目次 III-5


5 事業承継税制の適用要件の緩和

【1】 現行の非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度(事業承継税制)

 先代経営者の親族である後継者が相続・贈与により取得した一定の非上場株式に係る課税価格の80%(贈与は100%)に対応する税額については、納税が猶予されます。ただし、贈与の場合は、贈与時までに先代経営者が役員を退任することが要件とされており、また、相続・贈与後5年間は、以下の要件を満たさないと納税猶予が打ち切られます。

 なお、5年後以降も株式を保有し事業を継続すれば後継者死亡(又は会社倒産)時点で納税が免除されます。

雇用の8割以上を維持
先代経営者の親族である後継者が、代表者を継続  等


■非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度の流れ(現行)

非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度の流れ(現行)


【2】改正の概要

 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、次の見直しが行われます。

(1) 経営承継相続人等の要件のうち、非上場会社を経営していた被相続人の親族であることとする要件が撤廃されます。→親族に限らず適任者を後継者に
(2) 贈与税の納税猶予における贈与者の要件のうち、贈与時において認定会社の役員でないこととする要件について、贈与時においてその会社の代表権を有していないことに改められます。つまり、代表者を退任すれば、引き続き有給役員として残留することが可能となります。→先代経営者の信用力も活用
(3) 役員である贈与者が、認定会社から給与の支給等を受けた場合であっても、贈与税の納税猶予の取消事由に該当しないこととされます。
(4) 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)における常時使用従業員数の平均が、相続開始時又は贈与時における常時使用従業員数の80%を下回ることとなった場合に緩和されます。
現行「毎年8割以上」→改正案「5年平均8割以上」
毎年の景気変動に配慮
(5) 民事再生計画の認可決定等があった場合には、その時点における株式等の価額に基づき納税猶予税額を再計算し、その再計算後の納税猶予税額について、納税猶予を継続する特例が創設されます。→事業の再出発に配慮
(6) 納税猶予税額の計算において、被相続人の債務及び葬式費用を相続税の課税価格から控除する場合には、非上場株式等以外の財産の価額から控除することとされます。→債務の相続があっても株式の納税猶予をフル活用できるように配慮
(7) 株券不発行会社について、一定の要件を満たす場合には、株券の発行をしなくても、相続税・贈与税の納税猶予の適用を認めることとされます。
(8) 相続税等の申告書、継続届出書等に係る添付書類のうち、一定のものについては、提出を要しないこととされます。
(9) 雇用確保要件が満たされないために経済産業大臣の認定が取り消された場合において、納税猶予税額を納付しなければならないときは、延納又は物納の適用を選択することができることとされます。
(10) 経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)の経過後に納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合については、その期間中の利子税を免除することとされます。
(注)  納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合の利子税は、「延滞税等の見直し」により、納税猶予期間中の利子税の割合が年0.9%※(現行:年2.1%)に引き下げられます。
※特例基準割合が2%の場合
(11) 経済産業大臣による事前確認制度が廃止されます。
手続きの簡素化
(12) 資産保有型会社・資産運用型会社に該当する認定会社等を通じて上場株式等(1銘柄につき、発行済株式等の総数等の100分の3以上)を保有する場合には、納税猶予税額の計算上、その上場株式等相当額を算入しないこととされます。
(13) 適用対象となる資産保有型会社・資産運用型会社の要件について、次のとおり所要の見直しが行われます。
 常時使用従業員数が5人以上であることとする要件は、経営承継相続人等と生計を一にする親族以外の従業員数で判定
 商品の販売・貸付け等を行っていることとする要件について、経営承継相続人等の同族関係者等に対する貸付けを除外
(14) 納税猶予の取消事由である「総収入金額が零となった場合」について、総収入金額の範囲から営業外収益及び特別利益が除外されます。

適用期日 この改正は、所要の経過措置を講じた上、平成27年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。

 

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