VI-1 |
VI.国際課税はこう変わる |
1 外国子会社合算税制の適用範囲の拡充等 |
我が国の企業の海外子会社のうち、税負担の著しく低い国に利益を留保すれば、日本での法人税課税を免れることができます。 そこで、外国子会社合算税制は、このような海外子会社を利用した租税回避行為に対処するため、海外子会社の留保所得を、その持分に応じて、親会社の所得に合算して課税する制度です。ただし、海外子会社が実体のある事業を行っている等、一定の条件を満たす場合は、合算課税の対象とはなりません。 また、合算課税された海外の子会社の留保所得から、将来、親会社に配当した際、その配当所得に課税すると二重課税となることから、その配当相当額について、損金算入をすることが認められています。しかしながら、現行では合算課税された年度から5年以内に配当が行われる場合に限るなどの制限がありますが、今年の改正では、それらが解消されることになります。
このような場合には、日本企業が税負担の著しく低い海外子会社に留保された所得(例では100)を日本の親会社の所得に合算して課税することになります。
■外国子会社合算税制における適用除外基準 たとえ、タックスヘイブンに本店を置いても、正常な海外投資活動を阻害しないために、外国子会社合算税制には下記のような適用除外基準が設けられています。 適用除外基準(次の4つのすべてを満たした場合には、合算対象となりません。)は次のとおりです。
(1) 所得控除制度を創設 特定外国子会社等で所在地国基準又は非関連者基準を満たされないものが事業基準、実体基準及び管理支配基準を満たす場合における適用対象留保金額は、その特定外国子会社等の未処分所得の金額から一定の人件費の100分の10に相当する金額を控除した金額とされます。 製造業を営む企業等の卸売小会社の場合、経済実体があるにもかかわらず関連者との取引が大半を占めることから適用除外とされません。しかしながら、これらの関連者取引の多い会社を一律に適用除外とすると経済実体のある企業も除外される恐れがあります。このため、これらを卸売業の例外として適用除外とするのではなく、その留保所得から実体的な活動に不可欠な人件費見合い分を課税対象から除外することになっています。 (2) 損金算入可能な配当期間を延長 二重課税排除を徹底するため、配当の損金算入期間が10年に延長されます。 内国法人等が特定外国子会社等から配当等を受けた場合において、その配当等を受けた日の属する事業年度開始の日前10年以内(現行5年以内)に開始した各事業年度のその特定外国子会社等の課税済留保金額について、損金算入が認められることになります。
以上のように特定外国子会社等に課税済配当等の額が生じた場合には、内国法人は特定外国子会社等に係る課税対象留保金額で過去10年以内に合算されたものを、その課税済配当等の額を限度として損金算入することができるようになります。
以上のように外国現地で稼得した利益の配当期間の制限が緩和され、また適正な留保利益を確保できるようになるため、海外子会社が過度な制約が無く内部留保を活用でき国際的に欧米諸国と対等に競争することが可能となります。 (3) 欠損金額の繰越期間を7年に延長 国内制度の整合性から、特定外国子会社等の未処分所得の金額の計算において控除する欠損金に係る繰越期間が、7年(現行5年)に延長されます。
(4) 外国関係会社の適用に係る判定に役員の持株を追加 外国関係会社及び合算税制の適用を受ける内国法人等の判定において、内国法人の役員等(非居住者を含みます。)の有する株式等が加えられます。 (5) 課税対象留保金額の計算に追加 特定外国子会社等が利益の配当又は剰余金の分配の額が異なる株式等を発行する場合には、その利益の配当又は剰余金の分配を受ける金額に応じて課税対象留保金額の計算が行われます。 (6) 外国の特定信託を合算税制の対象に追加 内国法人等に係る外国において設定された特定信託に類する一定の信託について、特定外国子会社等に係る所得の課税の特例と同様、その信託に留保された所得が、その内国法人等の所得金額の計算上益金の額に算入できるようになります。なお、当該信託については、適用除外基準は設けられません。
|