目次 VI-1


VI.国際税制はここが変わる!

1 外国子会社合算税制等の見直し

【1】外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン税制)の概要

 外国子会社合算税制は、我が国企業が軽課税国に実体のない子会社を設置することを通して税負担を不当に軽減する行為を防止するための制度です。具体的には、内国法人又は居住者に50%超保有され、かつ税負担割合が20%以下である外国子会社の所得が内国法人等の所得に合算されて課税されます。


【2】改正の概要

 日本企業の海外での健全な事業活動における税制面でのリスクやコストを低減し、海外展開を後押しするため、現状のビジネス実態を踏まえ、外国子会社合算税制が、次のように見直されます。

(1) 特定外国子会社等に該当することとされる著しく低い租税負担割合の基準(いわゆるトリガー税率)が20%未満(現行20%以下)に変更されます。
(2) 外国子会社合算税制の適用除外基準について、次の見直しが行われます。
 事業基準の判定における被統括会社の範囲に、特定外国子会社等が発行済株式等の5%以上を有する等の要件を満たす内国法人が加えられます。
 事業基準の判定における統括会社の要件のうち、二以上の被統括会社に対して統括業務を行っていることとする要件について、二以上の外国法人である被統括会社を含む複数の被統括会社に対して統括業務を行っていることに改められます。
 事業基準の判定における事業持株会社の要件に、統括会社の有する外国法人である被統括会社の株式等の帳簿価額の合計額の当該統括会社の有する全ての被統括会社の株式等の帳簿価額の合計額に対する割合又は統括会社の外国法人である被統括会社に対して行う統括業務に係る対価の額の合計額の当該統括会社の全ての被統括会社に対して行う統括業務に係る対価の額の合計額に対する割合が50%を超えていることが加えられます。
(注)  非関連者基準の判定上、卸売業を主たる事業として営む統括会社が内国法人である被統括会社との間で行う取引については、関連者取引に該当するものとされます。
(3) 適用除外基準の適用がある旨を記載した書面の添付がない確定申告書の提出があり、又はその適用がある旨を明らかにする資料等を保存していない場合においても、税務署長がその添付又は保存がなかったことにつきやむを得ない事情があると認めるときは、その書面及び資料等の提出があった場合に限り、適用除外基準を適用することができることとされます。
(4) 特定外国子会社等が子会社(持株割合25%以上等の要件を満たす法人をいいます。以下(4)において同じ。)から受ける損金算入配当等の額(その子会社から受ける配当等の額で、その配当等の額の全部又は一部がその子会社の本店所在地国の法令においてその子会社の所得の金額の計算上損金の額に算入することとされている場合におけるその受ける配当等の額をいいます。(5)及び(6)において同じ。)は、その特定外国子会社等の合算対象とされる金額の計算上控除しないこととされます。
(5) 特定外国子会社等が他の特定外国子会社等(上記(4)の子会社に該当するものに限ります。以下(5)において同じ。)から受ける損金算入配当等の額のうち、当該他の特定外国子会社等の合算対象とされた金額から充てられた部分の額は、その特定外国子会社等の合算対象とされる金額の計算上控除されます。
(6) 内国法人が特定外国子会社等(持株割合25%以上等の要件を満たす外国法人をいいます。以下(6)において同じ。)から受ける損金算入配当等の額のうち、その内国法人の配当等を受ける日を含む事業年度及びその事業年度開始の日前10年以内に開始した各事業年度においてその特定外国子会社等につき合算対象とされた金額の合計額に達するまでの金額は、その内国法人の所得の金額の計算上益金の額に算入しないこととされます。
(7) 特殊関係株主等である内国法人等に係る特定外国法人に係る所得の課税の特例について、上記(1)及び(3)から(6)までと同趣旨の改正が行われます。

適用期日 上記(1)から(3)までの改正は、特定外国子会社等の平成27年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
上記(4)及び(5)の改正は、特定外国子会社等の平成28年4月1日以後に開始する事業年度に係る合算対象とされる金額について適用されます。
上記(6)の改正は、平成28年4月1日以後に開始する事業年度において内国法人が特定外国子会社等から受ける配当等の額について適用されます。
平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に開始する各事業年度において内国法人が特定外国子会社等から受ける配当等の額(平成28年4月1日において有する当該特定外国子会社等の株式等に係るものに限ります。)については、従前どおりの取扱いとされます。

 

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