目次 平成24年度税制改正大綱による改正案 V-3


3 関連者間の利子を利用した租税回避への対応
(過大支払利子税制の導入)

 所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するための措置が講じられます。

関連企業間の利子を利用した租税回避への対応 (政府税制調査会資料より)
企業の所得の計算上、支払利子が損金に算入されることを利用して、関連企業間の借入れを恣意的に設定し、関連企業全体の費用収益には影響させずに、過大な支払利子を損金に算入することで、税負担を圧縮しようとする租税回避行為が可能。
近年、主要先進国では、租税条約において利子の源泉地国免税を進めるとともに、支払利子の損金算入制限措置を強化する傾向にある。我が国の場合、過大な支払利子を利用した所得移転を防止する措置が十分でなく、支払利子を利用した課税ベースの流出のリスクに対して脆弱。
そこで、主要先進国におけるこのような傾向を踏まえ、企業の事業活動の実態に配慮しながら、所得金額に比して過大な利子を関連者間で支払うことを通じた租税回避を防止するための措置について検討する必要。


(1)概要

 法人の関連者に対する純支払利子等の額が調整所得金額50%を超える場合には、その超える部分の金額は、当期の損金の額に算入しないものとされます。


(2)関連者の範囲

その法人との間に直接・間接の持分割合50%以上の関係にある者及び実質支配・被支配関係にある者
上記の者による債務保証を受けた第三者等


(3)関連者に対する純支払利子等の額

 関連者に対する純支払利子等(以下「関連者純支払利子等」といいます。)の額は、関連者に対する支払利子等(以下「関連者支払利子等」といいます。)の額の合計額からこれに対応するものとして計算した受取利子等の額を控除した残額とされます。

関連者支払利子等の範囲は、利子、利子に準ずるもの(リース取引に係る利息相当額を含みます。)及び関連者保証による借入れに伴う保証料等とされ、一定のものが除かれます。
関連者支払利子等の額の合計額に対応する受取利子等の額は、利子及び利子に準ずるもの(リース取引に係る利息相当額を含みます。)を基礎として、一定の計算により算定されます。


(4)調整所得金額

 調整所得金額は、当期の所得金額に、関連者純支払利子等、減価償却費等及び受取配当等の益金不算入額等を加算し並びに貸倒損失等の特別の損益について加減算する等の調整を行った金額とされます。


(5)繰越損金不算入額

 当期の関連者純支払利子等の額が調整所得金額の50%に満たない場合において、前7年以内に開始した事業年度に本制度の適用により損金不算入とされた金額(以下「繰越損金不算入額」といいます。)があるときは、その関連者純支払利子等の額と調整所得金額の50%に相当する金額との差額を限度として、当期の損金の額に算入するものとされます。


(6)適用除外基準

 次のいずれかに該当する場合には、本制度は適用しないものとされます。

その事業年度における関連者純支払利子等の額が1,000万円以下であること
その事業年度における関連者支払利子等の額の合計額が総支払利子等の額の50%以下であること

 なお、上記ロの総支払利子等の額には、関連者に対する支払利子等でその支払を受ける関連者において我が国の法人税の課税所得に算入されるもの等は、含まれないものとされます。


(7)連結納税における本制度の適用

 連結納税における本制度は、連結グループを一体として適用するものとされます。


(8)他の制度との関係

重複する制度 適用関係
過少資本税制 本制度と過少資本税制の双方が適用となる場合には、その計算された損金不算入額のうちいずれか多い金額が当期の損金不算入額とされます。
外国子会社合算税制 内国法人が関連者である外国子会社等に対して支払った利子等につき外国子会社合算税制と本制度の双方が適用となる場合には、本制度による損金不算入額(その外国子会社等に対する支払利子等に係る部分に限ります。)から外国子会社合算税制による合算所得(その外国子会社等に係るものに限ります。)に相当する金額を控除する等の調整を行うものとされます。

適用期日 上記の改正は、平成25年4月1日以後に開始する事業年度について適用されます。

 

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