目次 III-1


III.国際課税をめぐることしの税制改正


1 外国子会社配当益金不算入制度の創設

―海外子会社利益の国内還流の障害を取り除く国際租税改革―

 国際展開する日本企業が、税制に左右されずに、海外子会社の利益を必要な時期に必要な金額を国内へ戻すことが可能となるような国際租税改革が図られます。

現 行
わが国は、国際的二重課税排除の方法として、海外子会社利益の国内からの配当について、わが国で課税しつつ、海外で支払った税額を控除している。
全世界所得方式 外国税額控除制度

問 題 点
海外子会社利益を国内に配当する際、日本との法人税率差分の課税コストや外国税額控除制度の煩雑さ等を一因として、海外子会社利益の内部留保が急増。長期に亘って海外に資金が留保されると、コストセンターであると同時にわが国成長の源である研究開発や雇用が国外へ出て行ってしまう懸念がある。



改 正 案
 『海外市場の獲得→国内への資金還流→国内でのイノベーション』の好循環を構築するため、日本企業が海外子会社利益を国内還流させる際の税制上の障害を取り除く国際租税改革を図る。
 具体的には、海外子会社からの配当について、多くの先進国と同様に、外国税額控除制度から国外所得免除方式(国外で生じた所得については海外での課税に委ねることとし、わが国では課税しない方法をいう。)に変更する(恒久措置)。

【参考】 国際租税制度の簡素化にも資することになります。

(a)  この方式に移行しても、基本的には、現行制度で課税されていない海外留保所得を非課税で還流するだけであり、財政への悪影響はありません。

(b)  国内に還流される利益が、設備投資・研究開発・雇用などの幅広く多様な分野で用いられると、わが国経済の活力の向上につながることが期待されます。


本社と外国支店は一体であり、利益発生時に全世界所得(400)に対して課税
  二重課税調整前の国内法人税:400×30%=120

外国支店の現地法人税は外国税額控除(二重課税調整)
  国内法人税納付額:120−20=100

企業全体の税負担額は120(=100+20)となる(→全世界所得にわが国の税率を乗じた額(400×30%=120)と同じ)

わが国における国際的二重課税調整方式(子会社形態による進出)

間接外国税額控除制度(現行)
海外での納税を証明する書類添付の事務手続が煩雑である等、事務コストが膨大との指摘あり
【外国子会社が配当を行った場合】
配当を行った場合、子会社所得(100)を益金算入し、全世界所得を400(300+100)として外国税額控除(二重課税調整)
 国内法人税納付額:400×30%−100×20%=100
企業全体の税負担額は120(=100+20)となる(→全世界所得にわが国の税率を乗じた額(400×30%=120)と同じ)

【外国子会社が配当を留保した場合】
配当を国外留保した場合、子会社所得は親会社の所得としてみなされないため、親会社(300)、子会社(100)別々に税負担
(参照:外国子会社配当益金不算入制度)
企業全体の税負担額は110(=300×30%+100×20%)となる


外国子会社配当を益金不算入制度(改正案)
手続が簡素
外国子会社配当を親会社において益金不算入とするため、配当の有無にかかわらず、親会社(300)、子会社(100)別々に税負担
企業全体の税負担額は110(=300×30%+100×20%)となる

(財務省資料より)


(1)  間接外国税額控除制度は、所要の経過措置を講じたうえ、廃止することとし、内国法人が外国子会社から受ける配当等の額について、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととする制度が創設されます。

(注1)  「外国子会社」とは、内国法人が外国法人の発行済株式等の25%以上の株式等を、配当等の支払義務が確定する日以前6月以上引き続き直接に有している場合のその外国法人をいいます。なお、外国法人の所得に課された外国法人税を内国法人の納付する法人税から控除する旨を定める租税条約の規定により内国法人の外国法人に対する持株割合について異なる割合が定められている場合には、本制度の対象となる外国子会社の判定は、その割合により行うこととする等の措置が講じられます。

(注2)  本制度の適用については、確定申告書に益金の額に算入されない配当等の額及びその計算に関する明細を記載するとともに、一定の書類の保存を要することとされます。

適用期日 この改正は、内国法人の平成21年4月1日以後に開始する事業年度において受ける外国子会社からの配当等の額について適用されます。


(2)  内国法人が外国子会社から受ける配当等の額につき益金の額に算入しないこととする場合には、その配当等に係る費用に相当する金額としてその配当等の額の5%に相当する金額が、益金の額に算入しないこととされる配当等の額から控除されます。また、その配当等の額に対して課される外国源泉税等の額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないこととされるとともに、外国税額控除の対象としないこととされます。

適用期日 この改正は、内国法人の平成21年4月1日以後に開始する事業年度において受ける外国子会社からの配当等について適用されます。


 

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