目次 III-2


2 住宅取得等資金に係る相続時精算課税特例の適用対象中古住宅の拡充

 住宅投資を促進する狙いから、平成15年に創設された相続時精算課税制度は、通常の場合は2,500万円である特別控除を、住宅取得等資金の贈与については1,000万円を上乗せし3,500万円とし、平成15年1月1日から平成17年12月31日までの3年間に行われる贈与に限って適用できるようにしました。

 さらに、特定贈与者である親の年齢制限もなく、通常の相続時精算課税制度では「65歳以上の親から20歳以上の推定相続人である子へ」が要件ですが、住宅取得等資金の贈与の場合には、親の年齢制限が撤廃され65歳未満でも適用可能となっています。

 住宅取得等資金の贈与について相続時精算課税制度の特例の適用を受けるためには、自己の居住する「一定の家屋」の新築又は取得(家屋とともに取得する土地を含みます。)をするための資金の贈与を受ける場合、又は自己の居住の用に供する家屋の「一定の増改築等」のための資金の贈与を受ける場合に限られます。

 「一定の家屋」とは、以下に掲げる要件を満たす家屋ですが、今年の改正で、中古住宅(築後年数が20年以内、一定の耐火建築物である場合には25年以内)の範囲に、「地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の既存住宅」、つまり新耐震基準を満たした中古住宅が新たに加えられます。


適用期日 この改正は、平成17年4年1日以後に取得をする既存(中古)住宅に係る贈与税について適用されます。

 したがって、今年の改正による「一定の家屋」とは、受贈者が居住の用に供する次の(1)〜(3)に掲げる家屋(床面積の2分の1以上が専ら自己の居住用で、居住用家屋が2か所以上ある場合には、そのうち主たる居住用家屋である1か所だけ)が対象となります。

(1) 新築又は築後経過年数が20年以内(一定の耐火建築物である場合には25年以内)の中古住宅、あるいは地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅であること
(2) 家屋の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上であること
(3) その他所要の要件を満たすこと

 つぎに、今年の改正ではありませんが、「一定の増改築等」とは、その者が所有する家屋について行う増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替えその他の工事(家屋の床面積及び工事費用の2分の1以上が専ら自己の居住用)で、次の(1)〜(3)の要件を満たすものとされています。

(1)増改築の工事費用が100万円以上であること
(2) 増改築後の家屋の床面積(区分所有の場合には、その区分所有する部分の床面積)が50平方メートル以上であること
(3)その他所要の要件を満たすものであること

〈増改築や大規模修繕等の工事の範囲〉
  増改築・大規模修繕等の工事



(1)  増築、改築、建築基準法第2条第14号に規定する大規模の修繕又は同条第15号に規定する大規模の模様替
(2)  家屋の一室(居室、調理室、浴室、便所その他の室)の床又は壁の全部について行う修繕又は模模替





(1)  家屋のうちその者の区分所有する部分について、次のいずれかのもののその過半について行う修繕又は模様替
  (イ)  主要構造部である床及び最下階の床又は階段
  (ロ)  間仕切壁の室内に面する部分(間仕切壁の一部について位置の変更を伴う修繕又は模様替に限ります。)
  (ハ)  主要構造部である壁の室内に面する部分(遮音又は熱の損失の防止のための性能を向上させる修繕又は模様替に限ります。)
(2)  家屋のうちその者の区分所有する部分の一室(居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関、廊下)の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替
(注) 家屋について行う建築基準法施行令第3章及び第5章の4の規定等による地震に対する安全性に係る基準に適合させるための修繕又は模様替も含みます。(上記以外)

【参 考】 相続時精算課税制度のしくみ
 生前贈与については、受贈者(子)の選択により、従来の暦年課税方式の贈与税制度に代えて贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その後の相続時にその贈与財産と相続財産とを合計した価額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税額を控除することにより、贈与税・相続税を通じた納税をすることができるしくみが相続時精算課税制度です。相続時精算課税制度の適用対象となる贈与者(特定贈与者)は、65歳以上の親で、受贈者は贈与者の推定相続人(代襲相続人を含みます。)である20歳以上の子(養子を含みます。)です。

  相続時精算課税制度
  通    常 住宅取得等資金贈与特例
非 課 税 枠 2,500万円 3,500万円
贈与者年齢制限 65歳以上 何歳でもよい
受  贈  者 20歳以上の子


■従来の暦年課税制度と相続時精算課税制度との比較
区   分 従来の暦年課税制度 相続時精算課税制度
贈与者の年齢 問わない 65歳以上の親から
受贈者の年齢 問わない 20歳以上の子
選   択 不要 必要(父母等ごとに選択)
一度選択すれば相続時まで継続
基礎控除 基礎控除:年間110万円 特別控除:2,500万円(累積)
贈与税率 10%〜50%(6段階) 20%(一律)
相 続 時 相続開始前3年以内の贈与財産のみ加算 相続時精算課税適用後の贈与財産を贈与時の時価で合算
精   算 相続税額から上記の3年以内の贈与税額を控除(還付はなし) 相続税額から適用後納付した贈与税額を控除(還付あり)



住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例と従来からの住宅取得資金等の贈与の特例との比較

 なお、従来の住宅取得資金等の贈与を受けた場合の贈与税の計算の特例(5分5乗方式)も、経過措置として平成17年12月31日まで存続しています。

 従来からある住宅取得資金等の贈与の特例と新制度による住宅取得等資金の特例の相違点を一覧表にしますと以下のとおりです。

項   目 相続時精算課税制度による
住宅取得等資金の贈与
従来からの
住宅取得資金等の贈与の特例
贈与者 父又は母(親)年齢制限なし 父母又は祖父母 年齢制限なし
受贈者 受贈者20歳以上の子(養子、代襲相続人を含む) 直系卑属である子又は孫(養子を含む)年齢制限なし
受贈者の
所得要件
なし 年間所得1,200万円以下
回数制限 特別控除額の残額の範囲内で複数回利用できる 一生に一回だけ
非課税枠 3,500万円 550万円
税額計算 非課税枠超過額については一律20%課税 1,500万円以下の部分については5分5乗方式により軽減、税率は10%〜50%の累進課税
受贈者の
持家等の要件
2か所以上に居住用家屋がある場合は、主たる居住用のみ適用 贈与前5年以内に、自己又は配偶者の所有家屋に居住していないこと、所有家屋があれば一定期間内に譲渡又は滅失させること
増改築の工事費用 100万円以上 1,000万円以上
相続時の贈与加算 全て相続財産に贈与時の時価で合算 相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3 年以内に受けた贈与についてのみ贈与時の時価で加算
贈与税額控除 控除しきれない贈与税については還付できる 控除しきれない贈与税については還付できない
適用期限 平成15年1月1日〜
 平成17年12月31日
(経過措置)
〜平成17年12月31日
*適用期限はどちらも平成17年12月31日となっています。

 

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