コンサルティング情報

第5回 「勝ち組事務所」と「負け組事務所」

 今回は、「日本の中小企業を元気にするためには、会計事務所・税理士事務所が元気にならなければならない」という信念のもと、日々のコンサルティングを行なっている、竹内実門が担当させていただきます。

 現場に近いコンサルティング情報や、いくつかの業種に特化した情報をお届けするこの「現場コンサルタントの生の声」ですが、今回は、これからの会計事務所経営についてお話させていただきます。

 最近の会計事務所・税理士事務所業界の現状を一言で表すと、いよいよ本格的な競争が激化し「勝ち組」と「負け組」に分かれてきているといえます。平成14年の法改正から既に競争は始まっていましたが、その頃と比較すると競争の質に大きな変化が見られています。

 ここ数ヶ月の象徴的な出来事をピックアップすると...

 ・ ○&○社が税理士事務所をFC展開。
 ・ 大手生命保険会社が会計事務所とのパートナーシップ構築のための専門部隊を設立。
 ・ △△経営が中国に計算センターを設立し、会員向けに記帳代行サービスを開始。
 ・ ◇◇税理士法人がASPを利用した「****会計」サービスを開始。
 ・ ライブドアが230億円で弥生会計を買収・・・etc.

 このように、今まで考えつかなかったプレイヤーが参入してきていること、それも全く価値観の違う相手が競争の対象になってきたという点が目に付きます。これが意味しているところは、新規参入企業・大手事務所の囲い込み戦略です。

 会計事務所というのは様々な顧客の情報を持っています。顧問先の会社がどれだけ儲かっているか、さらにそこの社長の個人資産はどれくらいあるか...。こういった情報は、それぞれのビジネスを行なっている企業(不動産、生保、銀行、証券など)にとっては、のどから手が出るくらい欲しい情報です。これらを有効に活用する手立てを、会計事務所は持っていない(もしくはできない)ということに、新規参入者や大手事務所が気づいたということになります。

 この「囲い込み戦略」は二つのステップに分けられます。まず大手事務所や新規参入者が会計事務所と連携する第一ステップ、その間に顧問先と結びつき、会計事務所を越えて取引を開始する第二ステップです。狙いはあくまでも顧問先の財務データですから、どれだけ多くの顧問先を有するか鍵になるわけです。つまり、小規模の会計事務所は顧問先を失う可能性がかなり大きいといえるでしょう。

 もちろん全ての大手事務所・新規参入者が協業する会計事務所の顧問先を取るとは限りません。しかし、顧問先の立場からすれば、全国ブランドで安心感があり、「経営に関する様々な情報」や「損をしない対処法」などを提供してくれるのなら、迷わず全国ブランドを選択することは想像にたやすいことでしょう。

 このような状況下で会計事務所の緊急の対処策としては次の2つになります。

 1.顧問先との関係を強化すること
 2.職員を戦力化すること

 これを行なえば、仮に小さな事務所でも生き残りはもちろん業績アップすることも不可能ではありません。

 それぞれについてもう少し掘り下げて話します。社会情勢・経済環境が行き先不透明な今、顧問先が会計事務所に求めるのは、

 1.複雑化する「経営」に対する指南役
 2.先が見えない「経営」の水先案内人
 3.「経営判断」を行なうための相談相手

といった役割です。

 つまり、単なる税務・会計(正確にできて当たり前)だけでなく「経営全般をサポートしてくれる」会計事務所・税理士事務所を求めています。言い換えれば我々と同じ「経営コンサルタント」なのです。今までのような単なる顧問ではなく、自分が困っていることに応ええてくれる、課題解決型の支援が必要になります。このように顧問先との関係性をまず強化しなくてはなりません。

 次の「職員を戦力化する」です。会計事務所の課題の全てはこれで解決出来ると言っても過言ではありません。あまり知られていませんが、会計職員の仕事の大半は試算表を作るための入力業務です。お客様はデータ入力自体に顧問料を払うのではなく、完成した試算表とそれをもとにしたアドバイスにお金を払っているのです。ですから、入力業務のような定型業務は専門知識を持った職員さんがやってはいけないのです。

 そのための方策としては2つの方法が考えられます。一つはパートさんを雇って入力専門部隊を作る。もう一つはアウトソーシングする。しかし、パートさんを雇って専門部隊を作るのは手間もコストもかかります。どうしても簿記の知識をもった方を雇おうとすると集めるのも大変だし、やり方を教えるのも結構時間がかかってしまいます。そうなると後者の選択肢が有効になります。現在のIT環境の進歩はすさまじいものがありますし、入力を専門にやっているので精度もスピードもレベルが高いということが言えます。

 業界は激動期ですが、当然中には確実に業績をあげている事務所も存在します。そのような事例をルール化し、「2005年 勝ち組事務所の経営戦略大公開」と題した勉強会を2月に実施いたします。ご興味のある方は是非ご参加いただきたいと思います。