目次 I-住宅2


2 特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除の要件緩和

ローン完済者にも適用可能

 住宅の買換えによって生じた譲渡損失を、翌年以後3年間に繰り越して各年の所得から控除できる「特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除制度」の適用要件のうち「譲渡資産の取得に係る住宅借入金等の残高を有する」という要件を除外した上で、その適用期限が3年延長され、平成18年12月31日までに譲渡資産を譲渡した場合まで適用できるようになります。

 したがって、平成16年以後は譲渡資産の取得に係る住宅借入金等残高のない居住用財産、つまり住宅ローンをすでに完済したか、はじめからローン付きでない居住用財産を譲渡して譲渡損が生じたときに、新たに借入金で居住用財産を購入した場合には損益通算・繰越控除が可能となります。



























  適用要件
  (現 行)   (改正案)
  譲渡資産の取得に
係る住宅借入金等の
残高を有する
廃 止
  適用期限
  (現 行)   (改正案)
  平成15年
12月31日
平成18年
12月31日
住民税についても所得税同様、適用要件・適用期限の改正がされます。


注意点  また、この制度の名称は「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」と改められ、居住期間要件の5年超をクリアーすれば、2度目の買換え等の場合に生じた譲渡損失について、2度目の本制度の適用が可能となります。



  この制度は、個人が長期保有の居住用財産を譲渡して買換えた時に発生した譲渡損について、譲渡した年に他の所得との損益通算を認めた上で、翌年以降3年間にわたって譲渡損失の金額の繰越しができるというものですが、現行税制では要件の一つに、譲渡時にマイホーム(譲渡資産)の住宅ローンの残高を有していることが要件でした。

 今回の改正案で、住宅ローンの繰上げ返済など、住宅ローンが譲渡時に完済されているものや、はじめから住宅ローンを組んでいなかった居住用財産を売って、新たに住宅ローンを組んで居住用財産を購入した場合でも、損益通算ができ、譲渡損失の金額の3年間の繰越しができるようになります。

譲渡損失の金額とは……譲渡資産に係る譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち損益通算してもなお控除しきれない部分の金額をいいます。ただし、その譲渡資産のうち家屋の敷地等(面積が500平方メートルを超えるものに限ります。)が含まれている場合には、その敷地等に係る譲渡損失の金額のうち面積500平方メートルを超える部分に相当する金額は除かれます。

【改 正 案】 平成16年以後の適用要件
【適用要件】
   
(1) 平成18年末(現行15年末)までに長期保有(5年超)の居住用財産を譲渡
・・・ 個人が平成18年(現行15年)12月末までの間にその有する家屋又は土地等で、その年1月1日において所有期間が5年を超えるもののうち、その個人の居住の用に供しているもの(以下「譲渡資産」といいます。)の譲渡(親族等に対するものを除きます。)をすること。
   
(2) 譲渡年の前年1月1日から譲渡年の翌年12月末までに新しい居住用財産を取得
・・・ その譲渡の日の属する年の前年1月1日から譲渡年の翌年12月末までの間にその個人の居住の用に供する家屋(居住用部分の床面積が50平方メートル以上のもの)又はその敷地等で一定のもの(以下「買換資産」といいます。)の取得をすること。
   
(3) 取得日から翌年12月末までに居住又は居住の見込み
・・・ その取得の日からその翌年12月末までの間にその買換資産をその個人の居住の用に供すること、又は供する見込みであること。
   
(4) 繰越控除適用年分の合計所得金額が3,000万円以下
・・・ 給与所得者の場合、年収に換算すると3,336万円以下であること。


 
(5) 譲渡資産及び買換資産に係る住宅ローンの残高があること
・・・ その譲渡資産の譲渡契約締結日の前日等においてその譲渡資産の取得に係る一定の住宅借入金等の残高を有し、かつ、繰越控除の適用を受けようとする年の年末において、その買換資産の取得に係る一定の住宅借入金等の残高を有すること。
     


(5) 買換資産に係る住宅ローンの残高があること
・・・ 繰越控除の適用を受けようとする年の年末において、その買換資産の取得に係る一定の住宅借入金等の残高を有すること。
注1→ 平成16年から「土地、建物等の譲渡所得の損失の損益通算や繰越控除の不適用」の制度と関係なく、この特例については、譲渡資産に係る譲渡損失の金額があるときは、当該譲渡資産の譲渡による所得以外の所得との損益通算及び翌年以降の繰越しが認められます。
注2→ 純損失の繰越控除制度及び純損失の繰戻し還付制度の純損失の金額には、当該譲渡資産に係る譲渡損失の金額は含められません。

(注) 譲渡年に買換住宅に居住した場合は、10年間のローン控除期間のうち最大限当初4年間は損益通算と繰越控除で課税所得ゼロとなりますので、残り6年間だけ住宅ローン控除制度が適用されます。

《例》
平成16年の年間所得は700万円です。転勤のためマイホームを売却し譲渡損が2,400万円発生しましたが、親からの援助や新たな住宅ローンで転勤先でマイホームを取得しました。この場合、所得税等はどうなるのでしょうか。(なお年間所得は一定とします。)


住宅ローン控除と居住用財産の譲渡損失の3年間繰越控除とを重複適用した場合(平成16年8月譲渡、同年に同取得)
【設例】
損益通算前の譲渡損失2,000万円
買換資産の住宅ローン3,000万円(返済期間15年、利率年3%)とします。
給与収入金額は毎年一定とします。
所得控除額は所得税・住民税ともに200万円とします。
定率減税は考慮していません。
この表はあくまでも目安です。実際の適用にあたっては様々な相違が生じる場合がありますので、専門家等によく相談してください。)

給与収入金額
(毎年一定とする)
(1)万円
800
(2)万円
1,022
(3)万円
1,232
(4)万円
1,758
(5)万円
2,285
(6)万円
2,811
(7)万円
3,337
給与所得控除後の
給与所得の金額(A )
600 800 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000
譲渡年 平成16年  △600  △800 △1,000 △1,500 △2,000 △2,000 △2,000



1年目 平成17年 △600 △800 △1,000 △500      
2年目 平成18年 △600 △400     (繰越控除なし)
3年目 平成19年 △200            
繰適
越用
控前
所得控除額(B) 200 200 200 200 200 200 200
課税所得金額(C) 400 600 800 1,300 1,800 2,300 2,800
所得税・住民税額(D) 77 137 200 405 620 870 1,120
繰越控除適用後の減税額 278 381 400 605 620 820 920












1年目 平成16年           28 28
2年目 平成17年       27 27 27 27
3年目 平成18年   20 25 25 25 25 25
4年目 平成19年 20 23 23 23 23 23 23
5年目 平成20年 21 21 21 21 21 21 21
6年目 平成21年 20 20 20 20 20 20 20
7年目 平成22年 18 18 18 18 18 18 18
8年目 平成23年 16 16 16 16 16 16 16
9年目 平成24年 14 14 14 14 14 14 14
10年目 平成25年 12 12 12 12 12 12 12
住宅ローン控除額合計 121 144 149 176 176 204 204
  ※1万円未満は四捨五入

 

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