目次 II-1


II.住宅税制はこう変わる


1 新住宅ローン控除制度の創設

−最長控除期間15年、最大控除額587.5万円に−

 平成11年度の税制改正案で創設が予定されている新住宅ローン控除制度は、最長15年間で最大587万5千円を減税するもので、平成11年1月1日から平成12年12月31日までの2年間に住宅を取得して居住する人に適用されます。この新制度は、平成10年12月31日以前に住宅を取得していても実際に居住するのが平成11年1月1日以降であれば適用対象となりますが、取得後6か月以内に居住を開始する必要があります。

 すでに現行の住宅ローン控除制度の適用を受けている人は、新住宅ローン控除制度に乗り換えることはできません。
 新住宅ローン控除制度は、住宅ローンの年末残高の一定割合を所得税額から控除する仕組みは現行制度と同じですが、ローン残高の上限は現行の3,000万円から5,000万円に引き上げられ、控除率は1年目から6年目までが1%、7年目から11年目までが0.75%、12年目から15年目までが0.5%となります。

 例えば、1年目のローン残高が4,000万円なら1年目の控除額は40万円となります。

 さらに、現行では「家屋に係る借入金」だけが適用対象ですが、改正案ではその「家屋の敷地に係る借入金」も対象とされます。ただし、この対象借入金は現行と同様、償還期間10年以上であるものに限られます。

 また、適用対象住宅の床面積の上限(現行240平方メートル)が撤廃され、中古住宅の築後経過年数要件も、耐火建築物が現行の20年以内から25年以内へ耐火建築物以外の建築物も現行の15年以内から20年以内へと緩和されます。

注意点 今回の改正案で、新たに住宅ローン控除の適用対象となる「住宅の敷地」については、「新築住宅又は既存住宅とともに取得する土地等」となっていることから、建売、分譲マンションの土地が対象と考えられます。
 売建て(建築条件付等)の土地については、期間等の制限付きで対象となる見込みですが、改正法案が成立するまでは確定しません。


住宅ローン減税の比較
    現行の住宅ローン減税 新住宅ローン減税(改正案)
控除期間 6年間 15年間
最高控除額 180万円(平成10年居住分) 587万5,000円
控除対象ローン残高 3,000万円まで 5,000万円まで
控除率    
住宅ローン年末残高 1〜3年 4〜6年 1〜6年 7〜11年 12〜15年
1,000万円以下の部分
1,000万円超〜2,000万円以下 〃
2,000万円超〜3,000万円以下 〃
3,000万円超〜5,000万円以下 〃
2.0%
1.0%
0.5%
なし
1.0%
1.0%
0.5%
なし
1.0% 0.75% 0.5%
適用対象    
・対象物件
・中古の場合(耐火建築物)
   〃  (非耐火建築物)
居住用家屋のみ
築後20年以内
築後15年以内
居住用家屋+その敷地(土地)
築後25年以内
築後20年以内
床面積制限 50平方メートル以上
240平方メートル以下
50平方メートル以上無制限
譲渡損失3年間繰越控除制度との
併用
できない できる

注意点
(1) 平成11年1月1日から平成11年3月31日までに居住した場合は、新しい住宅ローン控除制度と現行制度(平成10年居住分)との選択適用となりますので、計算してどちらか有利な方を選択する必要があります。
(2) 上記A〜Dの適用要件として、平成11年1月1日から平成12年12月31日までに「居住の用に供すること」となっています。建物引渡し日とは異なりますので、「住民票の写し」等により居住開始日を証明することとなります(居住事実の実質判断)。
(3) 上記EとFの改正は、平成11年1月1日以後に居住した住宅に適用されます。Gは平成11年1月1日以後の譲渡に係る譲渡損失について適用されます。

控除額等


注意点 上記の経過措置により(2)を選択した場合でも、控除対象借入金等の範囲、住宅の床面積要件、中古住宅の築後経過年数要件等については、新制度の規定が適用されることにご注意ください。


計算例
−住宅ローン控除額の新・旧比較−

【設例】
住宅金融公庫より借入れ
融資金利:基準金利(当初10年間2.2%、11年目以降4.0%)
返済方法:元利均等払(内ボーナス払40%)
返済期間:平成11年1月より25年間
  現行税制による住宅
ローン控除の合計額
新住宅ローン
控除の合計額
増加する控除額
控除期間 6年間 15年間
3,000万円借入れの場合 1,700,400円 2,714,700円 1,014,300円
5,000万円借入れの場合 1,800,000円 4,525,400円 2,725,400円
 上記の控除額は各年の住宅ローン控除額の控除前の所得税額が上限となります。


住宅ローン控除額の最高限度額の推移


(注) 平成11年1月〜3月までの居住分は平成10年居住分と新制度との選択適用ができます。



対象となる借入金とは

 新住宅ローン控除制度では、対象となる借入金等の範囲に、現行の制度による新築住宅又は既存住宅の取得又は増改築のための借入金等のほかに、これらの住宅とともに取得するその敷地である土地等の取得資金に充てるために、これらの住宅の取得に係る借入金等と一体として借り入れた償還(又は賦払)の期間が10年以上の借入金等が追加されます。


ただし、次のものは対象とはなりません。
勤務先などからの融資や代金債務で利息が年一定率未満のもの
勤務先などから利子補給金の支払を受けているため、実質的に負担する利息が年一定率未満となるもの
勤務先などから譲り受けた住宅の代金が、その住宅の時価の50%未満であるもの
(注)  上記の一定率は金利の動向等を勘案して定められる予定です。(現行は年3%)

〜適用時期〜
 この改正は、平成11年1月1日以後に住宅を自己の居住の用に供する場合について適用されます。


控除対象となる家屋等

 適用対象となる新築住宅又は中古住宅となる床面積要件の上限(現行240平方メートル)が撤廃されるほか、適用対象となる中古住宅の築後経過年数要件について、耐火建築物にあっては、現行の20年以内から25年以内に、耐火建築物以外の建築物にあっては現行の15年以内から20年以内にそれぞれ緩和されます。




〜適用時期〜
 この改正は、平成11年1月1日以後に住宅を自己の居住の用に供する場合について適用されます。

 

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