コンサルティング情報

第3回 社会保険労務士事務所の営業

 今回は私、桜井淳が担当させていただきます。

 現場に近いコンサルティング情報や、いくつかの業種に特化した情報をお届けするこの「現場コンサルタントの生の声」ですが、今回は、私が中心にお手伝いさせていただいている「社会保険労務士事務所」についての情報をお届けします。

 最近、私が社会保険労務士の先生から受ける相談内容として最も多いのは、「営業がうまくいかない」というものです。つまり、提供できるコンサルティング商品はあるけれど、いくら営業をしても受注に結びつかない。そこで、営業に関する社会保険労務士向けのセミナーや勉強会などにも参加してはいるけれど、なかなか思うように行かない、というものです。

 これらの社会保険労務士の先生のお話をお聞きしていると、ある共通点が存在することに気が付きます。それは、営業活動の前に行うべき「見込客づくり」のステップが、きっちりと実行されていないということです。中でも、「ターゲティング」に対する意識が非常に低いのです。

 例えば、先日お手伝いさせていただいた社会保険労務士の先生は、「評価制度の構築」をコンサルティング業務として拡大していきたいと考えていました。

 これまでの実務経験は1社で、従業員数30名のスポーツクラブの「評価制度の構築」をサポートした経験がありました。

 この社会保険労務士の先生が実際にご自身で行っていた活動は次のようなものでした。

 商工会の会員企業のリストを入手したり、企業一覧の入った市販のCD―ROMを購入し、これらの企業に片っ端からDMを送る。「評価制度を見直しましょう」と。しばらくたっても反応がないので、「やっぱりDMは効果がないな」とあきらめて、直接電話を掛けたり、訪問したりしていたのです。結局1社も受注できず、悩んで私のところに相談してきたのでした。

 ターゲティングにはたくさんのやり方がありますが、このケースでは次のように進めました。簡単に言うと、スポーツクラブで一度実務を経験しているのだから、これを活かしましょうということです。

 つまりこれまでの成功事例を参考に、業種、業務内容、企業規模、従業員数、業績などの企業データから同じような提案ができそうな企業をターゲットにするということです。あわせて、実務を行ったスポーツクラブで、どのような課題があったか、進めていくのにどのような問題が発生したか、評価制度を見直した後の社長や従業員の反応はどうか、業績や現場のモチベーションはどのように変わってきたかなど、実務を行うことで得られた情報を整理してもらいました。

 要は、DMにしても、直接電話をかけるにしても、ただ漠然と「○○はどうですか?」といったような一般的な提案をするよりも、実際に経験したことを織り交ぜながら、「御社と同じような会社ではこのような課題があり、このような方法で解決しましたが、御社はいかがですか?」というようにアプローチした方が、当然ターゲット企業に他人事ではなく、自分事として受け取ってもらいやすく、反応もいいわけです。つまり、ターゲットを絞り込むことで、一般的な提案ではなく、よりそのターゲットに合った、掘り下げた提案を行うことができるわけです。

 このケースでは、収集した各種リストの中から、同じ規模のスポーツクラブをターゲットに選定し、実務で得られた情報を盛り込んだDMを送りました。これまで、DMは数百社に送っていましたが、反応すらゼロでした。今回は約50社に送りました。

 さあ結果的にどうなったか? 最終的には3社から同時期にコンサルティングの依頼を受けました。本当はもっと受注できたのですが、事務所の規模が大きくなかったこともあり、業務を確実に回すためには、直後に受注できるのは3社が限界だったのです。

 社会保険労務士に限らず、法人営業において受注がうまくいかないケースというのは、そもそもターゲティングが間違っていることがよくあります。つまり、ニーズのない企業に対してアプローチしているということです。

 営業は、訪問件数が多ければ多いほど受注件数が多くなるのは間違いありません。しかし、そもそもニーズのない企業に対する訪問件数を増やしても全く意味がありません。時間も無駄ですし、断られ続けますので営業マンのモチベーションも下がります。

 したがって、効率的かつ効果的に受注可能性が高い企業を最初から狙いすましてアプローチを行い、ニーズのある企業に対する訪問件数を上げることが、成功のポイントとなるわけです。

 皆様の会社の営業部門においてはいかがでしょうか? 今一度「ターゲティング」について検討されることをオススメします。