財務報告とは・・・


財務報告実務担当者に求められるスキルとは?


財務報告実務を巡る最近の動き

 近年、財務報告実務の周辺で、相次ぐ重要な制度改正が行われています。平成20年4月1日以後開始する事業年度から財務報告に係る内部統制報告制度がスタートしたことにより決算・財務報告プロセスに係る内部統制が強化され、従来にも増して数値の人力誤りや記載ミス等が「虚偽記載」としてクローズアップされる環境にあります。

 また、四半期報告書については45日以内の提出が必要とされました。決算短信にいたっては、30日以内の開示が望まれています。

 さらに、2015年を目処とするIFRS(国際財務報告基準)の全面適用に向けカウントダウンが開始され、IFRS(国際財務報告基準)へのコンバージェンスを目的として、各種の会計基準が改正されたり、新会計基準が公表・施行されています。

 このように、決算の適正化・早期化が要請される一方で、会計基準の高度化・複雑化が進行する中、上場企業の財務報告を担うこととなる経理部門では、こうした会計基準に対応しながら決算書を作成していくだけでも厳しいのが現状と言えます。特に新興企業においては、上場後の財務報告書類の開示義務を全うできていないところが少なくなく、大企業でさえ、訂正報告書を提出するケースが後を絶ちません。


スキル不足、人材不足が財務報告の障害に

 では、何故上記のようなことが起こっているのでしょうか。その背景には、企業側の教育体制の不十分さに加えて、社内における財務報告ノウハウの偏在があるものと思われます。大企業においてさえ、財務報告に関する体系的な教育体制が整備されているところは多くありません。また、会社の規模が大きくなるほど、財務報告に関する業務が分野別に細分化される傾向が強いため、財務報告に関する業務を全体的に俯瞰できる人材は、長年の人事異動を通じて複数の業務を担当しない限り育ちにくいという問題もあります。

 このため、大企業にあっても、財務報告書類全体を通してチェックできる社員はごく少数のベテランに限られる傾向が強く、仮にそのベテラン社員が退職したり、病気で長期間会社を離れた場合には、適切な財務報告ができなくなる恐れがあります。


財務報告担当者に求められるスキルとは?

 財務報告実務担当者は、(1)企業の業績動向を把握し、(2)その状況を適切に開示書類に落とし込むと同時に、(3)トップ・マネジメントの経営方針やコーポレート・ガバナンス(企業統治)の状況等、会社全体を視野に入れた投資情報を、財務報告書類として総合的に統合し、証券市場における株主・潜在的投資家・証券アナリスト・マスメディア等に対して発信していかなければなりません。

 また、財務報告にあたっては、定性的な情報(企業の業績動向等を文章で説明したもの)や設備の状況、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の状況など、さまざまな情報の開示が求められることから、財務報告実務担当者には、(1)各財務報告書類の目的を理解し、作成上の留意点(作成要領)のレベルで配慮が行き届く、(2)各財務報告書類に用いられるデータの関連性(共通点、相違点等)を理解している、(3)決算・財務報告プロセスに必要な内部統制上の諸条件をクリアすることができる、(4)これらの要素を広範囲かつ体系的に理解している―――といった能力が求められることになります。

 新興上場企業や比較的規模の小さい上場企業では、財務報告実務に関する一連の流れを、一人もしくはごく少人数で担うことが少なくなりません。一方、大企業においては、すべてを一人でこなすことは不可能ですので、何人ものチームで作業をすることになります。しかし、一人ひとりが、自分の担当部分が財務報告書類の全体のうちのどの部分に当たるのかを理解しながら作業を進めなければ、膨大な財務報告書類が首尾一貫した情報となりません。

 したがって、財務報告担当者は、金融商品取引法、会社法金融商品取引法、会社法、証券取引所の適時開示という財務報告の3つの領域を学び、各財務報告書類間の連携や作成上の留意点、全体像等が体系的に身に付ける必要があると言えるでしょう。