財務報告関連実務ニュース


回収可能性適用指針の“合理的な説明”は開示しない方向
(17/2/6)

 企業会計基準委員会(ASBJ)が検討している税効果会計に関する適用指針における開示事項が分かった。現行の開示項目に加え、「評価性引当額の内訳」などを追加する予定だ。また、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」における合理的な説明に関連する開示については必要ないとの判断を示しているが、反対意見も寄せられている。今後、財務諸表作成者や監査人などから意見を聴取し検討を進めていく考えだ。

 企業会計基準委員会は、現在、日本公認会計士協会の税効果会計に関する実務指針の移管作業を行っているが、大きな論点の1つとなっているのが開示の取扱いである。

 このほど同委員会の事務局がとりまとめた開示項目は、現行制度で求められている(1)繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳、(2)税率差異の注記、(3)決算日後に税法の改正があった場合には、その内容及びその影響に加え、(4)評価性引当額の内訳(将来減算一時差異の合計額と税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額、評価性引当額に重要な増減が生じている場合はその内容)、(5)税務上の繰越欠損金に関する注記(税務上の繰越欠損金及び繰延税金資産の繰越期限別の金額、特定の連結会社に重要な税務上の繰越欠損金が生じている場合に当該税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の金額とその認識の根拠)、(6)税法の改正により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨及び修正額を追加事項としている。

 また、注目すべき点の1つは、「合理的な説明」を開示する否かだ。同委員会では平成28年3月に企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を公表。同適用指針では、例えば、「分類3」に該当する企業であれば、5年を超える見積可能期間であってもスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠を持って説明する場合には、回収可能性があるものとするなど、柔軟な取扱いが容認されている。

 この合理的な説明が必要とされる取扱いについては、分類における原則とは異なる繰延税金資産の計上に関する取扱いであるため、分類が開示されない場合、合理的な説明が必要とされる取扱いを適用する理由を開示しても有用とはならないとの理由で事務局案では開示事項とはしていない。しかし、その一方では繰延税金資産の金額に重要性がある場合には開示すべきなどの反対意見も寄せられている。


財務報告関連実務ニュース一覧へ