目次 I


I.住宅ローン控除はこう変わる


新耐震基準を満たすものは、築後年数にかかわらず最大年40万円控除ができる

 住宅ローンを借り入れて住宅を取得すれば、所得税が軽減できる「住宅ローン減税制度」の適用対象範囲が、平成17年4月から広がります。

 現行税制では、中古住宅を取得してローン減税を受ける場合、耐火建築物なら建築後25年以内、非耐火建築物なら建築後20年以内の物件だけが適用対象とされています。

 今年の改正で、平成17年4月以後は、地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合(以下「新耐震基準」といいます。)すれば、従前は適用対象の要件であった築後経過年数に関係なく住宅ローン減税が認められることになります。

適用期日 この改正は、平成17年4月1日以後に既存住宅(以下、「中古住宅」といいます。)の取得をし、自己の居住の用に供する場合について適用されます。

◇中古住宅の住宅ローン減税の適用範囲◇
◇中古住宅の住宅ローン減税の適用範囲◇

 新耐震基準は昭和56年6月に施行されたもので、震度6程度の地震でも倒壊しない強度が施されている建物などがその基準に該当しています。それ以後、建築確認が行われたものは新耐震基準を満たしていますが、それ以前のものは建築士が発行する証明書が必要になります。なお、新耐震基準を満たしていない中古住宅を購入して、後から新耐震基準を満たす工事を行った場合には、住宅ローン減税の対象とはならないのでご注意ください。

 住宅ローン控除制度とは、平成17年1月1日から平成17年12月31日までに、新たに住宅の新築・購入(中古住宅の購入を含みます。)をした人や、増改築をした人などについて、入居時から10年間、毎年末のローン残高(最大4,000万円)に対して8年間は1%、残りの2年間は0.5%を所得税額から控除するしくみで、10年間で最大360万円の税額控除ができます。ただし、次表のとおり、平成18年入居分は最大で255万円の税額控除となり、以降順次低減し、平成21年以降入居分からは廃止されることになっています。

◇住宅ローン減税を受けるための要件
入居日 平成17年12月31日までの居住開始
ローン残高の上限 4,000万円
控除期間 10年間
控除率 ローン残高の当初8年間は1%、残り2年間は0.5%
所得制限 年間所得3,000万円以下
適用対象 居住用家屋+その敷地(土地)
中古の場合
築後年数
築後25年以内(耐火建築物)
築後20年以内(非耐火建築物)
床面積制限 50平方メートル以上無制限

平成17年住宅ローン減税制度(早く入居するほど有利!)
居住年 控除期間 住宅借入金等の
年末残高
適用年・控除率 最大
控除額
平成17年 10年間 4,000万円以下の部分 1年目から 8年目まで 1%
9年目及び10年目   0.5%
360万円
平成18年 10年間 3,000万円以下の部分 1年目から 7年目まで 1%
8年目から10年目まで 0.5%
255万円
平成19年 10年間 2,500万円以下の部分 1年目から 6年目まで 1%
7年目から10年目まで 0.5%
200万円
平成20年 10年間 2,000万円以下の部分 1年目から 6年目まで 1%
7年目から10年目まで 0.5%
160万円

【参 考】 住宅ローン減税の最大減税額の推移



住宅ローン控除の適用要件

 住宅ローン控除を受けられるのは、次の要件のすべてに該当する場合です。

[適用要件]
(1) 国内で一定の居住用家屋の取得(取得の前後を通じ生計を一にする親族等からの敷地や中古住宅の取得を除きます。)又は増改築等を行ったこと
(2) (1)の居住用家屋の取得又は増改築等に要した一定の借入金又は債務(その居住用家屋とともに取得をするその家屋の敷地である土地等の取得に係る借入金等を含みます。)の年末残高を有すること
(3) (1)の居住用家屋の取得又は増改築等をした日から6か月以内に居住の用に供し、原則として、引き続き控除適用年の12月31日まで居住していること
(4) 控除を受けようとする年分の合計所得金額が3,000万円以下であること
(5) 居住用財産に係る譲渡所得の特例(買換えや3,000万円控除)を受けていないこと

対象となる借入金
 住宅ローン控除の対象となる借入金は、住宅の取得又は増改築等及び住宅とともに取得をする土地等で、その住宅の敷地の用に供されるものの取得のための借入金等で、償還(又は賦払)の期間が10年以上のものに限られます。

*ただし、次のものは対象とはなりません。
 勤務先などからの融資や代金債務で利息が年1%未満のもの
 勤務先から利子補給金の支払を受けているため、自らが実質的に負担する借入金や代金債務の利息が年1%未満となるもの

控除対象となる家屋等
(1)新築家屋
イ. 自己の居住用であること
ロ. 自己の居住用部分の床面積が総床面積の2分の1以上であること
ハ. 家屋の総床面積が50平方メートル以上であること(上限はなし)
(2)中古家屋
イ. (1)のイ〜ハのすべてを満たすこと
ロ. 建築後使用されたものであること
ハ. .耐火建築物の場合は、取得の日以前25年以内に建築されたものであること
.耐火建築物以外の場合は、取得の日以前20年以内に建築されたものであること
.A及びBの条件を満たさないものであっても、新耐震基準を満たすものであること
(3)増改築等
イ. 建築基準法上の大規模の修繕又は大規模の模様替え等であること
〔単独家屋〕増築、改築、建築基準法に規定する大規模の修繕又は模様替、一室の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替、地震に対する安全基準に適合させるための一定の修繕又は模様替(マンション等も同じ。)
〔マンション等〕床、階段、壁及び間仕切壁の室内に面する部分のその過半について行う修繕又は模様替、一室の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替(いずれも一定の証明がされたものに限ります。)
ロ. 増改築後の家屋の床面積が50平方メートル以上であること
ハ. 工事費用が100万円を超えること
ニ. 増改築後の家屋の床面積の2分の1以上が自己の居住用であること
ホ. 工事費用の額の2分の1以上が自己の居住用部分に係るものであること

【参 考】 平成17年末・平成18年末・平成19年末居住分のローン控除比較表
【計算前提】年収700万円の給与所得者、夫婦子2人の標準世帯、所得控除額は200万円とします。(定率減税は考慮していません。)借入金は1,000万円、2,000万円、4,000万円の3とおりの全てが3%の固定金利で30年間の元利均等返済とします。なお、この表はあくまでも目安ですので、実際の借入れにあたっては金融機関等や専門家によく相談してください。


  平成17年居住開始 平成18年居住開始 平成19年居住開始
当初借入額 1000万円 2000万円 4000万円 1000万円 2000万円 4000万円 1000万円 2000万円 4000万円
1年目 97,900円 195,800円 310,000円 97,900円 195,800円 300,000円 97,900円 195,800円 250,000円
2年目 95,700円 191,500円 310,000円 95,700円 191,500円 300,000円 95,700円 191,500円 250,000円
3年目 93,500円 187,800円 310,000円 93,500円 187,800円 300,000円 93,500円 187,800円 250,000円
4年目 91,200円 183,200円 310,000円 91,200円 183,200円 300,000円 91,200円 183,200円 250,000円
5年目 88,900円 178,600円 310,000円 88,900円 178,600円 300,000円 88,900円 178,600円 250,000円
6年目 86,400円 173,700円 310,000円 86,400円 173,700円 300,000円 86,400円 173,700円 250,000円
7年目 83,900円 168,800円 310,000円 83,900円 168,800円 300,000円 41,950円 84,400円 125,000円
8年目 81,400円 163,600円 310,000円 40,700円 81,800円 150,000円 40,700円 81,800円 125,000円
9年目 39,300円 79,200円 157,500円 39,300円 79,200円 150,000円 39,300円 79,200円 125,000円
10年目 38,000円 76,400円 152,000円 38,000円 76,400円 150,000円 38,000円 76,400円 125,000円
控除合計 796,200円 1,598,600円 2,789,500円 755,500円 1,516,800円 2,550,000円 713,550円 1,432,400円 2,000,000円

上表中「310,000円」とあるのは、この設例は年収700万円の給与所得者ですので、年間の源泉徴収税額が310,000円となり、住宅ローン控除は400,000万円(4000万円×1%)ではなく、310,000円が限度となるからです。(平成18年居住開始分は住宅ローン控除そのものの限度額が300,000円です。)

 このシュミレーションでは、平成17年に居住開始した場合の方が、借入金1,000万円の場合で、平成18年に居住開始した場合より4万700円、平成19年に居住開始した場合より8万2,650円多く控除が受けられます。また、借入金2,000万円では、平成17年に居住開始した場合の方が、平成18年に居住開始した場合より8万1,800円、平成19年に居住開始した場合より16万6,200円多く控除が受けられます。借入金4,000万円の場合では、平成18年に居住開始した場合より23万9,500 円、平成19年に居住を開始した場合より78万9,500円と控除額の差がさらに拡がります。これは平成19年居住分では、借入金の上限が平成17年分の4,000万円から2,500万円へと1,500万円も低くなってしまうからです。

 いずれにしても、平成17年末までに居住の用に供するのが一番得、ついで平成18年中、平成19年中、平成20年中という順番で続き、平成20年中には借入金の上限がさらに2,000万円引き下げられるため一番損ということになります。

 

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