目次 VII-1


VII.その他の税制はここが変わる!

1 納税環境の整備

【1】財産債務明細書の見直し

 財産債務明細書について、次の見直しを行い、新たに、「財産債務調書」として整備されます。

(1)提出基準の見直し

 現行の提出基準である「その年分の所得金額が2,000万円超であること」に加え、「その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が3億円以上であること、または、同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の価額の合計額が1億円以上であること」が提出基準とされます。

現 行 その年分の所得金額が2,000万円超であること
 
改正案 (1)その年分の所得金額が2,000万円超であること
かつ
(2) その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が3億円以上であること、または、同日において有する国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の対象資産の価額の合計額が1億円以上であること

(2)記載事項の見直し

 現行の記載事項である「財産の種類、数量及び価額」のほか、財産の所在、有価証券の銘柄等、国外財産調書の記載事項と同様の事項の記載を要することとされます。

(注)  財産の評価については、原則として「時価」ですが、「見積価額」とすることもできることとされます。また、有価証券等については、取得価額の記載も要することとされます。

(3)過少申告加算税等の特例

 国外財産調書と同様、財産債務調書の提出の有無等により、所得税又は相続税に係る過少申告加算税等を加減算する特例措置が講じられます。

(4)その他

財産債務調書の提出に関する調査に係る質問検査権の規定が整備されます。
現行の財産債務明細書と同様、国外財産調書に記載した国外財産については、財産債務調書への内容の記載は要しないこととされます。
(注)  この場合、運用上、財産債務調書の備考に「国外財産調書に記載のとおり」と記載することとされます。
財産債務調書の記載に係る事務負担が過重なものとならないよう、運用上、適切に配慮することとされます。

適用期日 この改正は、平成28年1月1日以後に提出すべき財産債務調書について適用されます。


【2】マイナンバーが付された預貯金情報の効率的な利用に係る措置

 国税通則法が改正され、銀行等に対し、マイナンバー(個人番号及び法人番号)によって検索できる状態で預貯金情報を管理する義務が課されます。

 番号利用法の改正により、預金保険・貯金保険においてマイナンバーが利用できるようになります。社会保障給付関係法、預金保険・貯金保険関係法令の改正により、社会保障給付事務や預金保険・貯金保険事務において、マイナンバーが付された預貯金情報の提供を求めることができることとなります。

(注)  内閣官房から番号利用法などの関係法律の改正が一括法案として提出され、その施行の日から適用されます。


【3】税務関係書類に係るスキャナ保存制度の見直し

 国税関係書類に係るスキャナ保存制度について、次の見直しが行われます。

(1) 見直し
内容
スキャナ保存の対象となる契約書及び領収書に係る金額基準(現行:3万円未満)が廃止されます。
(2) 手続要件 重要書類(契約書・領収書等)について、業務処理後にスキャナ保存を行う場合に必要とされている関係帳簿の電子保存の承認要件が廃止されます。
 重要書類については、適正な事務処理の実施を担保する規程の整備と、これに基づき事務処理を実施していること(適正事務処理要件を満たしていること)がスキャナ保存に係る承認の要件とされます。
(注)  上記の「適正事務処理要件」とは、内部統制を担保するために、相互けん制、定期的なチェック及び再発防止策を社内規程等において整備するとともに、これに基づいて事務処理を実施していることをいいます。
(3) 電子署名要件 スキャナで読み取る際に必要とされている入力者等の電子署名が不要とされ、タイムスタンプを付すこととするとともに、入力者等に関する情報の保存が要件とされます。
(4) 大きさ情報・カラー保存要件 重要書類以外の書類について、スキャナで読み取る際に必要とされているその書類の大きさに関する情報の保存を不要とするとともに、カラーでの保存を不要とし、グレースケール(いわゆる「白黒」)での保存でも要件を満たすこととされます。

適用期日 この改正は、平成27年9月30日以後に行う承認申請について適用されます。

(注) 地方税関係書類についても同様に措置されます。


【4】地方税の猶予制度の見直し

 地方税法総則に定める猶予制度について、納税者の負担の軽減を図るとともに、早期かつ的確な納税の履行を確保する観点から、納税者の申請に基づく換価の猶予制度を創設するなどの措置が講じられます。その際、地方分権を推進する観点や、地方税に関する地域の実情が様々であることを踏まえ、換価の猶予に係る申請期限など一定の事項については、各地域の実情等に応じて条例で定める仕組みとされます。


【5】調査手続の見直し

 調査手続について次の見直しが行われます。

(1) 調査が終了した後において「新たに得られた情報」に照らし非違があると認めるときは再調査を行うことができる規定について、再調査の前提となる前回調査の範囲が「実地の調査」に限ることとされ、前回調査が「実地の調査以外の調査」である場合には、「新たに得られた情報」がない場合であっても再調査を行うことができることとされます。
(注)  この改正は、再調査の前提となる前回調査が平成27年4月1日以後に開始され、その前回調査後に行う再調査について適用されます。
(2) 複数の税務代理人がある場合の調査の事前通知について、納税者本人が代表となる税務代理人を税務代理権限証書に記載して定めたときは、これらの税務代理人への事前通知は、その代表となる税務代理人に対してすれば足りることとされます。
(注) この改正は、平成27年7月1日以後に行う事前通知について適用されます。


【6】期限後申告書が提出された場合の無申告加算税

 期限後申告書が提出された場合において、期限内申告書を提出する意思があったと認められるものにつき無申告加算税(地方税は、不申告加算金)を課さないこととする制度について、適用対象となる期限後申告書の提出期限が、法定申告期限から1か月以内(現行:2週間以内)に延長されます。

適用期日 この改正は、平成27年4月1日以後に法定申告期限が到来する国税・地方税に適用されます。


【7】電子情報処理組織による申請等の整備

(1)  電子情報処理組織により申請等を行う際に送信する電子署名及びその電子署名に係る電子証明書について、個人が、その申請等に係る開始届出等の際に行われた本人確認に基づき通知された識別符号及び暗証符号を入力して申請等を行う場合には、その電子署名及び電子証明書の送信を要しないこととされます。

(注) 本人確認は、次のいずれかの方法により行うこととされます。
   (1)携帯電話等を利用した音声通信認証による本人確認
   (2)電子署名及び電子証明書の送信による本人確認
   (3)税務署への来署時における税務署職員による本人確認


適用期日 この改正は、平成29年1月4日以後に電子情報処理組織により申請等を行う場合について適用されます。

(2)  電子情報処理組織により申請等を行う場合において書面により提出をする必要がある一定の書類については、スキャナによる読み取り等により作成した電磁的記録(いわゆる「イメージデータ」)を当該申請等に併せて送信することにより、書面による提出に代えることができることとされます。この場合において、その書類のうち法令の規定により原本を提出することが必要とされている書類については、税務署長は、確定申告等の期限から5年間(贈与税及び移転価格税制に係る法人税等については6年間、法人税に係る純損失等がある場合については9年間)、その内容の確認のためにその書類の提出等を求めることができることとされます。

適用期日 この改正は、平成28年4月1日以後に電子情報処理組織により申請等を行う場合について適用されます。

 

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