目次 III


III.年金税制はこう変わる


日本版401k・確定拠出型年金制度の導入

−企業負担分は全額損金算入・個人負担分は所得控除−

 厚生年金基金など既存の企業年金等は給付額が決まっているところから「確定給付型年金」と呼ばれています。それに対して「確定拠出型年金」は、積み立てる金額は決まっているが、将来受け取る年金額は本人の運用指図による成績次第で、各人各様といういわば変動給付型年金ですので、こう呼ばれています。この「確定拠出型年金」はアメリカの401kになぞって日本版401kとも呼ばれるようにすべて自己責任制で、掛金の運用方法を本人(年金加入者・60歳未満)が指示するという従来、全くわが国になかったパターンの年金制度です。

 確定拠出型年金には、企業が掛金を従業員個人の口座に払い込む「企業型」と、個人が自ら決めた掛金を積み立てる「個人型」の2種類あります。



(1) 拠出段階の税制措置

 「企業型」の場合、厚生年金基金など既存の企業年金を導入している企業では、従業員一人当たり年間21万6千円(月額1万8千円)、企業年金を導入していない企業の場合は年間43万2千円(月額3万6千円)が掛金の限度額で、全額損金算入できます(従業員の給与収入に算入されません。)。ただし、加入者が自己負担で掛金を上乗せして拠出することはできないシステムです。

 一方、「個人型」は企業年金がなく、企業型の確定拠出型年金も導入しない中小企業の従業員や自営業者等が対象となり、企業の従業員などは年間18万円(月額1万5千円)、自営業者等は年間81万6千円(月額6万8千円)(国民年金基金等の掛金があればその控除後の額となります。)までの掛金が全額所得控除の対象となります。

(2) 運用段階の税制措置

 個人型は国民年金基金連合会が窓口となり申請を受け付けます。「企業型」「個人型」とも集められた掛金は、運営や資産の管理を請け負う金融機関などを通じて運用されます。ただ、積立て金をどのように運用投資するかは加入者本人が決めますので、指図による運用次第ではロスが出る可能性もあります。また、現行法では、積立金に特別法人税、法人住民税が1%課税されますが、平成11年4月1日から平成13年3月31日まで課税停止中となっています。

(3) 給付段階の税制措置


  給付段階では年金払いの老齢給付金は雑所得となりますが、公的年金等控除を適用できるため実質的に非課税と同様となります。また、一時金払いの老齢給付金は加入年数を勤続年数とみなして退職所得として課税されます。その他、障害給付金は所得税・住民税とも非課税、死亡一時金は相続税のみなし相続財産(退職手当金等に含まれる給付)として相続税の課税対象となります(ただし、法定相続人一人当たり500万円までは非課税となります。)。一方、所得税・住民税については、死亡一時金は非課税となります。なお、脱退一時金は、所得税・住民税が課税されます。

 ところで、確定給付型年金等から確定拠出型年金への移行に伴う税制上の措置については、今回の改正案には具体的なものは何も示されておりません。


確定拠出型年金制度一覧表
  企業型年金(企業拠出のみ) 個人型年金(加入者拠出のみ)
加入者 企業年金等を実施している企業の従業員 企業年金等を実施していない企業の従業員 企業年金等を実施していない企業の従業員(国民年金の第二号被保険者のうち企業年金等の対象になっておらず、かつ、確定拠出型年金の企業型年金の対象となっていない企業の従業員)(以下「第二号加入者」という」) 自営業者等の国民年金の第一号被保険者(以下「第一号加入者」という)
加入窓口 企  業 国民年金基金連合会
拠出段階 企業の事業主掛金を損金算入(必要経費)、給与所得課税はなし 個人型加入者掛金を全額所得控除
拠出限度額 年21万6千円
(月1万8千円)
年43万2千円
(月3万6千円)
年18万円
(月1万5千円)
年81万6千円
(月6万8千円、但し、国民年金基金等に加入している者の限度額は81万6千円から国民年金基金等の掛金額を控除した額)
運用段階 (イ)資産管理機関が設定する信託 (イ)国民年金基金連合会が設定する信託
 資産管理機関が受託者である企業型年金に係る信託については実質的に非課税  国民年金基金連合会が設定する個人型年金に係る信託については実質的に非課税
(ロ)特別法人税 (ロ)特別法人税
 事業主掛金及びその運用益を対象として特別法人税、法人住民税を課税
(注) 特別法人税は、平成11年4月1日より2年間課税停止中
 第一号加入者又は第二号加入者の個人型加入者掛金及びその運用益を対象として、特別法人税、法人住民税を課税
(注) 特別法人税は、平成11年4月1日より2年間課税停止中
(ハ) 企業型年金の年金資産である信託財産につき受託者である資産管理機関が受ける一定の利子等又は配当等
(ハ) 国民年金基金連合会が締結した個人型年金に係る契約に係る信託の信託財産につき当該信託の受託者が受ける一定の利子等又は配当等
 所得税、道府県民税利子割を課税しない  所得税、道府県民税利子割を課税しない

 
 

 
 

 
 
老齢
給付金
イ.分割(年金)払いの老齢給付金……公的年金等控除を適用
ロ.一時金払いの老齢給付金……退職手当等とみなす。
(注) 退職手当等とみなして退職所得の金額を計算する場合の退職所得控除額の計算の基礎となる勤続年数の計算については、掛金払込期間を老齢給付金に係る退職所得の勤続年数とするとともに他の退職所得との間で所要の調整を行います。
障害
給付金
障害給付金については所得税、個人住民税を課税しない
死亡
一時金
死亡一時金については、相続税法上のみなし相続財産(退職手当金等に含まれる給付)として相続税の課税対象となります。ただし、法定相続人一人当たり500万円まで非課税対象とします。所得税、個人住民税は課税されません。
その他
イ. 脱退一時金…所得税、個人住民税を課税
ロ. 国民年金基金連合会が作成する確定拠出型年金の給付に関する文書については印紙税を課税しない
移管・移行
(確定拠出型年金間の年金資産等の移管)
加入者が離転職し、年金資産を移管する場合には、税制上の措置を継続する
(確定給付型年金等からの移行)
同じく、税制上の措置を講ずる

 

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