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「経営方針」は決算短信に開示せず
(16/03/24)

 東京証券取引所は金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」の会合で決算短信の見直しを行う方針を明らかにしている。今回の見直しは、昨年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2015において、会社法、金融商品取引法、証券取引所上場規則の開示の重複排除などについて検討することとされていたもの。これを受け、麻生金融担当大臣が金融審議会に対して、昨年10月に企業の情報開示のあり方等に関して検討するよう諮問していた。

 東京証券取引所が明らかにした決算短信の見直し案は、(1)企業と投資家の建設的な対話の促進に向けた効果的かつ効率的な情報開示の実現、(2)各開示書類の目的を踏まえた開示内容の整理、(3)決算短信については、法定開示の「確報」に対する「速報」としての位置づけで整理――するとの方針のもと、記載事項の整理などを行うとしている。

 原則として、決算短信については、速報情報として必要不可欠な「サマリー情報」「経営成績等」「財務諸表」に限定する。これまで開示を行ってきた「経営方針」や「継続企業の前提に関する重要事象等」については、有価証券報告書に記載されているため、今後は記載不要とする。ただし、「会計基準の選択に関する基本的な考え方」など、上場政策上の目的で決算短信において記載を求めている情報は、例外的に今後も記載を求める。

 また、「経営成績等」については、現行、分析的な記載を求めているが、速報的な要素の観点から概況の記載にとどめる。「財務諸表」に関しては、財務諸表の精査が完了していない場合で、これを開示しなくても投資判断を誤らせない場合であれば「財務諸表」を添付しなくてもよいとの取扱いとする。開示が可能となった時点で追加すればよいとのスタンスだ。これらの取扱いの見直しにより、かなりの事務負担の軽減が図られることになる。経営者サイドとしても、速報情報は決算短信、確報情報は有価証券報告書に記載するとのすみ分けをすることが可能になる。

 そのほか、金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」では、有価証券報告書の開示内容の整理などについても検討を行っている。

 現在、決算短信に記載されている「経営方針」については、前述した通り、開示内容を整理した上で有価証券報告書のみに記載することになる。具体的には、「対処すべき課題及び経営方針等」として、現行の対処すべき課題に加えて経営環境及び経営方針・戦略等の記載を求める。

 「業績等の概要」に関しては、MD&A欄と統合した上で、(1)経営成績等の状況の概要、並びに、(2)経営成績等の状況の分析・検討内容(経営成績はセグメント別)及び経営成績等に重要な影響を与えた要因についての経営者の視点による認識と分析の記載を求めることで、開示項目を合理化する。また、有価証券報告書の中で記載内容が重複している「新株予約権等の状況」「ライツプランの内容」「ストックオプション制度の内容」の各欄を統合し、開示項目を合理化する方向だ。同審議会では、平成28年3月中にも報告書を取りまとめる方針である。



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