現行の制度では、引き続き課税事業者であった者が、高額資産の仕入れ等をした事業年度に、多額の仕入税額控除に係る消費税還付を受け、その後に免税事業者(又は簡易課税適用者)になった後にその高額資産を譲渡すれば、その譲渡に係る消費税等の納付を免れる(又は原則課税よりも少ない納付で済む)といったことが可能でした。このような方法を封じるために、次のような見直しがされます。 |
(1) |
事業者(免税事業者を除きます。)が、簡易課税制度の適用を受けない課税期問中に国内における高額資産の課税仕入れ又は高額資産の保税地域からの引取り(以下「高額資産の仕入れ等」といいます。)を行った場合には、その高額資産の仕入れ等の日の属する課税期間からその課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間においては、事業者免税点制度及び簡易課税制度は、適用しないこととされます。 |
(注) |
上記の「高額資産」とは、一取引単位につき、支払対価の額が税抜「1,000万円以上の棚卸資産」又は「調整対象固定資産」とされます。 |
(2) |
自ら建設等をした資産については、建設等に要した費用の額が税抜1,000万円以上となった日の属する課税期間からその建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間において、上記(1)の措置が講じられます。 |
適用期日 |
上記(1)、(2)の改正は、平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合について適用されます。ただし、平成27年12月31日までに締結した契約に基づき平成28年4月1日以後に高額資産の仕入れ等を行った場合には、適用されません。 |
実務上のポイント
調整対象固定資産(建物等一定の資産で税抜価格が100万円以上のもの)だけでなく、棚卸資産(商品、製品、仕掛品、半製品、原材料、貯蔵品等)で1,000万円以上のものも規制対象になったことに留意が必要です。 |
【現行法】 |
大規模法人がSPC(特別目的会社)を設立し、第1期に建物を建築・完成させる。第1期は、建物に係る消費税額2億円還付。第2期は、簡易課税制度を選択して、その建物を譲渡すると、建物売却代金のみなし仕入割合(建築業:70%)相当分の2.8億円が、課税仕入れがないのに控除可能。 |
【改正案】 |
高額資産を取得・建築後2期は、免税事業者となることはできず、簡易課税を選択することもできなくなる。第2期は、仕入税額控除がゼロなので、消費税額4億円の納付。 |
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