目次 II-1


II.相続・贈与税制はここが変わる!


1 小規模宅地等の相続税の課税価格特例制度の見直し

事業・居住を継続しない宅地等(現行:200平方メートルまで50%減額)を適用対象から除外

 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例については、相続人等による事業又は居住の継続への配慮という制度趣旨等を踏まえ、次の見直し が行われます。

(1) 相続人等が相続税の申告期限まで事業又は居住を継続しない宅地等(現行:200平方メートルまで50%減額)は適用対象から除外されます。
(2) 一の宅地等について共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件を判定します。
(3) 一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうちに、特定居住用宅地等の要件に該当する部分とそれ以外の部分がある場合には、部分ごとに按分して軽減割合を計算します。
(4) 特定居住用宅地等については、主として居住の用に供されていた一の宅地等に限られることが明確化されます。

適用期日 これらの改正は、平成22年4月1日以後の相続又は遺贈により取得する小規模宅地等に係る相続税について適用されます。

【図2】住民税の扶養控除等


 制度の要旨に照らして妥当ではないと認められる事例
〔事例(1)〕
 居住や事業を継続しない場合
〔事例(2)〕
 ▲80%の要件を満たす者と満たさない者が、宅地を共同相続する場合
〔事例(3)〕
 宅地の上に存する一棟の建物のうちに、居住用と貸付用がある場合
〔事例(4)〕
 被相続人等が居住の用に供していた宅地等が複数存在する場合


〔事例(1)〕→相続人等が相続税の申告期限まで事業又は居住を継続しない宅地等(現行:200平方メートルまで50%減額)が適用対象から除外されます。 〔事例(2)〕→一の宅地等について共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件が判定されます。 〔事例(3)〕→一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうちに特定居住用宅地等の要件に該当する部分とそれ以外の部分がある場合には、部分ごとに按分して軽減割合を計算します。 〔事例(4)〕→特定居住用宅地等は、主として居住の用に供されていた一の宅地等に限られることが明確化されます。

 解説 つまり、上記の〔事例(1)〕から〔事例(3)〕の場合すべて、適用できなくなります。
 〔事例(1)〕は、従来は、相続人が相続税の申告期限までに引続き事業又は居住を継続していなくても、200平方メートルまでの部分は50%の減額がされましたが、この制度が廃止されます。〔事例(2)〕は、例えば、被相続人と同居している被相続人の配偶者と非同居の子供がいるときに、配偶者が適用要件を満たしていれば、その子供が要件を満たさなくても配偶者と同様に80%減額特例の適用が可能でしたが、この制度も廃止されます。〔事例(3)〕は、宅地の上の1棟の建物のうちに居住用と貸付用とがある場合には、特定居住用宅地の特例の適用要件を満たせば、その建物全体が80%減額特例の適用が可能でしたが、この制度も廃止され、個別に按分して減額割合の計算をすることになります。
(内閣府「税制改正資料(要望にない項目等)」を加工して使用)


現行制度と改正案の比較

 相続又は遺贈によって取得した財産のうちに、相続開始の直前において、被相続人等(被相続人及び被相続人と生計を一にしていた親族をいいます。)の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等がある場合には、相続等により財産を取得した者に係るすべての宅地等の一定の面積までの部分のうち、その相続人等の取得した宅地等(小規模宅地等)については、通常の価格にそれぞれの区分に応じた80%又は50%の割合(下表)を乗じて得た金額を減額して課税価格を計算します。

区  分 減額割合 特例対象面積
(平方メートル)
現 行 改正案
居住用宅地 特定居住用宅地等(被相続人等と同居していた親族が引き続き居住している場合など) 80% 240 240
上記以外の特例適用の対象宅地 50% 200 廃 止
事業用宅地 特定事業用宅地等(被相続人等が営んでいた事業を引き続き営んでいる場合など) 80% 400 400
上記以外の特例適用の対象宅地 50% 200 廃 止
貸付用宅地 被相続人等が不動産貸付けの用に供していた場合 50% 200 200
同族会社の
事業用宅地
特定同族会社事業用宅地等(申告期限まで引き続きその同族会社の事業の用に供される場合) 80% 400 400
上記以外の特例適用の対象宅地 50% 200 廃 止

適用期日 上表の廃止の改正は、平成22年4月1日以後の相続又は遺贈により取得する小規模宅地等に係る相続税について適用されます。(なお、現行の規定は、平成13年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する小規模宅地等に係る相続税について適用されているものです。)


(1) 特定居住用宅地等(減額割合80%適用)

 特定居住用宅地等とは、具体的には、被相続人等が居住の用に供していた宅地等で、その相続又は遺贈によってその宅地等を取得した個人のうちに、被相続人の配偶者又は次に掲げる要件のいずれかを満たすその被相続人の親族がいる場合の、その宅地等をいいます。

親族が相続開始の直前にその宅地等の上にある被相続人が居住の用に供していた家屋に同居しており、その親族が申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、その家屋に居住していること
被相続人の居住用宅地等を取得した親族が、相続開始前3年以内にその者又はその者の配偶者の持家(相続開始直前に被相続人が居住していた家屋を除きます。)に居住したことがない者であり、かつ、申告期限まで引き続きその宅地等を有していること(この規定は、被相続人の配偶者又は相続開始直前にイの家屋に居住してい た法定相続人がいない場合に限り適用されます。)
親族が被相続人と生計を一にしていた者で、申告期限まで引き続きその宅地等を有し、かつ、相続開始直前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の居住の用に供していること


(2) 特定同族会社事業用宅地等(減額割合80%適用)

 特定同族会社事業用宅地等とは、相続開始直前に被相続人等が発行済株式の50%超を有する同族会社の事業(不動産貸付業等を除きます。)の用に供されていた宅地等で、相続等によりその宅地等を取得した個人のうちに、被相続人の親族(申告期限において、その法人の役員であるものに限ります。)がおり、その親族が申告期限まで引き続きその宅地等を所有し、かつ、申告期限まで引き続きその同族会社の事業の用に供されている場合のその宅地等をいいます。


(3) 特定事業用宅地等(減額割合80%適用)

 特定事業用宅地等とは、具体的には、被相続人等が事業の用に供していた宅地等で、その相続又は遺贈によってその宅地等を取得した個人のうちに、次に掲げる要件のいずれかを満たすその被相続人の親族がいる場合の、その宅地等をいいます。

 上記「事業」の範囲には、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業(これらは、その規模、設備の状況及び業態等を問いません。)及び準事業たる不動産貸付業は、含まれません。したがって、これらの事業に該当する場合は、すべて50%の減額割合になります。

被相続人の親族が、相続開始時から相続税の申告期限までに、その宅地上で被相続人が営んでいた事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続いてその宅地等を所有し、かつ、その事業を営んでいること
被相続人と生計を一にし、その宅地で事業を営んでいた親族が、相続開始時から相続税の申告期限まで、引き続きその宅地等を所有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続きその宅地等を自己の事業の用に供していること

 

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