目次 II-3


3 金融所得課税の一体化

 金融商品については、商品間の損益通算の範囲が制限されており、公社債等と上場株式等とで課税方式に差異があります。

 平成28年1月以降、公社債等に対する課税方式が、上場株式等と同様、税率が20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税方式に変更された上で、公社債等の譲渡益が非課税から課税とされる一方、損益通算できる範囲が公社債等にまで拡大されます。

 具体的には、金融所得課税の一体化を進める観点から、公社債等及び株式等に係る所得に対する課税を、次のとおり見直すこととされています。

【1】特定公社債等の課税方式

 特定公社債等とは、特定公社債(国債、地方債、上場公社債、平成27年12月31日以前に発行された公社債など)、公募公社債投資信託の受益権、証券投資信託以外の公募投資信託の受益権及び特定目的信託の社債的受益権で公募のものをいい、これらの課税方式については次のとおりとされます。

(1)  特定公社債等の利子等については、20%源泉分離課税の対象から除外された上で、次の措置が講じられます。

居住者等が支払を受けるべき利子等については、20%(所得税15%、住民税5%)の税率による申告分離課税の対象とされます。ただし、源泉徴収がされるべき利子等で支払調書の提出等がされないものは、申告分離課税の対象外とされます。
支払を受けるべき利子等(源泉徴収(特別徴収)がされたものに限ります。)を有する居住者等は、その利子等については申告を要しないことができることとされます。
居住者又は内国法人が支払を受けるべき国外公社債等の利子等で申告分離課税の対象となるものについて、支払の際に課される外国所得税の額がある場合には、その国外公社債等の利子等の額からその外国所得税の額を控除した金額に対して、20%(所得税15%、住民税5%)又は15%(所得税のみ)の税率による源泉徴収(特別徴収)を行うこととされます。
(注) 上記イ及びロについては、平成28年1月1日以後に支払を受けるべきものが対象です。

(2)  特定公社債等の譲渡所得等については、非課税の対象から除外された上で、次の措置が講じられます。

居住者等が平成28年1月1日以後に特定公社債等の譲渡をした場合には、その特定公社債等の譲渡による譲渡所得等については、20%(所得税15%、住民税5%)の税率による申告分離課税の対象とされます。
特定公社債等の償還又は一部解約等により支払を受ける金額を、特定公社債等の譲渡所得等に係る収入金額とみなすことにより、20%税率の申告分離課税の対象とするとともに、損失が生じた場合には他の特定公社債等の譲渡所得等から控除することが可能とされます。

(3)  上場株式等の譲渡損失及び配当所得の損益通算並びに繰越控除の特例の対象範囲が、次のとおり拡充されます。

特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等が、上場株式等の譲渡損失及び配当所得の損益通算の特例の対象に加えられ、これらの所得間並びに上場株式等の配当所得及び譲渡所得等との損益通算が可能とされます。
平成28年1月1日以後に特定公社債等の譲渡により生じた損失の金額のうち、その年に損益通算をしても控除しきれない金額については、翌年以後3年間にわたり、特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等並びに上場株式等の配当所得及び譲渡所得等からの繰越控除が可能とされます。
特例の対象となる譲渡の範囲に、公社債を発行した法人が行う買入消却による公社債の譲渡が加えられます。
確定申告書の提出がなかった場合等の宥恕措置が廃止されます。
(注) 上記イ及びロの配当所得は、申告分離課税を選択したものに限られます。


【2】一般公社債等の課税方式

 一般公社債等とは、特定公社債以外の公社債、私募公社債投資信託の受益権、証券投資信託以外の私募投資信託の受益権及び特定目的信託の社債的受益権で私募のものをいい、これらの課税方式については、次のとおりとされます。

(1)  利子等については、20%源泉分離課税が維持されますが、同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の役員等が支払を受けるものは、総合課税の対象とされます。

(2)  譲渡所得等については、非課税の対象から除外された上で、次の措置が講じられます。

居住者等が、平成28年1月1日以後に一般公社債等の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡所得等については、20%(所得税15%、住民税5%)の税率による申告分離課税の対象とされます。
一般公社債等の償還又は一部解約等により支払を受ける金額で一定のものについては、これを一般公社債等の譲渡所得等に係る収入金額とみなすことにより、20%の税率による申告分離課税の対象とされます。ただし、同族会社が発行した社債の償還金でその同族会社の役員等が支払を受けるものは、総合課税の対象とされます。


【3】割引債の課税方式等

 割引債を含む公社債の譲渡所得等を課税対象とすることにあわせて、割引債の償還差益についても譲渡所得等として20%(所得税15%、住民税5%)申告分離により課税するとともに、発行時の18%源泉徴収を適用せず、償還時に源泉徴収(特別徴収)する仕組みとされます。


【4】株式等に係る譲渡所得等の分離課税の改組

 株式等に係る譲渡所得等の分離課税について、上場株式等に係る譲渡所得等と非上場株式等に係る譲渡所得等を別々の分離課税制度とした上で、(1)特定公社債等及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税と(2)一般公社債等及び非上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税に改組されます。


【5】その他

 上記の他に、源泉徴収義務の整備等、道府県民税利子割及び配当割の見直し、道府県民税株式等譲渡所得割の見直し、法人に係る利子割の廃止などが行われます。


■金融商品に係る課税方式

金融商品に係る課税方式

 

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