土地、建物等を譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得として課税され、長期譲渡所得課税に比べ重い税負担となります。
ただし、短期譲渡所得のうち、国や地方公共団体などへ土地等を譲渡した場合の所得(分離短期の軽減所得)については、その所得(分離短期の一般所得)に比べ税負担が軽くなっています。ところで、今回の改正案で長期譲渡所得の税率が引き下げられることに伴い、短期譲渡所得の課税も緩和されます。
分離短期
譲渡所得 |
→ |
(1)分離短期一般所得 |
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譲渡があった年の1月1日において所有期間が5年以下である土地建物等(次の(2)に該当するものを除きます。) |
→ |
(2)分離短期軽減所得 |
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譲渡のあった年の1月1日において所有期間が5年以下である土地等を国や地方公共団体に譲渡したものや、収用交換等により譲渡したものなどで一定の要件に該当するもの |
[1]分離短期一般所得の課税の特例
所有期間が5年以下の分離短期一般所得に係る譲渡所得の税率が次のように引き下げられます。
(現 行) |
次の(1)と(2)のいずれか多い方の税額による
(1)譲渡益の52%(所得税40%、住民税12%)相当額
(2)全額総合課税をした場合の上積税額の110%相当額 |
*1 |
総合課税される各種所得の合計から所得控除を差し引いて計算しますが、所得税と住民税ではこの金額が異なります。 |
*2 |
総合課税される譲渡所得がある場合は、そこから引き切れなかった部分の金額に限られます。 |
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(改正案) |
譲渡益の39%(所得税30%、住民税9%)相当額 |
《例》
本年5月に土地建物を売却し、一般所得に係る課税短期譲渡所得金額が1,000万円発生しました。その他の所得の状況は次のとおりです。所得税額はいくらになりますか。
〇課税短期譲渡所得金額(分離短期一般所得に該当) |
1,000万円 |
〇本年の事業所得金額 |
700万円 |
〇本年の所得控除額 |
200万円 |
(注)定率減税は考慮していません。 |
(現 行) |
(1) |
1,000万円
(課税短期譲渡所得金額(A)) |
× |
40%
(所得税) |
= |
400万円
((A)の所得税額) |
(2) |
|
1,000万円
(A) |
+ |
500万円
(課税総所得金額)
*700万円−200万円 |
− |
50万円
(特別控除) |
|
× |
(30%−123万円)
(1,450万円に対する所得税) |
− |
500万円
(課税総所得金額)
*700万円−200万円 |
× |
(20%−33万円)
(500万円に対する所得税) |
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×110%=269.5万円 |
(1)と(2)のどちらか多い方→400万円(所得税額)
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(改正案) |
1,000万円
(課税短期譲渡所得金額) |
×30%=300万円(所得税額) |
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【参 考】 「課税される所得金額」に対する所得税の速算表 |
課税される所得金額 |
税 率 |
控除額 |
330万円超
900万円超
1,800万円超
|
330万円以下
900万円以下
1,800万円以下 |
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10%
20%
30%
37% |
− 円
33万円
123万円
249万円 |
(注)課税される所得金額に1,000円未満の端数があるときは、これを切り捨てます。 |
[2]分離短期軽減所得の課税の特例
所有期間が5年以下の分離短期軽減所得に係る譲渡所得の税率が次のように引き下げられます。
(現 行) |
次の(1)と(2)のいずれか多い方の税額による
(1)譲渡益の26%(所得税20%、住民税6%)相当額
(2)全額総合課税をした場合の上積税額 |
(改正案) |
譲渡益の20%(所得税15%、住民税5%)相当額 |
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[1]と[2]の改正は平成16年1月1日以後に行う土地、建物等の譲渡について適用されます。 |
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