コンサルティング情報

第6回 会計事務所の業績アップ手法

 今回は、「日本の中小企業を元気にするためには、会計事務所・税理士事務所が元気にならなければならない」という信念のもと、日々のコンサルティングを行なっている、竹内実門が担当させていただきます。

 今回は会計事務所の業績アップ手法について、浅沼経営センターグループ 株式会社プロスの町田部長と対談を行なった内容をお送りします。少々長くなりますが、皆様と会計事務所とのお付き合いを考えるヒントにしていただければ幸甚に存じます。


司会:  今日は会計事務所・税理士事務所の業績アップの手法についてお二人にお話をしていただきます。顧問先の減少や顧問報酬単価の引き下げが増えてきているという声をよく耳にしますが、このような厳しい経済環境の中でどのように対処していったらよいのでしょうか?

竹内:  顧問先の減少・顧問料単価ダウン共に会計事務所の業績を悪化させる大きな要因です。これらの対策を立てる前に、なぜそうなってしまうのかを考える必要があると思います。まず、「顧問先の減少」について考えてみましょう。
 顧問先の減少には大きく分けて2つの理由が考えられます。一つは廃業による顧問契約の解除、もう一つは他の事務所への変更です。前者の場合はある意味仕方ない部分があると思いますが、後者の場合は確実に会計事務所側に原因があるということになります。以前はあまり見られなかったことだと思いますがここ数年、特にこの一年で顧問税理士を変更する企業が増えてきています。

司会:  町田部長は多くの会計事務所とお付き合いをされていますが、その辺はいかがですか?

町田:  そうですね。あまり表立って顧問先が取られたという話しはされませんが、肌感覚では相当増えているんじゃないかなあと思います。

竹内:  事務所にとってあまり良い話ではありませんから...確かに取られた方は「取られた!」とはいいませんね。でも、新規顧問先の獲得が多い事務所のトップに聞くと、他の会計事務所との契約をやめて、自分のところに移ってくるパターンがほとんどです。それにインターネットのビジネスマッチングサイトを見ていると、顧問税理士を探しているという案件が非常良くに目に付きます。「税理士特集」なんてのも良くやってます。

司会:  それだけ、お客様のニーズはたくさんあるということですね。なぜ顧問税理士を代えるのでしょうか?

竹内:  理由はたくさんあるのですが、根本的な原因は3つ挙げられます。一番目はコミュニケーション不足、二番目はお客様のニーズに応えていない、三番目は提供サービスの陳腐化です。

町田:  なるほど、私も同じようなことを感じています。ある経営者が集まる会合で、「税理士への不満」を100名の社長にインタビューしたことがあるのですが、その中で上位に来たのは「試算表の説明がない」「会話がない」といった、コミュニケーション不足に関するものでした。

司会:  他にはどのような不満が上位に来ていたのですか?

町田:  はい、ひどいものには「毎月来ない」というのもあったのですが、気になるところでは「月次試算表が遅い」「報酬の根拠が不明」「決算対策がない」といったところです。また、「会計事務所に期待すること」の上位に来たのは、「決算や月次試算表の説明をして欲しい」「報酬の根拠を明確にして欲しい」「決算対策をして欲しい」「自社の現在位置を知りたい」「業界情報が知りたい」といったものでした。

竹内:  なるほど、それはかなり業界の問題点を的確に表現しているインタビュー結果ですね。厳しい経済環境・めまぐるしく変化する時流の中で「経営」を行なっているトップにとっては、試算表が遅くては経営判断に迷うでしょうし、時流の変化についていけなければ、業績が下がってしまう...ということになるでしょうから。今までのように2ヵ月後に試算表が出てきたり、その試算表も単なる数字の説明だけなら、何のために顧問契約をしているのか? と考えてしまうでしょう。

町田:  確かに今までは、所長先生とお客様の関係性だけで、顧問契約が続いているということが多かったと思います。サービス業として先進的な異業種が参入してきたことによって、お客様の会計事務所に対する期待値が相当上がっているのでははないかと感じます。

竹内:  先程申し上げたとおり、今までは毎月同じ業務を行なっていてもさほど不満と感じなかったのですが、サービスの競争も価格の競争も激しくなってきたことで、「本当に今のままでいいの?」という疑問が芽生えてきていると思います。つまりお客様が「何を望んでいるか?」に敏感にならなくてはいけないし、「提供するサービス」自体の見直しを行なっていかなくてはならない。

町田:  そうですね。先程のインタビューのときに実はもう一つ聞いてみたんです。

司会:  どんなことをお聞きになったのですか?

町田:  はい、「どんなことをしたら顧問料が高くても満足しますか?」という質問を投げかけてみたんです。そこで上位に来たのは、「いろんな相談をしたい」「資金繰りについての相談に応じて欲しい」「業績がアップする方法を提供して欲しい」「決算対策を提案して欲しい」「変動費削減の指導をして欲しい」「役員報酬の適正な金額の指導をして欲しい」などでした。つまり、お客様は「相談したい」「ノウハウを提供して欲しい」「指導して欲しい」といったニーズがあるのではないかと感じました。

竹内:  なるほど、良く分かります。私も会計事務所だけでなく一般企業のコンサルティングも行なっているのですが、最初の入り口はもちろん船井総研得意の業績アップというテーマでお付き合いを始めることがほとんどです。しかし、お付き合いが長くなるにつれて、どうしても財務面や資金繰り、そして相続も含めた事業承継といったテーマに変化していくことが良くあります。中小企業のトップにとって、会計事務所は最も身近な存在であり、何から何まで相談したい相手なんです。

町田:  でも、会計事務所の中には「うちは税務と会計しか見ない」って言い切るところもありますよね。もっともっと「経営」に関するアドバイスや様々な指導・情報提供を行なっていかないと、事務所の存続自体が危うくなっていくような気がしてならないんです。

司会:  具体的にどのようにしていけばいいのでしょうか?

竹内:  町田部長の先程のお話にもあったように、会計事務所はまずコミュニケーション力をつけなくてはならないと思います。

司会:  まず、コミュニケーション力ですか?

竹内:  はい、そうです。お客様が求めているのは、完成した試算表でも決算書でもなく、毎月来てくれる担当さんからの「得する情報」です。確かに、成果品としての試算表や決算書、申告書は必要です。でも、極論を言えば、これは他の人でも良いのです。結果が同じであれば安いほうがいい。言い方を変えれば、試算表や決算書が正確にできるのは、会計事務所にとっての最低条件であって、今の時代はそれプラスαが必要なんです。

司会:  そのプラスαというのが、事務所と付き合うメリットですね!

竹内:  その通りです。そのためには事務所が提供できるサービス・・・つまり事務所がお客様に提供する「得する情報」を伝えることが一番大切なんです。それがコミュニケーション力です。あと、お客様のニーズを引き出すヒアリング能力も必要です。いくら有益な情報であっても、お客様が必要としてなければ、何の価値もありませんから。

司会:  そういった能力を身につけるにはどうしたらよいのでしょうか?

竹内:  そうですね。まず大切なのは、顧問先のトップの関心のあることについて話題を提供することからはじめるのが良いでしょう。

町田:  私もそう思います。会計事務所で働いている方は数字のことは強いのですが、経営の現場には弱い。映画のセリフじゃないけど、「経営は会議室で起こっているのではなく、現場で起こってるんだ!」って感じですね(笑)

竹内:  「現場」というのは大切なキーワードですね。多くの中小企業のトップは、現場叩き上げの方ですから、現場の話題になると喜んで話をしてくれる。

司会:  つまり相手の好きな話題から入る?

竹内:  そうです。コミュニケーション力の基本は先程も言いましたヒアリング能力なんです。いかに相手に話しをさせるか? これがポイントです。この部分を強化すれば先程申し上げた顧問税理士を替える原因のうち、コミュニケーション不足とお客様のニーズに応えていないの二つは解決できます。

司会:  もうひとつ「提供サービスの陳腐化」はどうすれば良いのでしょうか?

竹内:  会計事務所は「サービス」という目に見えないものを売ってますから、それを分かり易い形にすることが大切です。

町田:  私もそう思います。東京の若手税理士さんは、毎年純増で30〜40件の顧問先を拡大しています。その要因を一言でいえば、無形のサービスを商品化することに優れていることですかね。要は、今の税理士に不満または代えたいと思っている経営者に目に見える形(商品)でアプローチしているんです。
 その結果、新規のお客様の半分は、ホームページからの相談がきっかけだそうです。しかも決して大手とはいえない小規模の事務所です。

司会:  それはすごいですね! 全国の会計事務所の中でも1年で100件増やした。150件獲得したなどというファックスDMを見ますが、だいたい大型事務所で営業力がある事務所ばかりですよね。

町田:  他にも小規模経営を行なっているところで、60件からスタートし10年間で270件まで拡大した税理士さんもいます。この先生は自分では営業しません。外部のネットワークを活用した仕組みを構築しています。具体的には、損保代理店と紹介ネットワークを組みWIN−WINの関係を続けています。保険営業マンも助かる、経営者も喜ぶノウハウがそこには存在しているのです。また、この税理士さんは銀行出身ですので、銀行との付き合い方も非常にうまいというかコツを掴んでいらっしゃる。

竹内:  町田部長がお話しした二つの事例の先生は私も良く知っていますが、お二人に共通していることをまとめると、次のようになると思います。

 1.安売りをしていない
 2.品質を重視し、付加価値の高いサービス提供をしている
 3.解約はほとんどないつまり・・・お客様が離れない
 4.自分の商品を持っている・・・合い見積りの時も負けない
 5.将来のお客様のために、ちゃんと種まきをしている

ということになります。

司会:  お二人のお話から、やはりキーワードは「商品化」ということになるのでしょうか?

竹内:  はい、見えないサービスを提供しているからこそ商品化、すなわちモノ化が必要なのです。それが事務所の差別化になり、新規顧客の獲得や顧問料のアップにつながっていくのです。もうひとつ付け加えれば、このモノ化することによって、先程お話したコミュニケーション力のアップにもつながるんです。

司会:  サービスをモノ化し、コミュニケーション力をつけ、お客様のニーズに応えていく。そうすることが、会計事務所の経営に必要ということですね!

竹内:  その通りです。そうすれば明るい未来が見えてくる。私は競争が激しくなった今だからこそ、逆にチャンスだと思っているんです。少しの勇気を持って一歩を踏み出せば、確実にお客様は反応します。その一歩を手助けできるように、今後も情報発信していきたいと思っています。

町田:  私も、選ばれる会計事務所づくりのお手伝いを少しでも出来ればと思っています。


 最後までお読みいただきありがとうございます。