目次 IV-1


IV.土地・住宅税制はここが変わる!

1 空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の創設

 空き家の最大の要因である「相続」に由来する古い家(除却後の敷地を含みます。)の有効活用を促進し、空き家の発生を抑制するための新たな制度が創設されます。放置された空き家による周辺の生活環境への悪影響を未然に防ぐ観点から創設されるものです。

 現在、居住用家屋を譲渡した場合には、一定の要件のもとで譲渡所得の計算において3,000万円の特別控除が認められています。しかし、親が生前一人で住んでいて、相続した後、空き家となった住宅やその敷地の譲渡については、特別控除を適用することはできません。

 そこで、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(一定の要件を満たす空き家等)の譲渡について、3,000万円の特別控除の特例が創設されます。

空き家に係る譲渡所得の特別控除(イメージ)
(平成28年度税制改正)参考資料丸数字3「その他の改正事項」(財務省資料)を基に作成

空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例の概要










被相続人居住用家屋及びその相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等で、次の(1)又は(2)の譲渡の要件を満たすもの。「被相続人居住用家屋」とは、昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除きます。)であって、相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋(被相続人以外に居住をしていた者がいなかったもの)をいいます(注1)
(1) 被相続人居住用家屋(次に掲げる要件を満たすものに限ります。)の譲渡又は被相続人居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地等の譲渡
相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
譲渡の時において地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合するものであること
(2) 被相続人居住用家屋(イに掲げる要件を満たすものに限ります。)の除却をした後におけるその敷地の用に供されていた土地等(ロに掲げる要件を満たすものに限ります。)の譲渡
相続の時から除却の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
相続の時からその相続の開始があった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡したものであること(注2)
・譲渡の対価が1億円を超えるものを除く(注3)

平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間の譲渡



確定申告書に、地方公共団体の長等の被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地等が上記(1)又は(2)の要件を満たすことの確認をした旨を証する書類その他の書類の添付をすること



相続により対象家屋等を取得した個人について、居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除が認められる
(注1)  配偶者等が同居していた家屋は対象にはなりません。
(注2)  この特例の適用が可能となる最も古い相続は、平成25年1月2日の相続開始分であり、同日から3年を経過する日は平成28年1月1日です。なお、改正法の施行日(平成28年4月1日)前の譲渡は対象となりません。
(注3)  対象家屋等の譲渡対価の額と、被相続人居住用家屋と一体として被相続人の居住の用に供されていた家屋又は土地等の譲渡対価の額の合計額が1億円を超える場合には適用はありません。

実務上のポイント
 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税の取得費加算)とは選択適用とされます。また、居住用財産の買換え等の特例との重複適用その他所要の措置が講じられます。

 

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