込み客→友人客→信者客という流れで、顧客をランクアップさせていくのです。他人に対しては、事務所を知ってもらうアプローチを! 見込み客に対しては、双方向のコミュニケーションが取れる関係づくりを!

 友人客には、信者になってもらうための「Win―Win」の関係づくりを! それぞれ提案していくことで、最終的な信者客(つまり顧問先)を増客することが可能になります。

 今後は、このビジネスモデルにおける各々のステップをより詳細にお話していきます。