第 I I 章 『生前贈与』成功のための原則
 
 
Q9 両者の合意が贈与成立の条件
 
Question
 “贈与”というのはあげる人が思っただけではダメだと聞きました。なぜでしょうか。また、どうしたら税務上も含めて成立するのでしょうか。
 
ポイント
(1) 贈与は双務契約により成立する
(2) 贈与成立の時期は方法により異なる
(3) 贈与契約書によって、贈与を立証する
(4) 連年贈与とならないように注意する

Answer
【1】 贈与は双務契約

 贈与とは「ただでものをあげること」というのが私たちの常識です。ところが民法上は、「贈与の当事者同士が贈与契約を交わすこと」をいいます。つまり、一方が自分の財産を相手方に「ただであげますよ」といい、相手方が「はい、いただきましょう」といってはじめて成立するわけです。

 当然、どちらかが知らないといったことはあり得ません。相続税の調査のときに「あなたはお父さんから毎年100万円贈与を受けていたのですか?」と聞かれて、「いいえ、そんな話は聞いていませんでした」といえば、贈与契約は成立していないわけで、その預金は「お父さんのもの」ですから、相続財産に含めて申告しなければならないことになります。

【2】 贈与の立証は名義の変更

 贈与は口頭でも書面でもできますが、ものの引渡しが条件です。所有権の移転登記又は登録の目的となる不動産や株式の贈与がいつあったかについては、一般的にその登記や登録のあった日により判定することになります。不動産について、贈与契約だけを公正証書で締結してそのまま登記せず、かつ負担すべき贈与税を払っていないような場合は、「贈与は契約により成立しており、かつ、贈与税は既に時効だ」と主張しても裁判では認められません。所有権移転登記を行った日に贈与があったものとされています。

 これらをまとめると次のようになります。

口約束 履行日
書面による贈与 契約書作成日(登記・登録等が必要なものはその時)
贈与日が不明 名義変更時
停止条件付贈与 条件成就の時
農地等の贈与 農地法の許可又は届出の発効日

【3】 贈与契約書を作成

 お互いの意思を確認するため、贈与する際には贈与契約書を作ります。その契約書に贈与した人ともらった人が署名押印しておけば、贈与事実の強力な証明になります。契約書に公証役場で確定日付をもらっておけば、時期についてもより確実になります。

【贈与契約書モデル】
 
贈与契約書
 
贈与者 山田 太郎 と受贈者 山田 謙二郎 との間で下記のとおり贈与契約を締結した。
  
     第1条  山田 太郎は、その所有する下記の財産を山田 謙二郎に贈与するものとし、山田 謙二郎はこれを受諾した。
  株式会社 山田製作所の株式  1,000株
 
     第2条  山田 太郎は、上記財産を平成  年  月  日までに
山田 謙二郎に引き渡すこととする。
 
上記契約の証として本書を作成し、贈与者、受贈者各1通保有する。
 
平成  年  月  日
 
贈与者(住 所) ○○市×区○○町△△−××−○○
     (氏 名)
 
山田 太郎    印
 
受贈者(住 所) ○○市×区○○町△△−××−○○
     (氏 名) 山田 謙二郎   印
 

【4】 連年贈与とならないように注意する

 毎年1つの契約に基づく継続的な贈与を続けていくと連年贈与とみなされて、一括して贈与税がかかることがあります。そうならないように、贈与にもちょっとバリエーションをつけてみましょう。例えば、(1)毎年違った金額、(2)毎年なるべく違った財産、(3)毎年違った月日で贈与するのです。【3】で述べたように、毎年贈与契約書を作るのも忘れないでください。

 

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