目次 III-2


2 グループ法人税制の整備等

――資本に関係する取引等に係る税制――

 企業グループを対象とした法制度や会計制度が定着しつつある中、税制においても、法人の組織形態の多様化に対応するとともに、課税の中立性や公平性等を確保する観点から、見直しが行われます。

 グループ法人の一体的運営が進展している状況を踏まえ、実態に即した課税を実現させるようグループの要素を反映した課税のあり方について検討することがふさわしいという考えが根底にあります。グループ法人税制の対象となる法人のうち、自ら選択した企業に対しては、連結納税制度が適用されますが、グループ法人相互の関係をさらに推し進めたグループ法人全体を一つの納税主体とする制度として位置付けられます。


 グループ法人税制は、選択した連結法人以外の法人については、「グループ法人単体課税制度」(仮称)として取り扱うこととされます。

 以下にそのおおまかな制度のしくみと概要は次のとおりです。


【1】グループ内取引等に係る税制

 (1)100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等に伴う損益計上時期等

連結法人間取引の損益の調整制度を改組し、100%グループ内の内国法人間で一定の資産の移転(非適格合併による移転を含みます。)を行ったことにより生ずる譲渡損益を、その資産のそのグループ外への移転等の時に、その移転を行った法人において計上する制度とされます。これに伴い、適格事後設立制度が廃止されます。
 (注) 100%グループ内の法人とは、完全支配関係(原則として、発行済株式の全部を直接又は間接に保有する関係)のある法人をいいます。
100%グループ内の法人間の非適格株式交換等は、非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度の対象から除外されます。
 (注) 合併等の対価として一定の外国親法人株式が交付されるものが除かれます。

適用期日 この改正は、平成22年10月1日から適用されます。


(2)100%グループ内の法人間の寄附の取扱い

 現行の規定では、連結法人間の寄附は、支出法人において全額損金不算入であり、受領法人において全額益金算入となっています。これがグループ内取引の支障になっているとの指摘がありました。そこで、今回の改正では、連結法人間に限らず、100%グループ内の内国法人間の寄附金について、支出法人において全額損金不算入とするとともに、受領法人においては全額益金不算入とされます。


適用期日 この改正は、平成22年10月1日から適用されます。


(3)100%グループ内の法人間の資本関連取引の取扱い

現物配当 100%グループ内の内国法人間の現物配当(みなし配当を含みます。)について、組織再編税制の一環として位置づけ、譲渡損益の計上を繰り延べる等の措置が講じられます。この場合、源泉徴収等が行われないこととされます。
受取配当の
益金不算入
制度
100%グループ内の内国法人からの受取配当について益金不算入制度を適用する場合には、負債利子控除が適用されないこととされます。
グループ内
法人の株式
譲渡
100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益が計上されないこととされます。
無対価組織
再編成
いわゆる無対価組織再編成について、その処理の方法等が明確化されます。

適用期日 上記の改正は、イ、ハ、ニについては、平成22年10月1日から適用され、ロについては、平成22年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。


(4)中小企業向け特例措置の大法人の100%子法人に対する適用制限

 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人に係る次の制度については、資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社等の100%子法人には適用されないこととされます。

軽減税率(措法42の3の2)
特定同族会社の特別税率(留保金課税制度)の不適用(法法67)
貸倒引当金の法定繰入率(措法57の10、措令33の9)
交際費等の損金不算入制度における定額控除制度(措法61の4)
欠損金の繰戻しによる還付制度(法法80)

 【参考】グループ内法人税制における中小特例の扱い
【現行制度】
中小企業への税制特例の適用の可否は、その中小企業の資本金が1億円以下か否かで判定を行っている。
【改正案】
グループ法人税制の導入に際して、中小特例の適用については、自らの資本金等の規模に加えて、親会社の資本金等の規模も基準に判定される。
 → 親会社の資本金が5億円以上(会社法上の「大会社」)の場合、その100%子会社については、中小特例は適用しない。

(経済産業省「平成22年度税制改正について」より)

適用期日 この改正は、平成22年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。


(5)連結納税制度の見直し

 連結納税制度について、その採用を躊躇させている税制上のデメリットを解消するために、以下の改正が行われます。

連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度の適用対象外となる連結子法人のその開始又は加入前に生じた欠損金額が、その個別所得金額を限度として、連結納税制度の下での繰越控除の対象に追加されます。
連結納税の承認申請書の提出期限について、その適用しようとする事業年度開始の日の3月前の日(現行6月前の日)とされます。
事業年度の中途で連結親法人との間に完全支配関係が生じた場合の連結納税の承認の効力発生日の特例制度について、加入法人のその完全支配関係が生じた日(加入日)以後最初の月次決算日の翌日を効力発生日とすることができる制度に改組されます。
連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度について、その開始又は加入後2月以内に連結グループから離脱する法人の有する資産が時価評価の対象から除外されます。

適用期日 上記のロ、ハ、ニの改正については、平成22年10月1日から適用されます。
イの改正については、平成22年4月1日開始事業年度から適用されます。

 【参考】連結納税制度の見直し
連結納税制度の利用は増加しつつあるものの、連結採用をためらわせる税制上の課題があるとの指摘があった。
こうした課題を解消するため、連結納税制度を見直す。

(a)連結納税開始・加入前の子会社の欠損金の取扱い
連結納税開始・加入時に、子会社が持っていた欠損金が切捨てられ、利用できなくなる。 親会社に長期(5年超)100%保有されている法人、親法人又は100%子法人により設立された法人、適格株式交換による完全子法人等については、連結納税の開始、加入前に生じた欠損金について、当該子会社の個別所得金額を限度として利用できるようにする。
連結納税グループ

(b)寄附金の取扱い
連結法人間での寄附は、支払側では、損金算入できず、受取側では益金算入されることから、グループ内取引の支障となっている。 支払い・受取り、いずれの側においても寄附金は、損益に不算入とする。また、100%グループ内の寄附についても同様の扱いとする。

(c)連結納税承認申請期限の短縮
連結納税の承認申請書の提出期限について、連結納税開始の日の3か月前とする。(現行6か月)
(経済産業省「平成22年度税制改正について」より)


【2】資本に関係する取引等に係る税制

(1)みなし配当の際の譲渡損益の取扱い

100%グループ内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合には、その譲渡損益が計上されないこととされます。(再掲)
自己株式として取得されることを予定して取得した株式が自己株式として取得された際に生ずるみなし配当については、益金不算入制度(外国子会社配当益金不算入制度を含みます。)が適用されないこととされます。
抱合株式については、譲渡損益を計上しないこととされます。

適用期日 この改正は、平成22年10月1日から適用されます。

 【参考】グループ内取引等に係る税制の整備
グループ内(100%資本関係のある国内会社間)の取引等について、含み損益を実現せずに円滑に資産移転ができるようにする等、グループ経営の実態を踏まえ、中立的な税制を整備する。

(a)譲渡取引時の課税

(b)受取配当の益金不算入制度
(経済産業省「平成22年度税制改正について」より)


(2)清算所得課税の廃止

 清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行されます。その際、期限切れ欠損金の損金算入制度を整備する等の所要の措置が講じられます。また、連結子法人の解散については原則として連結納税の承認の取消事由から除外されます。

清算所得課税を廃止し、通常の所得課税に移行する。

会社が解散した後は、通常の所得ではなく、清算所得に対して課税される。(※) 通常の所得課税に移行する。ただし、期限切れ欠損金の損金算入制度を整備する等、清算所得課税における場合とバランスの取れた制度となるよう、所要の措置を講じる。
 ※通常の所得:(益金)−(損金)
 ※清算所得:
 (残余財産の価格(時価))
 −(解散時における簿価純資産額)

適用期日 この改正は、平成22年10月1日から適用されます。


(3)その他の取扱い

適格合併等の場合における欠損金の制限措置等について、実態に応じて適用要件が見直されます。
分割型分割については、みなし事業年度を設けないこととされます。
売買目的有価証券、未決済デリバティブ取引に係る契約等を適格分社型分割等により移転する場合の処理について整備が行われます。
合併類似適格分割型分割制度が廃止されます。
受取配当の益金不算入制度における負債利子控除額の計算の簡便法の基準年度が見直されます。
その他所要の措置が講じられます。

適用期日 上記のイ、ロ、ハ、ニ、への改正については、平成22年10月1日から適用されます。
ホの改正については、平成22年4月1日開始事業年度から適用されます。

 【参考】適格合併等の場合における欠損金の制限措置等の緩和
適格合併等を行った際に、繰越欠損金の利用が制限される措置について、適用除外範囲を拡大。

(経済産業省「平成22年度税制改正について」より)

 

目次 次ページ