目次 III-1


III.年金税制はこう変わる


1 公的年金等控除及び老年者控除の適正化

 基礎年金の国庫負担引上げに必要な財源を確保するため、以前より批判の多かった世代間、高齢者間の不公平にメスが入れられ年金課税が適正化されます。

 まず、65才以上の老人で年間所得が1,000万円以下であれば、一律50万円を所得から控除できる老年者控除は廃止されます。つぎに、公的年金の受給額に応じて年金収入から控除できる公的年金等控除についても、65才以上の最低保障額が140万円から120万円に引き下げられます。

 すでに決定している平成16年1月1日からの配偶者特別控除(上乗せ部分)の廃止とあいまって、65才以上の課税最低限は平成16年は約285万円、平成17年には約205万円まで引き下げられます。

モデル世帯
モデル世帯

 現行の税制では、モデル世帯(夫婦とも65才以上、妻は専業主婦、受給額は2人合計で約283万円)の場合は非課税とされています。しかし、今回の改正案では年間250万円の夫婦の場合は、これまでは所得税が課税されていませんでしたが、3万3千円課税されるようになり、年間300万円の夫婦の場合は8千円から7万円に増税されるようになります。

〈所得税額の比較(夫婦世帯)〉 (単位:万円)
年金額 現行(*1 ) 改正案 差 額
150 0.0 0.0 0.0
200 0.0 0.0 0.0
250 0.0 3.3 3.3
300 0.8 7.0 6.2
350 3.6 10.4 6.8
400 6.4 13.2 6.8
*1 現行は、配偶者特別控除(上乗せ部分)廃止後の所得税を前提としています。
*2 所得税額には、一定の社会保険料が控除されているものとして計算しています。


[1]公的年金等控除の65才以上の者の上乗せ措置の廃止

 イ  公的年金等控除のうち、年齢65才以上の者の上乗せ措置が廃止されます。
 ロ 老年者特別加算として年齢65才以上の者の公的年金等控除の最低保障額が50万円加算され、120万円とする特例措置が講じられます。(公的年金等には、国民年金、厚生年金、共済年金等があり、障害年金、遺族年金は非課税)

 公的年金等による所得は雑所得として分類され所得税と住民税が課税され、公的年金等控除額を差し引いた金額が課税対象となります。

公的年金等の
雑所得
公的年金等の
総収入金額
公的年金等控除額

〔公的年金等控除額の速算表〕
〔公的年金等控除額の速算表〕


[2]老年者控除の廃止

 所得控除は課税所得から控除されるものですが、納税者本人がその年の12月31日現在で65才以上で、その年の所得金額が1,000万円以下の場合、老年者控除が受けられますが、今回の改正案でこの老年者控除が廃止されます。

年齢65才以上所得
金額1,000万円以下
  老 年 者 控 除
  (現 行)   (改正案)
 
所得税50万円
住民税48万円
廃 止

適用期日  [1][2]の改正は、平成17年分以後の所得税及び平成18年度分以後の個人住民税について適用されます。

 

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