目次 VI-3


3 延滞税の計算期間等の改正
(平成26年12月12日最高裁判決を踏まえた改正)

 延滞税は、一種のペナルティであり、通常は、法定申告期限の翌日から実際の納付日までの日数に応じて日割計算されますが、今回の税制改正では、一定の場合に延滞税を課さない措置が設けられます。

【1】概 要

 この改正の発端となった平成26年12月12日最高裁判決(納税者勝訴)の事実関係は、(1)納税者が法定納期限内に申告及び納付(100)した後、(2)土地の評価に誤りがあったことを理由とする更正の請求に対して税務署長が減額更正をし(100→50)、その後、(3)税務署長が土地の評価に誤りがあったとして増額更正(50→80)をしたというものです。

 このケースにおいて課税庁は、増額更正による増差税額について延滞税が発生すると主張していましたが、最高裁は、更正による税額が当初申告に係る税額を超えていないことや減額更正と同一論点で増額更正されたという事情の下では、増差税額に係る延滞税は発生しないと判断しました。

 この最高裁判決を受けて、国税庁は、同一論点で増額の再更正がされる等した過去の同種事案について延滞税を還付する手続を進めています。


【2】改正案の概要(事例で解説)

 申告(100)をした後に減額更正(100→60)がされ、その後、更に増額更正又は修正申告(60→130)があった場合における延滞税と加算税について、次のような措置が講じられます。


(1)延滞税
増額更正等により納付すべき税額
(70)
下記以外の部分
(30)
延滞税が課されます。
その「申告により納
付すべき税額」(注1)
のうち、減額更正前
に納付がされた部分
(40)
その申告により
納付すべき税額
の納付日から増
額更正等までの
(注2)
延滞税が課されないこととされます。
(注1)  「申告により納付すべき税額」のうち、未納の税額については、減額更正(減額更正が納税者からの更正の請求に基づきされたものである場合にあっては、その減額更正がされた日から1年を経過する日)までの間、延滞税の対象とされます。
(注2)  減額更正が「職権による減額更正」の場合です。なお、「納税者からの更正の請求」に基づきされたものである場合にあっては、その減額更正がされた日から1年を経過する日までの期間については、延滞税が課されます。

(2)加算税
増額更正等により納付すべき税額
(70)
下記以外の部分
(30)
加算税が課されます。
その期限内申告があった場合において、その申告税額に達するまでの部分に限ります。
(40)
加算税が課されないことが法令上明確化されます。

適用期日 (1)の改正は、平成29年1月1日以後の期間に対応する延滞税について適用され、(2)の改正は、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

 

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