コンサルティング情報

第10回 業績の良い事務所の新規顧客獲得法

 今回は、「日本の中小企業を元気にするためには、会計事務所・税理士事務所が元気にならなければならない」という信念のもと、日々のコンサルティングを行なっている、竹内実門が担当させていただきます。

 現場に近いコンサルティング情報や、いくつかの業種に特化した情報をお届けするこの「現場コンサルタントの生の声」ですが、業績の良い事務所が取り組んでいる新規顧客の獲得法についてお話したいと思います。


事例1:サービスの商品化で新規獲得を図る

 東京の二代目所長さんの事務所では、サービスの商品化を徹底して行なっています。例えば、自分の事務所の経営計画を作成し、それを顧問先や取引先などに経営方針発表会というイベントを通じて公表しています。会計事務所は顧問先から見ると「何をしているのか良く分からない」という顧客の心理に対して、自所の経営を「オープン」にすることで、顧問先のモデルとなるような事務所経営を目指しているのです。また、企業家をターゲットとした起業家パックは、企業から2年間は低価格の月次顧問料だけですべてのサービスを賄うといった取組みをしています。


事例2:損保の営業マンに代わりに営業してもらう

 名古屋のある所長先生は、自分や職員では一切営業活動を行なわず、損害保険の営業マンとタッグを組んで営業活動を行なう(行なってもらう)ことにより、三年間で100件以上の新規顧客を獲得しています。損保の営業マンの多くは会計事務所のターゲットに近い中小企業の顧客訪問を頻繁に行なっています。その訪問時に常に税務ニーズ、会計ニーズを拾ってきてもらうのです。それを新規顧客見込みカードに記入してもらい、FAXで事務所まで送ってもらいます。そこで見込み客化したお客様に対して所長先生がクロージングのみ赴くやり方です。損保の営業マンにとっては、自分では解決できない顧客の課題を税理士に解決してもらうわけですので、当然お客様からの評価は高くなり、自分の実績もアップしていくわけです。


事例3:三つの新規ルートで年間10%アップ

 北関東の大手事務所では、新規の獲得を三つのルートで行なっています。一つ目は顧問先紹介ルート、二つ目はセミナールート、三つ目は提携ルートです。特に重要な位置づけとしているのがセミナールートです。多くの会計事務所ではどんなセミナーを開催したら集客が良いか悩むことが多いのですが、この事務所で最も集客力があるセミナーテーマは「決算書の見方・生かし方」です。意外に思う方も多いと思います。裏を返せば、「決算書の見方」や「決算書の生かし方」といった最も会計事務所が行なわなくてはならない基本的な指導を行なっていない事務所が多いということになるのです。このセミナーに参加した顧客に対して、前回お話しした「決算の診断」を行い、その診断結果に対して様々な提案を行なうことによって、自分の顧問先にしていくのです。


 今の三つの事例から見えてくることは、どこの事務所も積極的に動いているということです。商品化にしても、損保営業マンとのタッグにしても、セミナーにしても、積極的に新規を獲得しようとして、継続して動いた結果なのです。どの所長先生もはじめからうまくいった訳ではありません。試行錯誤を繰り返し、やっと成果が出てきたところです。ただし、そこに至るには、まず第一歩を踏み出さなくてはならないのです。