コンサルティング情報

第1回 社会保険労務士事務所の顧客開拓

 船井総研の桜井淳です。

 現場に近いコンサルティング情報や、業種に特化した情報をお届けするこの「現場コンサルタントの生の声」ですが、私が中心にお手伝いさせていただいている「社会保険労務士事務所」についての情報をお届けします。

 私は、社会保険労務士事務所の業績アップに向けて、主に「コンサルティング力の強化」についての支援を行っています。コンサルティング力は「受注スキル」と「コンサルティングスキル」の2つに分解することができ、今回はそのうち、「受注スキル(仕事を取る力)の強化」についてお伝えしたいと思います。

 「仕事を取る力の強化」とは、どのようにすればより多くの法人顧客を開拓でき、仕事を受注できるか、ということです。よってこれは、何も社会保険労務士事務所に限った話ではなく、一般企業における新規法人顧客開拓強化のための営業マン育成と同じであると考えていただければよいでしょう。

 社会保険労務士はご存知のとおり専門知識を持った国家資格者ですが、顧客開拓が苦手なため仕事をあまり受注できず、専門知識を活かせていない方が非常に多いのが現状です。このような社会保険労務士事務所が、より多くの企業から仕事を受注していくためには、次の3点がポイントとなります。

1.商品化
2.見込客づくりのための仕掛け
3.コンサルティング営業の実践


●ポイント1:商品化

 多くの企業の営業マンが商品を販売しているのと異なり、社会保険労務士事務所が顧客企業に対して提供しているサービスには、形がありません。形がないということは、それだけで顧客にとってわかりづらいという難点があります。ところが、多くの社会保険労務士は、形がないものを形がないまま顧客に提示しようとするため、結果的に受注できないケースが多いのです。

 例えば、「評価賃金制度の構築」に関するコンサルティングを行っている社会保険労務士事務所は多いのですが、大半の方は顧客に対して「評価賃金制度を見直しましょう」と口頭か、せいぜい1枚の資料だけでお話しされます。しかも、見直しの必要性が不明確であったり不足していたりします。また、「見直すとどのようなものになるのか」が説明されたわかりやすい資料もほとんどの場合存在しません。

 つまり、ここでのポイントは、提供するサービスをいかに顧客にとってわかりやすい形にするか、いかに自事務所の特徴(強み)を打ち出すかということになります。これを実現するため私が支援先で行っていることは、得意分野の明確化です。

 社会保険労務士事務所が提供しているサービスのうち、顧客に支持されたり、評価を受けているものを一番商品とし、内容と流れを洗い出し、整理した上で、顧客にとってわかりやすい資料(形)になるよう、サポートしています。

 これだけでも、顧客の理解度は格段に上がり、受注できるケースが圧倒的に増えるのです。


●ポイント2:見込客づくりのための仕掛け

 見込客づくりを行わずに実行する営業ほど無駄なことはありません。これは企業の場合も同じなのではないでしょうか? 新規開拓で実績をあげている営業マンは、見込客づくりのフェーズと営業活動のフェーズを分けて、取組を検討し、実践しています。一方で、なかなか実績のあがらない営業マンは、やみくもに頑張って営業活動を行っているのをよく目にします。社会保険労務士事務所もまったく同じです。

 セミナー開催、ホームページ、メールマガジン、事務所通信、小冊子など、社会保険労務士事務所が実行する見込み客づくりのための仕掛けには色々ありますが、仕掛けを打つにあたって重要なのはターゲティングです。

 例えば、コンサルティング商品の案内をダイレクトメールで企業に送付する際、大半の方はターゲティングをほとんどしないまま送付しています。「ターゲットを絞るなんてとんでもない。どんな企業でもいいから仕事が欲しいんだ!」と多くの社会保険労務士事務所の方が言います。しかし、誰にでもあてはまる内容のダイレクトメールというものは、実は誰にもピンとこないケースが多いのです。内容を特定の顧客に絞り込むことで反応が良くなるのです。

 私は支援先で、まずは誰にサービスを提供したいのかを検討するサポートをし、次に様々な仕掛けをターゲットに合わせた形で、一緒になってつくっています。これを実行することで、顧客からの反響が圧倒的に増えるのです。


●ポイント3:コンサルティング営業の実践

 見込客づくりを行ったら、次は主に反響のあった企業に対する営業活動の実践です。社会保険労務士事務所の営業の場合、「企業の課題を発見し、それを我々の事務所は解決できます」というソリューション営業であるべきなのですが、ヒアリングがうまくできなかったり、単なる商品説明に終わってしまう方が大半です。自分ばかり話している営業マンがなかなか実績あがらないのと同じですよね。

 ここでは私は営業同行という支援を行っています。一般企業での営業力強化支援の際も同じ手法を取っているのですが、社会保険労務士事務所が営業活動を行う際に、実際に現場に同行しています。支援している社会保険労務士事務所に私の名刺をつくってもらい、現場に行って社会保険労務士が営業をしているのを隣で見聞きするわけです。逆に、私が営業をし、隣で社会保険労務士に見ていただくこともあります。

 これを実行することにより、現場での社会保険労務士の営業活動の問題点を私が発見できますので、どこをどう改善すればよいのかのポイントが非常に明確になります。また、私の営業手法を社会保険労務士が見ることにより、どのようにすれば良いのかを肌で感じていただくことができるのです。

 特に現場での対応は、やり方を教えられただけではなかなか改善していくことは難しいため、営業同行という手法は非常に有効です。現に、同行を繰り返すことにより、社会保険労務士の営業が最初の頃とは比べ物にならないくらい上手になっていることを実感できるため、コンサルタントとしても非常にやりがいがあります。


 以上、社会保険労務士事務所の顧客開拓についてお伝えしてきましたが、一般企業での営業手法と共通する点も多いことがおわかりいただけたと思います。ぜひこの機会に自社の顧客開拓の手法について、再確認してみてください。