財務報告とは・・・


財務報告とは?


財務情報と非財務情報

 会社が会社外部に開示する情報の中心は、やはりなんといっても、財務情報を核とした財務報告といえます。

 ここで、「財務報告」とは、「財務諸表及び財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項等に係る外部報告」と定義されます(財務報告に係る内部統制基準の定義)。

 「財務報告」と聞いてすぐに思いつくのは、B/SやP/Lといった財務諸表でしょう。もちろん注記情報も財務諸表に含まれます。財務諸表が財務報告の中心にいることは間違いありません。

 ただし、注意していただきたいのが、上記の定義では「財務諸表」と「財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項等」を区別しているという点です。この「財務諸表の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項等」には、「財務諸表に記載された金額、数値、注記を要約、抜粋、分解又は利用して記載すべき開示事項」と「その他財務諸表の作成における判断に密接に関わる事項」が含まれます(財務報告に係る内部統制実施基準)。例えば有価証券報告書の記載事項でいうと、前者には、「主要な経営指標等の推移」や「業績等の概要」のうち財務諸表の表示等を用いた記載が該当し、後者には、関係会社の判定、連結の範囲の決定、持分法の適用の要否、関連当事者の判定等を記載した「関係会社の状況」や「関連当事者の注記」等が該当することとなります。

 一方、非財務情報は財務とは関連性を有しない情報です。新規事業への進出、新商品の開発、特許の取得、店舗の出退店、取締役の選解任、リスク情報等が該当します。


ディスクロージャーと財務報告

 ディスクロージャーとは、会社の内部情報を外部の利害関係者に伝達することをいいます。そこで、伝達される情報は財務情報だけでなく非財務情報も当然に含まれます。すなわち、財務情報を核とする財務報告はディスクロージャーに包含される関係にあるといえます。

 ディスクロージャー情報の中でとりわけ財務報告が重視されるのは、一般に公正妥当と認められる会計基準により算出された数値をベースとしていることから、利害関係者が他社比較、経年比較等の分析を実施することが容易であり、投資判断や信用情報の判断に資するという点が指摘できるといえます。


3つの財務報告

 さて、財務報告は、その求められる法令等の違いにより、大きく3つに分けることができます。金融商品取引法に基づく財務報告、証券取引所の有価証券上場規程等の規則に基づく財務報告、会社法に基づく財務報告の3つです。とりわけ、金融商品取引法に基づく財務報告は企業内容等開示制度とも称され、情報の詳細さという点では群れを抜く内容です。また、証券取引所の規則に基づく財務報告は適時開示(タイムリー・ディスクロージャー)の中に位置付けられており、開示のスピードはダントツです。一方、会社法に基づく財務報告は、経営者が株主に対して負う説明責任(アカウンタビリティ)の一環として説明されることもあります。

 それぞれについて、代表的な報告書を列挙すると次のようになります(各報告書には一部に非財務情報も含まれています)。
 
根拠法令等 代表的な報告書
金融商品取引法 有価証券届出書、有価証券報告書、四半期報告書
証券取引所の規則 決算短信、四半期決算短信
会社法 事業報告、連結計算書類、計算書類等

 もっとも、これらの情報は、それぞれがばらばらに作成されるのではありません。共通の情報源から効率よく作成していく必要があります。いわば、ディスクロージャーという木が、会社の経済活動という根っこをベースとして、幹が伸びた先に3本の枝が分かれているイメージといえるでしょう。根っこが同じである以上、各法令等や会計基準の理解に加え、報告書間の相互の関連性を理解することが、ディスクロージャー実務において重要となってきます。