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計算書類の「関係会社との取引高」注記の留意点
(16/10/13)

 会社法の計算書類の損益計算書に関する注記として、「関係会社との営業取引による取引高の総額及び営業取引以外の取引による取引高の総額の記載」がある。この関係会社との取引額を会社に開示させる趣旨は、関係会社との取引により単体の損益計算書の数字が膨らんでいることを株主に示し、株主が決算内容を正しく理解するのを手助けするのが目的である。

 この注記は会社計算規則104条に基づくもので、同条には「損益計算書に関する注記は、関係会社との営業取引による取引高の総額及び営業取引以外の取引による取引高の総額とする。」と記載されてある。この文言を素直に読むと、関係会社の取引を「営業取引」「営業取引以外の取引」の2つに区分して、その総額を開示すれば良いように思える。
 しかし、例えば「営業取引」といっても、関係会社からの仕入れと関係会社への売上という逆方向の取引があり、それらを単純に合算しても、株主にとって意味のある数字にはならないという問題がある。そこで実際には「営業取引」「営業取引以外の取引」の内訳(売上高、売上原価等)を明示して開示するのが通常だ。

 実務上問題となるのは、関係会社が人件費や運賃等を立替払いした場合に、それを関係会社との取引に含めるかどうかである。関係会社との間で「立替払いの精算」という取引は発生するものの、実質的には自社が関係会社を通じて外部に支払ったと考えられるため、それを関係会社との取引に含めるべきかどうか判断に迷うところだ。正解はない以上、各社が関連当事者との取引の開示との整合性に配慮しつつ状況に応じて判断することになる。

 なお、求められているのは「子会社との取引」ではなく「関係会社との取引」なので、親会社や関連会社など子会社以外の関係会社との取引を拾い漏れしないように注意したい。


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